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109-1

 俺とプリシラとマリア、それにスセリの四人でグラヴィル伯爵が主催する社交パーティーに出席した。

 伯爵の所有するオード領は王都から離れた場所にあり、列車で数日かけてやってきた。


 ギルド長、エトガー・キルステンさんの代理としての出席となる。

 代理とはいえギルドの代表。

 恥をかかないよう気をつけないと。


 俺たちは今、伯爵の屋敷で他の貴族たちと談笑している。

 俺のとなりには当然のごとくマリアがいて、少し後ろにはプリシラが控えている。

 スセリといえば、自分たちの義務などそっちのけで、ひたすら料理を食べて酒を飲んでいた。


「それにしても私も幸運だ。あの名門ランフォード家のご令息と知り合えたのだからね」

「いえ、そんな。グラヴィル伯爵に比べればしょせん田舎者です」

「ははははっ。謙遜してはいかんよ。キミの一族は優秀な召喚術師を何人も輩出しているのだよ」


 グラヴィル伯爵はパーティーがはじまってから終始ごきげんだった。

 それにしてもランフォード家を知る人がここにもいるだなんて。

 自分の一族が諸侯にどれほどの影響力があるか、今さらながら実感する。


 食事をとりながら俺はグラヴィル伯爵といろいろ話をした。

 伯爵は冒険者としての仕事がどんなものか興味があるようで、そればかりせがんできた。

 俺としてもその話題に関してはいくらでも話せたので助かった。


 遺跡を探索したり、魔物や機械人形と戦う話をしていると、興味を示した他の出席者たちも俺の周囲に集まってきた。

 本物の冒険物語は大好評だった。


「うらやましいかぎりだ。美しい婚約者もいて」


 ここで否定してはマリアの顔に泥を塗るから笑ってごまかす。

 マリアというと、上品な笑みをたたえていた。

 背後のプリシラはどんな表情をしているだろうか……。


「ほれ、アッシュ、マリア。食事をとってきてやったのじゃ」


 スセリが俺たちに料理が盛られた皿を渡してくる。

 グラヴィル伯爵の視線が彼女に向く。


「あなたは確か、『稀代の魔術師』と呼ばれている、不老不死のスセリ嬢でしたな」

「ほう、ワシの名はここまで広まっておるのか」

「あなたは本当に不老なのですか? 子孫が演技をしているのでは?」

「おぬしがそう思うのならそれで構わんのじゃ」

「いや、失礼いたした。疑っているわけではないのですが、まさか本当に不老不死の人間がいるだなんてにわかには信じられず……」


 苦笑するグラヴィル伯爵。


「確かあなたは伝説の魔書『オーレオール』を著したのだとか」

「いかにも」

「魔書は膨大な魔力を秘めていると聞きました。実は我がグラヴィル家も、尋常ならぬ魔力を宿した財宝を代々受け継いでおりましてな」

「それは興味があるの。見せてほしいのじゃ」

「もちろん、そのつもりでした」

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