独りぼっちの夜ご飯
ゆめと約束したから、嫌だけど…食欲なんて全然ないけど定食屋に寄る。
閉店まで全然時間も余裕だし、ゆめの言っていた通りたくさん食べようとメニューを見る。
今は貯金も充分あり、資産投資もローリスクローリターンで回していてまあまあの稼ぎで、手持ちのお財布も潤ってる。
少しくらい使う分には問題ない。めちゃくちゃ食べよう。
そう思ってメニューを見る。高くも安くもない値段設定。味次第だなぁ、なんて思ってふと他の席を見れば…どのメニューもぶっ飛ぶほど大盛りだった。
「え」
「あ、お兄ちゃん初めてか!ここ大盛りの店だぜ?大丈夫かぁ?」
「いや実は…昨日と今日絶食状態で思い切り食べたくて」
「んじゃあちょうどいいか!大盛りの割にはめちゃくちゃ安いだろう?味もいいから!良い店見つけたなぁ!」
「そうですね」
味が良い、というならなおのこと安い。良い店だ。
「…おすすめとかあります?」
「お?そうだなぁ…やっぱり定食屋なんだから定食は頼めよー!トンカツ定食とかな!足りなきゃご飯はお代わり無料だぜ!」
「おお」
「一応サイドメニュー的なのもたくさんあるし、やばい奴は定食二つ行くぜ?」
「僕には無理ですね」
ぴしゃりと言い切る。「あの量」は二つは無理だ。
「んじゃあとりあえず定食だけ頼んでみたら良い。その後足りなきゃ幾らでも小鉢を追加しな」
「はい」
大人しく先人の教えを受けてトンカツ定食を注文。来たのはバカデカく分厚いトンカツと大盛りのご飯。キャベツの千切りは鬼かと思うほど大量。味噌汁だけは適正な量だった。これでこの価格とか大丈夫か。
「いただきます」
手を合わせて食べる。…おお、サクサクで肉肉しくて美味しい。食欲なんて微塵もなかったけど、これなら食べられる。明日ゆめに報告して、退院したら連れてこよう。しかしこの味と量なら倍の値段は取れそうだけど儲かってるんだろうか。
…最近いつもゆめと一緒にいたから、話す相手もいなくて一人ぼっちで食べるのはとても寂しい。けれど仕方がないことだ。だってゆめは僕のせいで傷つけられた。
ああ、こんな時でも結局ご飯は食べれば美味しい。そう思っていると向こうからまた声がかかる。
「美味しいだろ?」
「はい」
「肉と米もいいけど、千切りも美味いぞー!備え付けのマヨネーズとトンカツソースを掛けてみろ!」
言う通りにする。こちらもまた美味しい。
「ここのマヨネーズとトンカツソースはな、手作りらしいぞ!だから美味い!」
「なるほど、いいですね」
「お、ファンになったか?」
「はい、今度は彼女を連れて来たいですね」
「そりゃあいいや!実はここ、食べきれなかった分は包んでお持ち帰りさせてくれるからな。女の子でも安心だ」
いいこと聞いた。絶対連れてこよう。
そして満腹になるまで、結局ポテトサラダと豚汁も追加して食べた。
家に帰ると、昨日ぶりにシャワーを浴びて清潔にする。そして上がると髪を乾かして服を着てそのまま寝た。熟睡した。




