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109-7

 大妖精とニーナに大樹のある場所へと案内された。

 妖精の里の、最奥に位置する場所。

 そこに巨大な樹があった。


「す、すごい大きな樹ですっ」


 1000年、2000年と生き続けてきたのだろう。

 まさしくそれは大樹だった。

 その大きさだけで神聖なものが宿っているのがはっきりとわかる。


 大きく、神々しい大樹。

 妖精たちが信仰の対象にしているのも道理だ。

 しかし、大樹の枝の葉はまばらで、地面に散ってしまっている。


 近づいて大樹に触れてみると、魔力の流れに淀みと濁りを感じ取れた。

 大樹は邪悪な力に汚染されている。


「大樹が枯れてしまえば、この森も同じ運命をたどるでしょう」

「アタシたちにとって大樹は大切なものなの」


 このまま放っておけば大樹は枯れる。


「アッシュさま、どうにかできないでしょうか」

「『オーレオール』の魔力を送り込めばよろしいのではなくて?」

「……いや」


 大樹が枯れている原因が魔力の不足ならそれでいいだろう。


 しかし、今回は違う。

 魔力が足りていないのではなく、不純物が混ぜられてしまっている。

 だから妖精たちは聖杖アルカレイドの邪悪を退ける力を使うつもりなのだ。


「でしたら、浄化の魔法を使うのはどうでしょう」

「それも根本的な解決にはならなそうなのじゃ」


 スセリは大樹の足元でしゃがみ、心音を聴くかのように根元に触れていた。


「大樹は邪悪な魔力を根から吸っておる。魔法で浄化したところで、すぐにまた邪悪な魔力を吸ってしまうじゃろう」

「そんな……」


 だとしたら、聖杖アルカレイドを捧げたとしても一時しのぎにしかならない。


「大妖精。大樹の根はどれくらい広がっているんだ?」

「大樹は森全体を覆うように根を張っています」


 森のどこかに汚染の原因になるものが存在する。

 それを取り除く必要がある。


「邪悪なものの心当たりはないか?」

「……もしかしたら、あれかも」


 ニーナがつぶやく。


「ちょっと前にね、空から隕石が落っこちてきたの」

「その隕石からは邪悪な魔力を帯びていまして、近づくのを禁じていたのです」


 原因が判明した。


「俺たちで隕石を取り除こう」

「よいのですか?」

「代わりに、聖杖アルカレイドは俺たち人間に貸してくれないか? 妖精たちの宝なのはわかるけど、領民たちは杖の力を頼りに暮らしているんだ」

「……」


 考え込む大妖精。

 うつむいていた彼女はやがて顔を上げた。


「わかりました。この件を解決してくださったら杖をお貸ししましょう。ニーナ、彼らを隕石の場所まで案内しなさい」

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