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120-7

「ならば直接会って尋ねてみるか? 旧人類に」

「まさか、宇宙に行くって言いだすつもりじゃないだろうな……」

「そのまさかじゃよ。こっちは冗談じゃないのじゃ」


 空よりも高い場所にある世界――宇宙。

 古い文明が滅んでほとんどの科学技術が喪失した俺たちの時代では、宇宙に行くことなど不可能だ。空さえ満足に飛べていないというのに。


「で、どうやって宇宙に行くつもりなんだ?」

「階段を上るのじゃ」


 やはり冗談だったらしい。


「地上から宇宙にまで続く階段があるっていうのか?」

「あるのじゃ」

「じゃあ、連れていってくれよ」

「ふむ、いいじゃろう。ちょうど招待状も届いておるしな」


 スセリが端末の画面を見せてくる。

 画面には俺たちの文明の、俺たちの国の文字で文章がつづられていた。


 ――我がゲームを愛する者たちへ。諸君を我々の国へ招待する。どうか諸君の力を貸してほしい。


 スセリの言うとおり、それは招待状だった。


「旧人類はワシらに加勢を求めておるのじゃ」

「宇宙に進出したような、高度な文明を持った連中が俺たちに?」

「猫の手も借りたい事態なのかもしれんぞ」

「お話し中失礼します。アッシュさま、スセリさま、ティータイムの準備ができました」


 そこでいったん話は終わり、俺とスセリはプリシラとマリアとお茶を飲むことにした。

 テーブルに四つ、湯気が立ち昇るティーカップが並べられる。

 中央には大皿に載ったクッキー。


「ラピス王女から頂いたクッキーですのよ」

「王族御用達とは楽しみじゃのう」


 最初にクッキーに手を伸ばしたのはスセリだった。

 手にしたクッキーをバリボリとむさぼる。

 俺たちも彼女に続いてクッキーを口にした。


「おいしいです!」

「上品な味わいですわね」

「ワシとしてはもっとロコツに砂糖を盛ったほうが好みじゃがな。このいかにもな上品さがかえって鼻につく」

「と言いつつ、いっぱい召し上がってますね……」


 サイフにやさしい舌で助かる。

 紅茶もいい香りで、口に含むと程よい渋みが広がった。


「プリシラにマリアよ。次の冒険は宇宙じゃぞ」

「う、宇宙ですか……?」


 プリシラとマリアはいぶかしげな顔をする。

 やはり唐突だったか。

 はるか空のかなたに旧人類の生き残りがいる可能性を伝えると、二人は興味を示した。


「わたくしたち、だいぶ名を上げましたのね。宇宙から依頼が来るだなんて」

「困っている人のためなら空の果てまで駆けつける所存です!」

「今回は遠出になる。列車のチケットの予約を忘れるでないぞ、プリシラ」


 それとどうやら国の許可も必要らしい。

 宇宙へ行くための装置がある遺跡は王国が極秘で管理しているのだという。


「宇宙へ行ったら星をいくつか持ち帰ってもいいのでしょうか?」

「え?」


 プリシラが妙なことを口走ったので俺はつい声を出してしまった。


「あのキラキラを部屋に飾れば、夜になるととってもステキなことになると思うんですっ」


 その言葉を聞いた俺は彼女のことがとても愛しく感じられ、ついこう言ってしまった。


「ポケットに入るくらいなら持って帰ってもいいかもな」

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