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116-3

 コラプビーストは獣の姿をしているが、知性はかなり高く、他の魔物を統率して群れで人間を襲うらしい。

 だが、この魔物の真の脅威は別のところにある。


「コラプビーストは魔法を無力化するんですよね」

「ああ。どうやらコラプビーストの周囲には魔力を阻害する力が働いしてるらしい」

「アッシュさまの『オーレオール』の力を借りてもダメなのでしょうか」

「わからないが、試しに一発、ってわけにもいかないからな……」


 魔法を打ち消す能力を持っているため、王国や冒険者ギルドはこの魔物に手を焼いているのだ。

 コラプビーストは今のところ、俺たちの存在に気づていない。

 草食なのか、地面の草をはんでいる。


「で、策は考えてきたのか? アッシュよ。まさか肉弾戦とは言うまい」


 スセリがふざけてパンチをぶんぶん連打してみせる。


「魔法が使えないのならば、このプリシラにおまかせください! 必ずやコラプビーストをやっつけてきてみせますっ」


 プリシラが胸に手を当てて宣誓する。

 確かに、魔法が使えない条件下なら、一番戦力になるのは半獣のプリシラだろう。

 だとしても、彼女一人をあてにするわけにはいかない。


 もっと根本的な対策が必要だ。

 そこで俺が目につけたのは、コラプビーストの背中にある紫の結晶だ。

 宝石のようなそれは不気味に光を放っている。


「あの結晶が魔力を阻害しているのかもしれない」

「ご存じなのですか?」

「い、いや、そんな気がする」


 あんな異様なものがなんの意味もなく背中にくっついているとは考えづらいからだ。


「スセリはどう思う?」

「どう思うもなにも、あれがまさしく魔力を阻害している部位なのじゃ。あそこだけ異質な魔力を感じるじゃろう? あの部位から発生する魔力が他の魔力に干渉して相殺しているのじゃ」

「す、すまない……。俺にはよくわからない」

「修業が足りんのじゃ。この『稀代の魔術師』の後継者なのを自覚するのじゃ」


 魔力阻害の発生源がわかったら、それを壊すのみ。


「プリシラ、頼めるか?」

「もちろんですっ。メイドの威信にかけて壊してみせます」


 コラプビーストは今は一体だけだが、戦いになると手下を呼ぶはず。

 その前に先制攻撃を仕掛けて一気に倒したい。

 少なくとも、あの水晶を破壊して魔法を自由に使えるようにしないと一網打尽だ。


「静かに、そして大胆に行ってまいります!」


 プリシラが忍び足でコラプビーストに背後から近づいていく。

 少しずつ、少しずつ接近していく。

 コラプビーストはのんきに草を食べている。


 あと数歩でプリシラのロッドの攻撃範囲に入る。

 ……そのとき、パキッとなにかが折れる音がした。


「ひゃあっ!」


 プリシラがうっかり足元に落ちていた木の枝を踏み折ってしまったのだ。

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