新たなる街へ ①
「次は何処に向かうの?」
俺の肩の上に乗ったクラは、そう言って問いかける。
少し眠たそうにしている。それにしてもうとうとしながらも、こうして肩の上から降りないのは器用というかなんというか……。
俺はそんなことを考えながら、クラの頭を撫でる。クラは嬉しそうに鳴き声を上げた。
「適当にぶらつく。あと母さん関連の何かがあったら、そっちによるけど。だって母さんを復活させるとかわけわかんないこといって何かやろうとしている人のことはどうにか出来るならそれがいいなと思っているけれど」
目的は、そこまでない。ただ俺は母さんに纏わる何かがあるなら干渉はする気はある。いや、だって正直母さんのことを俺は大切だからこそ、母さんのことを勝手にどうのこうの言う連中には色々と思う所がある。
少なからず神と関わりを持ち、その結果、神界に行くための手立ては……少しは手に入っては居るだろう。とはいえ、俺は神界に行くための術を本気で手に入れようとはしていないのかもと自分で思ったり。
まぁ、いずれ行くつもりだけどまだまだ見て回りたいものもあるし、のんびりでいいかなとかそんな心境。
この世界の信仰深い人たちは、神に会うためにとか、神界に行くためにと一生を捧げたりする者も居るらしい。……そう言う人たちからしてみると俺ってちょっともやもやするような存在かも。
だって俺にとって神様は、凄く身近な存在だから。というか、他の人達からしてみると俺も所謂神の分類なのか?
新しい国や街を目指してただぶらぶらと歩いている。異世界にやってきてこんなに目的もなく歩き回っている存在ってあんまりいないんだろうな。他の異世界から来る存在ってどういう目的で何をしているんだろうか。
やっぱり元居た世界に帰ることとか、何かしら目標を得てそのために一生懸命とかそういう感じなのかな?
やっぱり冒険者として大成したいとか、貴族になりたいとか、そう言う感じなのかもしれない。
俺は正直なるようになればいいとか、そういう感じの感想しかないしなぁ。なんだかんだ母さんの故郷に帰ってきているだけというのもあってあんまり危機感がないのかもしれないなと自分で思った。
「ノースティア様の信者として有名な信者――グランシティダが信者達を集めていると聞くし、気を付ける必要はあると思うわ。……人によってはサクトがノースティア様の息子であると信じることが出来ないだろうから」
「ありそう……。俺、姉さん達と違って母さんに似てないからなぁ。グランシティダって人、母さんの顔を知っているっぽいし、余計に信じないかもなぁ。自分のことを母さんの信者として特別だって思い込んでいるなら、自分こそが母さんに好かれているみたいに思っているかもだし」
フォンセーラの言葉を聞いて、俺は遠い目になった。
簡単に想像出来るんだよなぁ。母さんの顔を知っている存在ほど、余計に俺という存在が母さんの息子であることを信じがたい部分ありそう。そもそも話聞いている限りこの世界で過ごしていた母さんは誰かを愛する気配とかなかったはずだし。
寧ろ詐称とか、そんな風に思われそう。
地球でも母さんのことを好きになってどうのこうの言う人いたし。あと姉さん達の神秘的な美しさに惹かれたとかいうストーカー予備軍とか。ただこれといって大きな問題が起こっていなかったのは、おそらく母さんや姉さん達が上手くやっていたからだろう。
神様だからこそ、人からそんな思いを向けられてもそつなく対応が出来たというか、おそらくそんな感じなんだろうなぁ。
しかしこの世界、案外、母さんが手の届く範囲の存在だと勘違いしている信者っているんだろうか。
その母さんの信者として有名らしい、グランシティダという人みたいに。母さんはこの世界では神様で、特別な存在だ。
だけれどもきっと無邪気で、自由気ままに生きている。
――だからこそ、母さんが当たり前のようにただの気まぐれで話しかけたり、姿を現したりしただけで自分が”特別”だと勘違いしてしまったんだろうか。
母さんって、罪深い神様なのかも……。だって母さんのことを求めている人は幾らでもいて、母さんがこの世界に戻ってきたことを知りたがっている人も多い。それでも母さんは父さんと一緒に過ごすことしか考えていない。
誰もが求める神様が、たった一人の男性にだけ執着しているって、凄い状況だよな……。
「うーん、母さんのこと神聖視……いや、まぁ神様だから、神聖視しているのは当たり前といえばそうなんだけれど……神聖視しすぎた結果、俺という存在を認められないはあるのかもな。姉さん達は母さんにそっくりだから、すぐに認められそうだけど。俺って神の血は継いでいても、あくまでまだ人間だし」
遭遇したらそれはそれで、面倒そうだな……と俺は改めて思うのだった。




