特別編:ギャラリー『gift』②
更新が遅れて申し訳ありません!
現在「砂臥 環」様主催のリレー小説企画に、運営補佐として参加させていただいております。
私と砂臥様の投稿作品で、タイトルが「リレー小説~」と「全員バトン」となっているのがそれにあたりますので、是非そちらもご高覧ください。
作家の個性と個性がぶつかり合うリレー小説は、一見の価値ありです!
そして、今回は特別編第二弾です。
本作にいただいたファンアートを紹介させていただこうと思います。
今回のファンアートは「砂臥 環」様からいただきました!
描いていただいたのは、「番外編その16:肘コレ」で物議を醸した、ウェディングドレスに身を包んだ篠崎さんです!
その節は誠にありがとうございました!
「砂臥 環」様の
「騎士団長と嫁」
https://book1.adouzi.eu.org/n9603fc/
も、是非ご高覧ください!
「あれ? こんなとこに『gift』がある」
「「「え?」」」
今日は四人で今話題の、『転生したら織田信長のチョンマゲだった件 ~いや、これから本能寺行くんすか!? お願いだから考え直して!!~』という映画を観てきたのだが(因みに凄くつまらなかった……)、その帰りに駅前を歩いていると、まーちゃんが突然声を上げた。
『gift』?
『gift』って何だっけ?
まーちゃんの目線の先を見ると、確かにそこには『gift』と看板が掲げられた画廊が出来ていた。
ああ、これ前に僕らのファンアートが飾ってあった謎の画廊か。
でも、前は住宅街の中に建ってたけど、引っ越したのかな?
それとも支店?
僕は画廊には詳しくないからよくわからないけど、画廊で支店ってあんま聞いたことない気がするんだけど。
「これはひょっとしたら新しいファンアートが増えてるかもしんないね! ちょっと寄ってこうよ!」
「「ファンアート?」」
事情を知らない勇斗と篠崎さんは、揃って小首をかしげている。
こんな時でも仲良いなオイ。
「まあまあ、入ればわかるから! そんじゃレッツラゴー!」
「あ、おお」
「う、うん」
まあ、この後は別に用事はないし、いいか。
「おっと、その前に」
「「「え?」」」
おもむろにまーちゃんは僕の腕を掴むと、二の腕におっぷぁいをグイグイと押し付けてきた。
っ!?!?!?
「よし! では改めてレッツラゴー!」
「「「……」」」
何今の!?!?!?(答え:読者サービス)
「画廊だああああああヒャッホー!!!」
「またなの!? こういうとこで大きな声出しちゃダメって、前も注意したでしょッ!」
お母さん許しませんよ!(母親目線)
「えへへ、ゴメンゴメン。――あれ? 何か内装がまったく一緒だね」
「……あ、確かに」
僕も一度しか行ってないので記憶は朧気だけど、住宅街にあった『gift』と内装が同じに見える。
建物は別なはずなのに、内装がまったく同じになるなんてことあるのかな……?
「なっ!? こ、これはッ!?」
「「「っ!」」」
その時、勇斗が突如奇声を上げた。
何事かと勇斗の目線を追うと、そこには前回と同じく目立つ場所に、一枚の絵が飾ってあった。
その絵はこんなものだった。
う、うわああああああ!?!?!?
こ、これは……、肘コレの時の、ウェディングドレス姿の篠崎さん!?!?
神々しいッ!!!!
何この女神感ッ!!!!
絵画!?
絵画だよね最早これ!?
しかも敢えて淡い色使いをすることによって一生に一度しかないウェディングドレス姿の花嫁という儚さも演出している上色とりどりの花を全身にあしらうことにより純白のウェディングドレスをより引き立たせることに成功しているやんけ!(めっちゃ早口で言ってそう)
「……綺麗だ」
「「「!」」」
思わず漏れた勇斗の心の声に、その横に立っている篠崎さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
熱ッ!!!
何か急に、室内の気温が10度くらい上がったんですけど!?
冷房を!
冷房を入れてくださいッ!!
「な……、何だこれは」
「「「「――!」」」」
その時、僕らのすぐ後ろから、聞き覚えのない男性の声が聞こえてきた。
誰?
振り返るとそこには――
「えっ!? お、お父さん!?」
「「「!!」」」
篠崎さんはそこに立っていた、作務衣を着た渋い壮年男性をお父さんと呼んだ。
お父さん!?!?!?
この人が篠崎さんのお父さんなの!?
「……何でお父さんがここに」
「美穂!! これはどういうことなんだッ!!!」
「「「!!」」」
お父さんは篠崎さんの絵を指差しながら、物凄い剣幕で怒声を上げた。
こ、怖ッ!
篠崎さんの怒ると怖いところは、お父さん譲りだったのか……。
「どうって……」
「ワシはまだお前とこいつの交際を認めた訳じゃないんだぞ!! それなのにもうウェディングドレスを着たというのかお前はッ!!!」
お父さんは今度は勇斗を指差しながら怒鳴った。
う、うわあ……。
これは典型的な子煩悩なお父さんだ……。
お父さんは心配症(誤字にあらず)ってやつか。
「そ、そんな! お父さんに認めてもらわなくたって、私は将来勇斗くんと結婚するわッ!」
「「「っ!!?」」」
えーーー!?!?!?
まさかの爆弾発言!?!?
「け……けけけけけ結婚だと……」
お父さんは顔面蒼白で、生まれたての小鹿みたいに足をガクガクと震えさせている。
きてるきてる!
お父さんの足にきてるよ篠崎さん!
