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13-6

「我がガルディア家の問題は後で構いません。スセリさんの新たな身体をまずは手に入れましょう」

「いんや、おぬしのほうを先に片付けるぞ」


 ディアの提案にスセリがそう答えた。

 意外だ。

 スセリのことだから、真っ先に自分の身体を手に入れようとするかと思っていたのに。


「ワシらは今、クロノス・ガルディアに命を狙われておる。ガルディア家の後継者候補のディアを葬るため。そしてセオソフィーを取り戻すため」


 ヴィットリオさんが追加のサンドイッチを持ってきた。

 三角形に積み上がった山盛りのサンドイッチがテーブルの中央に置かれる。

 ほとんど一人でサンドイッチを平らげたのに、まだ胃袋に入る余裕があるらしく、セヴリーヌは我先にと山盛りのサンドイッチに手を伸ばした。


「常に暗殺者に狙われているような状態では、外を歩くことすらままならん。まずはクロノスを排除し、危害を取り除いてからワシの身体を手に入れるのじゃ」


 スセリの言うとおり、それがいいだろう。

 俺もプリシラもスセリの意見に同意した。

 ディアは「ありがとうございます」とお辞儀した。


「ぷはーっ。まんぷくだぞー」


 気が付くとサンドイッチの山が忽然と皿の上から消え失せていた。

 イスの背にもたれ、膨らんだおなかをさするセヴリーヌ。

 あれ全部をセヴリーヌ一人で食べたのか……。

 こんな小さな身体のどこに入ったんだ……。


 セヴリーヌはぴょこんとイスから降りる。

 そして食堂の出口へと歩いていく。


「どこへ行かれるのですか? セヴリーヌさん」

「家に帰るぞ。ディアとか言ったか。セオソフィーをアタシによこせ」

「は、はい……」


 ディアはセヴリーヌの手のひらに蒼の宝珠セオソフィーを乗せ――ようとしたとき、それをスセリが横から奪い取った。


「なっ!?」

「セヴリーヌよ。忘れたのか。これを渡すのはワシとの約束を果たしてからなのじゃ。おぬしは平気で約束を破るからの。報酬は後払いじゃ」

「ぐぬぬ……」


 くやしげに歯ぎしりするセヴリーヌ。

 言い返さないということは、一応自覚はあるわけだな……。

 セヴリーヌはぷんすかと地団太を踏む。


「ならとっととクロノスを倒してこい! アタシは帰るぞっ」

「セヴリーヌさま、一人で行動されるのは危険ですよ。またクロノスの暗殺者に狙われちゃいます」

「そんなの返りうちにしてやるぞ」


 そう言ってセヴリーヌは俺たちの前から去ってしまった。

 だいじょうぶなのだろうか……。


「あやつも人並外れた魔術師じゃ。クロノスの手下を撃退する程度はできるじゃろう」


 プリシラが切なげにおなかをさする。


「それにしても、おなかぺこぺこですー」

「ヴィットリオ。おかわりを所望するのじゃ」

「あれだけサンドイッチを作ってやったのに、まだ足りないのか」


 厨房から出てきたヴィットリオさんが呆れた調子で言う。

 ヴィットリオさんが作ってくれたサンドイッチのほとんどはセヴリーヌの胃袋に入ってしまった。結局、俺たちはほとんど朝食にありつけなかったのだ。

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