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闇の妖精さん②

だが、そこに。


「夕日ッ、悪に耳を貸さないで!!」


甲高い声。

それが響く。


闇に包まれゆく、夕日。

そんな夕日の周囲を飛び回り、その小さきモノは夕日へと声をかけ続ける。


「闇に染まってしまえばッ、夕日は夕日じゃなくちゃうんだよ!? 思い出して。はじめて魔法少女になった時のことを」


夕日の耳元。

そこに留まり、夕日の心に再び光を宿さんとするそのモノ。


「あの時……夕日は言ってたよね。魔法少女になって、自分を変えたいって。魔法少女になって、悲しみに満ちたこの世界を変えたいって」


「あの時の気持ち。夕日は忘れちゃったの? あの気持ちは嘘だったの? 闇に染まっちゃったらあの夕日の思いは全部嘘になっちゃうんだよ?」


「魔法少女のみんなもきっと夕日のことを。だから、だから。ちょっと強引だけどあんな方法で夕日を成長させようとしてたんだよ」


響き続ける、【あちら側】に立った声。

それに夕日は応えた。


一言も言葉を発することなくーー


"「この子犬ゴミ」"


"「わたしたちが殺しちゃったんだから」"


へらへら笑い、子犬の亡骸を見せつけていたモノたちの姿を思い出しながら。


小さきモノの身体。

それを闇を帯びた己の手のひらで掴むという行為をもって。


「ゆ、夕日?」


「……」


「は、離してよ」


だが、夕日はその手を緩ませることはない。

更に強く強く。その手のひらを握りしめていく。


「あんな行為が、夕日を成長させる? あんな所業で夕日が成長する? これだからぼくは、光は嫌いなんだ」


夕日の思い。

ダークはそれを代弁する。


「如月 夕日は、絶対に奴等を赦さない。いくら君が詭弁を呈したところで……如月 夕日の大切なモノはもうかえってこないのだから」


「わ、わたしは夕日を信じるよ。夕日は絶対に闇になんか染まらないって。ね、ねぇ夕日?」


刹那。

夕日は見る。


闇に染まった両目をもって、自身の手のひらに掴まれた小さきモノを。

その双眸から光に決別を告げる涙をこぼしながら。


「ゆ、夕日」


べきッ


「……ッ」


尋常ならざる闇の力。

それにより、小さきモノは夕日に握り潰された。

同時に霧散する光の粒子。

それは、即ち【死】を意味する。


倣い、夕日は立ち上がる。


漆黒のオーラ。

それをその身に纏いながら。


「如月 夕日」


名を呼ぶ、ダーク。


「これから、よろしくね」


しかし、夕日は声を返さない。

ただ静かに子犬の亡骸を抱き、その足を一歩前に踏み出したのであった。


〜〜〜


河川敷からさほど遠くない、駅。

人通りはまばら。それは先ほどまでふりしきっていた小雨の影響だった。


そしてその駅の入り口の前に広がる広場に、彼女たちは居た。

曰く。赤澤 茜とその友人たち。


「茜。遅かったじゃん」


「もう。なにしてたの?」


「ごめん、ごめん。ちょっと色々あってさ」


不満げな友人たち。

その友人たちに謝罪を述べ、茜はその顔に反省の色をたたえる。

鮮やかに染られた自らの髪の毛。それを弄る、茜の友人たち。服装もまた派手。そしてその姿は、茜の交友関係が決して大人しいものではないことを意味していた。


「色々ってなに?」


「それってわたしたちとの約束より大切なものだったの?」


顔に笑みをたたえ、彼女たちは楽しそうに茜へと近づく。


「別に大したことじゃないんだけど」


茜の脳裏。

そこにうつる、如月 夕日との出来事。

それに笑いを堪える、茜。


「まっ。どうでもいっか」


「うん。ほら、茜。はやく遊びにいこうよ」


「そうだね。よーし。今日はとことん」


だが、その茜の声を遮ったのはーー


ぴくりと茜は感じる。


闇の気配。

深く冷たい闇の産声。

それをはっきりと感じたのであった。


〜〜〜

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