闇の女神の信者達の村についての話 ④
「ノースティア様はこの世で最も素晴らしい女神様なのだ。あの力があれば、他の神など如何様にも出来るだろうに、我が神はなぜか神界で一番上に立とうとなさらないのだ。そんな謙虚なところも、素晴らしい点である」
「ノースティア様がこの世界に帰ってこられないのは、この世界がかの神にとっては退屈で仕方がない国だからなのだろう。だからこそ、私達はノースティア様のことを楽しませるために催しをおこなっているんだ。良かったら、君達も参加しないかい?」
フォンセーラとクラと一緒に村の中を歩き回る。
俺達のような若者の信者がいることが彼らは嬉しいのか、友好的に説明をしてくれている。俺は母さんの息子だけれども、光の女神イミテアのことも伯母さん呼びしているから信者達からしてみれば面白くなかったりするんだろうか。
それにしてもやっぱりこの世界の人達からすると、母さんはまだ帰ってきていない認識の人も多そう。
……母さんが地球に居ついていたのは父さんとの生活をそれはもう楽しんでいたからで、それ以外のなんでもない。だけれども母さんはわざわざそのことをこの世界の人達に伝えることなどしない。そもそも最も大切な存在である父さんのことを誰かに存在を認知されることもきっと嫌がっている。
それこそ、誰の目にも映らないぐらいに閉じ込めてしまいたいとさえ母さんは思っているはずだから。
……もう母さんが戻ってきている云々は、ノスタと相談してここの人達に伝えてもらうか。
母さんを喜ばせるための催しはどんなものか気になる。
「なら、参加させてもらいます」
この世界の人達にとって、母さんが喜ぶことって何なんだろうな? 俺が一番に思いつくのは、父さんに纏わることだけなんだよなぁ。
きっとどれだけ華やかなものだったとしても、「ふーん」ぐらいで済ませそう。
俺が頷くと、村人たちはにこにこしていた。
母さんを喜ばせるための催しは定期的に行われているらしい。母さんがこの世界に居ない間ずっと、こうして待っていてくれたのだと思うとそれはう凄いと素直に思った。
催しは数日後から行われるらしい。……闇の女神を信仰する人たちの作った聖典も読ませてもらう。こういう聖典って沢山の種類があるみたいだ。
基本的に母さんのことをあがめ称えているのは確かなことだけれども。
母さんの逸話などが記載されていたりもする。
俺の知らない母さんのことを知ることが出来るのは素直に楽しい。
逆に俺が信者であるのに聖典を持っていないことに驚かれて、一つもらえた。俺は信者達よりも母さん自身のことは知っているだろう。母として、妻としての姿がどうであるか。どれだけ父さんのことを愛しているか。そのあたりは幾らでも語れる。
ただこの世界での……神様としての母さんの姿って、俺はまだまだ知らない。
この世界に召喚されてから大分、情報を集めることは出来ているけれども……。そのぐらい。
母さんを楽しませるために、歌ったり、踊ったり、食べ物を捧げたりとかするそうだ。魔物を狩って、それを捧げたりなんかもあるそうだ。そのために魔物を狩りにいくんだとか。
俺はどうするか聞かれて、恥ずかしいけど歌うことを短めのフレーズだけどやらせてもらうことになった。まぁ、人前で歌ったりは全然しないから、正直躊躇はする。ただこういったやったことのない経験はしてみたいって思っているのだ。
あとは魔物狩りにもいかせてもらう。このあたりの魔物は結構、強いみたいだ。
だから少数で向かうのは危険だと言われたけれど、「問題はないし、死んだら自業自得だから気にしなくていい」とそう告げて、俺とクラとフォンセーラだけで向かった。
「どんな魔物がいいんだっけ?」
「魔力量の多い魔物であればあるほど、母さんが喜ぶって思っているみたいだからそういう魔物だな」
なぜか不明だけど、母さんへの捧げものに魔力量の多い魔物の方がいいとされているらしい。
なんでだろうな。というか母さんからしてみたら、どんな魔物捧げられても気にしなさそう。うん、母さんはそういう性格だから。
クラは張り切って、魔物狩りをしている。
この世界にきてから、クラは地球に居た頃よりもずっと好戦的になった気がする。そんなに狩りをするのが楽しいのだろうか。
クラが張り切ってかなりの大きさの魔物を狩ったりする。俺はどうしようか……。
あまり派手に魔物狩りをしすぎると、この村の人達からすると変な風に思われたりするかな。それに張り切りすぎても、信仰心の強い信者だって思われたりする?
……というか実際に母さんはその催しを見ることはきっとあるんだよな。俺のことをちょくちょく見守ってはいるから。
だからこそ、この村の人達の頑張りは母さんにも伝わるだろう。尤も母さんはそれで村人たちに何か語り掛けたりはしないだろうけれど。




