特別編:ギャラリー『gift』③
今回は恒例の特別編第三弾です。
例によって本作にいただいたファンアートを紹介させていただきます。
今回のファンアートは「石河 翠」様と「砂臥 環」様からいただきました!
「石河 翠」様からは本作のバナー。
「砂臥 環」様からは梅先生とヒャハママのイラストをそれぞれいただきました!
尚、バナーのイラストはPicrewの「ゆる女子メーカー」で作成していただきました。
https://picrew.me/image_maker/41113
お二人共、その節は誠にありがとうございました!
「石河 翠」様の
「『あい』を失った女」
https://book1.adouzi.eu.org/n7102en/
「砂臥 環」様の
「無表情令嬢キャロルの極めて合理的な恋愛」
https://book1.adouzi.eu.org/n1856ex/
も、是非ご高覧ください!
「あ、『gift』だ」
「え?……ええッ!!!?」
とある放課後、僕はまーちゃんの指差した方向を見て、思わず奇声を上げてしまった。
それもそのはずだ。
『gift』自体は以前駅前に支店があったのを見たし、別の場所に建っていたとしても然程不思議じゃない。
でも――その場所が学校の裏庭だったとしたら、誰でも僕みたいなリアクションを取るはずだ。
何で僕の学校の敷地内に、画廊が出来てるの!?!?
しかも昨日ここを通りかかった時は、こんなものはなかったはずだ。
たった一晩でこれだけ立派な画廊を建てたっていうのか……。
いったい誰が、何のために……?
そもそも学校に許可取ってるのか?
「またファンアートが増えたのかなー。楽しみだね、ともくん!」
「まーちゃん!?」
何でまーちゃんはそんな冷静なの!?
どう考えても普通じゃないでしょ、この状況は!?
「よーし、早速入ってみよー」
「躊躇って言葉知ってる!?」
知らないんだろうね、まーちゃんはッ!
僕はいつも通り二の腕をおっぷぁいぷぁいに蹂躙されながら、明らかに怪しい建物の中に連れ込まれたのだった。
「画廊だああああああヒャッホー!!!」
「様式美ッ!」
最早まーちゃんの「ヒャッホー」を聞いて、ちょっと安心さえしている僕がいる。
――それにしても、例によって内装はいつもとまったく同じだ。
こうなってくると支店というよりは、同じ建物がいろんな場所に移動してるといった方がしっくりくる。
もちろんそれが非現実的なことだということは僕だってわかっているが、何故かそんな不可思議な現象を容認したくなってしまう雰囲気が、この建物には漂っている気がする……。
「あっ! 今回はバナーだ!」
「え?」
まーちゃんの目線の先には、いつもの如く一枚の絵が飾ってあった。
その絵はこんなものだった。
ニャッポリート!?
確かにバナーだ!
しかも今回はまーちゃんのイラスト付きッ!
このイラストは、今流行りの画像メーカーってやつで作られたのかな?
凄い時代だなあ。
画像メーカーを使えば、誰でもこんな可愛いオリジナルイラストが作れるんだもんなあ。
何だかこの舌ペロしてるまーちゃんを見ると、前回のにゃーちゃんを思い出しちゃうな……。
おっと、いかんいかん。
煩悩は振り払わなければ!
――でも、イラストは画像メーカーで作ったにしても、この背景とか、文字の配置とかはバナーを作ってくれた人がデザインしてくれたってことだよね?
……センスあるなぁ。
タイトルの中でも特に大事な部分は、文字色をピンクにしたり、赤線や星で強調したりすることで、よりこのバナーを見た人の興味を引くような作りになっている。
まさしくバナーとしての役目を、十二分に果たしていると言えよう(謎の評論家気取り)。
「ありがたいねー。こっちのバナーは、最新話に直接飛べるようにリンクを貼っておくとかもアリかもね」
「そうだね」
随分提案が具体的過ぎる気もするけど、まあ、その辺は気にしたら負けか。
「……あっ! み、峰岸先生!?」
「んん?」
峰岸先生って誰だっけ?
……ああ、変公のことか。
苗字で呼ぶのはまーちゃんくらいだから、すっかり変公の苗字が峰岸だってこと忘れてたよ。
でも、どこにも変公はいないけど?
「バナーの隣の絵だよ、ともくん!」
「隣?」
言われた通りバナーの隣に目線を向けると、そこにはこんな絵が飾ってあった。
おぼおおおおおおおお!?!?!?
