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薄井君は召喚されたので異世界を漫遊する~家族の秘密を知った件~  作者: 池中織奈


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闇の女神の信者達の村についての話 ⑪



 母さんに捧げる催しが終わった後、俺達は母さんを信仰する村を後にすることにした。幸いなことに俺が母さんの息子だというのはばれることはなかった。多分知られたら帰してもらなくなってしまうようなその可能性もある。


 ……いや、想像しただけで本当にそんなのごめんである。

 神様とか、その子供って案外不自由な立場なのかなとそんな気持ちにもなる。力がある神様ならばともかくとしてそうじゃなかったら……きっと周りからの圧力に屈してしまうことだってあっただろうから。



「良かったらまた来てください」

「ノースティア様の素晴らしさを改めてお伝えさせていただくわ」


 そんな風に村人たちはにこにこと笑っていた。

 こうして村を後にする時でさえ、彼らが語るのは母さんのことなのだ。俺という……母さんの信者になったばかりの存在を信者として逃すまいとそういう心境になっているのではないかと思う。母さんが邪神とか呼ばれているのもあって、中々新規の信者が増えたりしないんだろうしな。母さんって自分から信者を増やそうとしたりなんて全くしないし。



 その分、母さんの信者達は仲間を増やそうと必死で仕方がないのかもしれない。




「機会があればまた訪れます」


 それだけ口にする。絶対とは言わない。なぜなら正直言ってまたこの村に訪れるかどうかは定かではないから。

 機会があって、何かしらの理由があれば此処に来るだろう。だけれどもそうじゃないのならば、少なくともしばらくは来ない。完全に俺が人としての枠組みから外れたら今住んでいる人達の寿命を終えてから訪れるとかになるかも。

 ただ俺って見た目はただの人間でしかないんだよなぁ。この世界には地球で過ごしていた頃では考えられないほどの多様多種な種族が存在している。それこそ見た目だけでは分からなかったりするものだから。


 そもそも見た目は人間でしかないけれども、別の種族ってだけでも注目浴びそうだから嫌だしな。だから俺がその時も旅を続けているのならば、人間として振る舞うだろう。



 母さんを信仰する村は、新鮮な気持ちで面白かったけれど……何度も来たいとは思っていない。母さんへの信仰心が強い人であればあるほど、俺の正体に気づきそうで面倒だし。






「サクトは、ノースティア様を信仰する村のことを気に入らなかった?」



 フォンセーラにそんなことを問いかけられる。

 ……俺の反応を見て、そこまでお気に召したわけではないと分かったからだろうな。


 フォンセーラって、あまり人に興味がないタイプだと思う。母さんに関わること以外だと、そこまで気にしない方。俺のことを気に掛けているのも、俺だからというより俺が母さんの息子であるからというそれだけの話。

 それは分かっているけれど、こうしてなんというか誰かが俺のことを理解してくれようとすることって嬉しいことなんだよな。




「まぁ、母さんはこの世界にとっての神様だっていうことは知っているけれど、俺にとってはあくまで母さんでしかないから。たまにああいう母さんを信仰する集団を目撃するのは面白いことだなとは思うけれど、ずっとあの村で過ごしたいとは思わないかな」



 俺から見る母さんと、信者達から見る母さんは明確に異なるから。

 ――その差異があるからこそ、同じように母さんを慕っていたとしてもなんだか微妙な感覚に至ってしまったりするのだ。

 


 そう考えると母さんの信者であるフォンセーラやノスタと一緒に旅をしていても複雑な感情に至らないのは、二人の性格にもよりそう。これで俺が母さんの息子だと知っているからといって余計なことをするタイプだったら俺は一緒に旅は出来なかっただろう。




「そう。……私は神と縁続きになっているわけではないから分からないけれど、やっぱり私達信者と神の子供から見る視点は違うのね。サクトはノースティア様のことを慕っているようには見えるけれどあくまでそれは家族としてのものだものね」

「それはそうだろう。ああ、でもこれはあくまで俺だからかも。人によっては親が異世界の神様だって知ったら、もう親として見れなかったりする場合もあるんじゃないか? 別の何かだと思って恐怖したり、それこそ信者達と同じような信仰の対象になったり……そう言うこともあり得ただろうし」



 ……こう考えると俺って母さんと父さんにのびのびと育てられたからこそ、こうなんだよな。元の俺の性格もあるかもしれないけれど、俺が母さんに対する態度を変えたり、それこそ信者のような態度を取るようになったら……母さんって嫌がっただろうな。

 俺のことを息子として接することがなくなっていたかもしれない。母さんって、あくまで俺が父さんとの間に出来た息子だからこそそれなりに大切にしてくれているだけだし。


 それで俺が仮に神様の息子だからと助長した態度でも取れば、消滅させられた可能性もある。うん、母さんはそう言う人だ。



「そう。確かにそれは人によりそう」



 フォンセーラは俺の言葉に納得したようにうなずいた。ちなみにノスタは興味深そうに俺達の会話を聞いているのだった。








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