心配症のお父さんに、『結婚』というワードは地雷過ぎるよッ!
「み、認めん……、ワシは認めんぞおおおおおおおお!!!!!」
「「「「!!!」」」」
お父さんは怒髪天を衝くという表現そのままに、髪を逆立てて金色のオーラを全身から放った。
スーパーサ〇ヤ人!?
時に娘への愛は、父をスーパーサ〇ヤ人にさえも変えてしまうものなの!?
「……俺の話を聞いてください――お父さん」
「「「――!」」」
だが勇斗は果敢にも、そんな地球育ちのサ〇ヤ人の前に立ち、その眼を真っ直ぐに見据えたのであった。
勇斗……!
「き、貴様にお父さんなどと呼ばれる筋合いはないッ!」
おお。
漫画でしか聞いたことがない台詞。
まさかリアルで聞ける日が来るとは(現実逃避)。
「でも俺は、お父さんに認めていただくまで、何度でもあなたをお父さんと呼びます。――美穂を、この世の誰よりも愛してますから」
「なっ!?」
「ゆ、勇斗くん……!」
篠崎さんは口元を両手で覆いながら、眼に涙を浮かべた。
オイオイ相変わらずカッケーな勇斗は!?
イケメンムーブカマしてんなッ!?(嫉妬)
「う……、うぐ……、み、認めん……、ワシは認めんぞおおおおおおおお!!」
「お父さん!?」
「ま、待ってお父さんッ!」
すると一転、お父さんは号泣しながら、外に逃げ出してしまった。
え、えぇ……。
僕、いい歳の大人があんなに号泣してるところ、初めて見たよ……。
「悪い智哉、足立! 俺と美穂は行くわ!」
「あ、うん」
「頑張ってね!」
「美穂、お父さんを一緒に追いかけよう」
「う、うん……。ありがとう、勇斗くん」
「別に、彼氏なんだから当然だろ」
「勇斗くん……」
二人のバックに、大量の花が舞っているのが見える。
熱ッッ!!!!!!
太陽かな!?
超小型の太陽が出現したのかなここに!?
そして文字通りの熱々カップルは、手を繋ぎながらお父さんの後を追って出ていった――。
「上手くいくといいね」
「……うん、そうだね」
そんな二人の背中を、まーちゃんはニッコニコしながら眺めていた。
絶対面白がってるでしょ、君?
「ふふふ、お楽しみいただけておりますか?」
「「っ!」」
またしても聞き覚えのない男性の声がした。
慌てて声のした方を向くと、そこには40歳前後くらいの、冴えないサラリーマンみたいな風貌のオジサンが立っていた。
誰だこの人?
「あの、あなたは……?」
「ああ、これは申し遅れました。私はこのギャラリーを経営しております、マサキと申します」
「っ!」
オーナーさん!?
この冴えないオジサンが!?
とても美的センスがあるようには見えないけど……。
それに、マサキって苗字と下の名前、どっちだろう?
「『とても美的センスがあるようには見えない』、そう思われましたね?」
「なっ!?」
エ、エスパーかこの人!?
「でもそれは正解です。私自身には欠片も美的センスはございません」
「え」
でも、そんなんじゃ画廊は経営出来ないんじゃ……。
「だからこその『gift』なのです」
「?」
どういうこと?
「ここに飾られているものは全て『gift』。つまりいただきものばかりです。みなさまからいただいた『gift』で、このギャラリーは成立しているのです」
「そんな……」
そんなことって、現実にあり得るのか?
「凄い! 素敵ですねそれ!」
「まーちゃん!?」
まーちゃんが俄然色めき立った。
「それってそれだけ多くの方が、この作品を支えてくれてるってことですもんね!」
「この作品!?」
この作品って何のこと!?
「ええ、そうなんです。作品というのは、決して作者の力だけで作られるものではありません。多くの方が、こうしていろんな形で支えていただいているからこそ、築き上げることが出来るのです」
「うんうん、まったくその通りですね!」
……まあ、言わんとしていることは何となくわかるけどね。
所詮人間一人の力で出来ることなんて、たかが知れてるだろうし。
そもそも、もしも本気で自分の力だけで作品を作っていると思い込んでいる人がいるとしたら、それはとんだ思い上がりというものだろう。
何かを作り上げるためには、必ず糧となるものが要る。
時にそれは先達の知恵であったり、友人からの励ましであったり、家族の支えであったりするのだろう。
そもそもがこの世に、完全に自分一人の力だけで生きている人間など、ただの一人もいはしないだろうしな。
当たり前のことだけど、ついつい忘れがちな、大事なことだよな、それって。
「本当に……、いつもありがたい……」
「「?」」
マサキさんは声を震わせながら、顔を両手で覆った。
マ、マサキさん……?
「本当に……、ありがたいよおおおおおおお!!!!! うわああああああああん!!!!!!」
「「っ!!!?」」
えーーー!?!?!?
急に号泣し出したーーー!?!?!?
情緒不安定かよこの人!?
「うわああああああああん!!!!!! おーいおいおいおい! おーいおいおいおい!」
「「……」」
実際におーいおいおいおいって泣いてる人、初めて見たよ……。
まさか一日二回も号泣してる大人を見ることになるとは……。
「か、帰ろっか、ともくん」
「う、うん、そうだね」
僕とまーちゃんは、赤ちゃんみたいに泣き喚くキモいオッサンを尻目に、『gift』を後にしたのであった……。
美穂父「うわああああああああん!!!!!! 母さん、美穂が……、美穂があああああああ!!!!」
美穂母「あらあらまたなの? しょうがない人ね」