紛うことなき変公だわこれは!
こんなセクハラが人の形をしているような風貌、変公に他ならないわッ!
……それにしても、再現度高過ぎないかこのイラスト?
この天をつんざくようなドヤ顔。
たわわわわわなおっぷぁいぷぁいで、今にもはち切れんばかりのセーラー服。
チラリと覗く蠱惑的なへそ……。
……完全にお店にしか見えない(何の?)。
「フッ、やるじゃないか。このイラストの作者とは、美味い酒が飲めそうだ」
「「っ!!」」
この声は!?
振り返ると、そこにはイラストとまったく同じポーズで佇んでいる、変公がいた。
ご本人登場ッ!!!
相変わらず音もなく忍び寄ってきやがって!
心臓に悪いぞいろんな意味でッ!
いつ懲戒免職になるの?(素朴な疑問)
「フッ、悪いが今回のイラスト対決は、私の勝ちのようだな足立」
「――は? はああああッ!? 今、何て仰いましたか、峰・岸・先・生ッ!!!」
「っ!?」
また始まったよこの二人!!!
どうして顔を合わせるたび喧嘩しかしないんだよ!
好きなの!?
本当は好き同士だったりするの!? ねえッ!?(唐突な百合展開)
「確かにそちらのイラストも素晴らしいですが、こっちは何て言ったってバナーですよッ! 広告塔ですよ広告塔ッ!! こちらのが一枚上手ではないでしょうかッ!」
「フッ、もちろんそちらもこの上ない逸品だということは認めよう。――だが見てくれ私のイラストを。実に線が生きていると思わないか?」
「いや、それはその通りかもしれませんが――」
……。
他所でやって!?
一応画廊だからねここ!?
まあ、今は僕達しかお客さんいないけどさ(そもそも学校の敷地内だし)。
「ヒャッハー! このイラスト最高にヒャハッてるねママー!」
「ママヒャッコイー!」
「ヒャッハヒャハだよママー!」
「ヒャハハハハハハハ。流石は我が愛したおんヒャだ、百派子」
「ヒャハッ! よしとくれよ、照れるじゃヒャいか」
「っ!?」
と、言ってる側から!?
いつの間にか百派山一家が入店してた!?
てか、一郎達はまだしも、何でパパとママまでいるの!?
それに、どの絵を見て言ってるんだ?
僕は一家の目線の先を追った。
そこには――
ヒャッポリート!?!?
まさかのママのイラスト!?!?
しかも何てせくしぃなんだッ!!
そこはかとなく香る世紀末感といい、スッと縦長で小さい理想の美へそといい、完全再現じゃないかッ!!!
今にも南斗紅〇拳の奥義を繰り出してきそうだ……!
つくづくこのイラストの作者の方は、画力を無駄遣いするのがお好きらしい。
「ふふふ、今回もお楽しみいただけているようですね」
「あっ、マ、マサキさん!」
オーナーのマサキさんがやってきた。
てか、この人がここにいるってことは、やっぱ建物ごと移動してる……?
「まったく……、私は何て幸せものなんでしょう……」
「マ、マサキさん……?」
あれ?
「幸せ……、幸せだよおおおおおおお!!!!! うわああああああああん!!!!!!」
「マサキさんッ!?」
今日は号泣すんの早いな!?!?
「おーいおいおいおい! エクフラおーいおいおいおい!」
今エクフラって言わなかった!?
「ヒャハハハハハハハ。小僧、そんな男はヒャハッておけ。今日は特別に、貴様も我ら一家団欒のヒャラオケに招待してヒャろう」
「え!?」
突然パパに肩を掴まれた。
いやいやいやいやいや、他人の家族と一緒にカラオケなんて、気まずいったらありゃしないですよ!?
それに僕は、まーちゃんと帰ろうとしてたんですし!
ねえ、まーちゃん!?
「――だから、私のバナーの方が芸術性が高いんですって!」
「フッ、だが私のイラストの方が、男子中学生ウケはいいと思うぞ?」
……。
まだやってたのか君らはッ!?
「ヒャハハハハハハハ。今日は朝までヒャハるぞお前達ー」
「「「「ヒャッハー!」」」」
えええええぇぇぇぇ……。
僕はパパに米俵のように担がれ、そのままヒャラオケルームに連行されたのであった。
ヒャッポリート……。
一郎「ヒャてと、先ずはいつも通り、エンヤから歌うヒャな」
智哉「(まさかのエンヤ!?)」




