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112-1

「では、第2問。ある男の子は銅貨を10枚持っていました。青果店で貨3枚で売られているリンゴを2つ買うと、残りの銅貨は何枚でしょう?」


 これは余裕で答えられる。

 ……が、さすがに挙手はしない。

 ろこつにあの子供たち向けの問題だからだ。


「はいはいはーいっ。3枚です」


 小さなお姫さまが挙手して答える。

 ナイトの男の子が呆れたふうに言う。


「違うよモニカ。4枚だよ」

「正解です。よくできました」


 ほほえましい光景だ。

 それからも問題は10問まで続いたが、全組平等に答えられる問題が出題されていて、終わったころにはみんないい感じに拮抗するかたちで終わった。


 次なる試練は剣術。

 舞台に藁人形が三体置かれる。


「ていやーっ!」


 若者のナイトが剣を振り下ろすも、刃は藁人形の途中まで食い込んで終わった。


「えーいっ」


 小さな男の子のナイトは危ないので木剣で藁人形を叩いた。

 将来が楽しみな剣さばきだった。

 場の空気がなごんだような気がした。


 いよいよ次は俺の番。

 俺は藁人形の前に立ち、剣を構えて精神を集中させる。

 心の中で一滴のしずくが水面に落ち、波紋を広げたその瞬間、俺は勢いよく剣を振った。


 斜めに振り下ろされた剣は藁人形を一刀両断した。

 歓声が沸き起こる。

 どうにかかっこいいところを見せることができた。


 そしてその次は老人のナイト。

 老人のナイトは腰を深く落として剣を水平に構える。

 その姿勢を保ったまま微動だにしない。


 しんと静まり返る広場。

 次の瞬間、老人は「はーっ!」と叫んで剣を振るった。


 一閃。

 たしかに俺の目にはたった一撃に見えた。

 にもかかわらず、藁人形は無数に細切れにされて地面に散らばったのだった。


 すごい。間違いなくこの老紳士、剣の達人だ。

 さっきの気迫はどこへやら、老紳士はにこやかな笑みを浮かべていた。

 もしかするとこの人、昔は騎士か傭兵か、あるいは冒険者だったのかもしれない。


「では、最後のダンス勝負となります」


 裏手から楽器を持った人たちが現れて舞台の後ろ側に並ぶ。


「観客のみなさんもぜひ一緒に踊ってください」


 意外な展開だ。

 舞台の前で見物していた人々がペアを組みだす。

 そして奏者が演奏をはじめて音楽が鳴りだすと、人々は踊りだした。


「アッシュ。なにぼーっとしてますの」


 マリアが手を差し伸べている。

 俺はその手を取った。


 しっとりとした上品な音楽が流れる中、俺たちはダンスした。

 舞台の上の人たちも、観客たちも。


 やっぱりこのコンテスト、真剣勝負というよりは王都の人々を楽しませる催しの一種だったんだな。

 俺は肩の力を抜き、気楽に踊った。

 ダンスの主導権が常にマリアにあった。


 俺はマリアの動きに合わせてステップを踏んだ。

 くやしいが、こればっかりは彼女のほうが上手なのだ。

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