119-5
夏の季節の世界を進んでいくと、やがて門へとたどり着いた。
季節の境界の役目を果たしている門だ。
門の向こうには鮮やかな紅葉の世界が広がっている。
次の世界は秋。
うだるような暑さの夏に別れを告げ、俺たちは門をくぐった。
「まっかな葉っぱがいっぱい落ちてますっ」
紅葉の落ち葉を踏みしめながら俺たちは道を進む。
街路樹のように道の両脇に木々が生い茂っていて、ひらひらと落ち葉を落としている。
無限に葉っぱがあるかのように、常に視界には落ち葉が舞っていた。
春も夏もそうだったが、秋の世界も美しい。
これがラニスの死へとつながる冒険だというのを忘れてしまいそうになる。
「アッシュよ。もし村の連中が信奉する神が実在したとして、ラニスを要求してきたらどうする?」
スセリに問われる。
「説得する。少なくとも、ラニスをむざむざ渡したりはしない」
「アッシュさん……」
「安心してくれラニス。キミを死なせはしない」
彼女を犠牲にはしない。
これだけはぜったいに果たすと誓った。
「わたしは……、村のためなら犠牲になるのを覚悟していました」
うつむくラニス。
「なのに、今はこわいんです。死にたくありません。アッシュさんたちとせっかくお友達になれたのに、死にたくないんです」
ついに彼女は嗚咽を上げて泣き出した。
彼女の肩をマリアがそっと抱いた。
「なのじゃったら、こっそりここから逃げるかの? 王都まで逃げればこっちのもんじゃろ」
「そ、それはできればやめていただきたいです」
ラニスが首を横に振る。
「いけにえにはなりたくないんですけど、村が機械人形に襲われるのも止めたいんです。わがままかもしれませんが……」
たしかに、俺たちが役目を放棄して逃げ出した結果、村が滅んでは寝覚めが悪い。
冒険者の理念にも反する。
俺たちはこのまま四季の園を進み、最後に待ち受けるものと対峙しなければならない。
「あの自爆する機械人形は他にもいっぱいあるんですよね」
「うむ。どこかしらに眠っておるじゃろう。いつ目覚めてもおかしくないのじゃ」
機械人形は古代の旧人類の兵器だった。
その多くは制御装置によって動かされていた。
制御装置を見つけ出して電源を切れば暴走を防げる。そうスセリは説明した。
まずはこの楽園の最深部になにがあるのか見届ける。
それから遺跡へ赴いて制御装置を見つけることにした。
その後、何度か魔物や機械人形に遭遇し、それらを倒した。
敵を退けつつ先へと進む。
「腹がへったのじゃ」
唐突にスセリがそう言った。
「落ち葉で焚火をしておイモを焼いたらおいしそうですね」




