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106-6

 俺とマリアとプリシラは広間の中央に集まって腰を下ろした。

 座った途端、どっと疲労が押し寄せてくる。

 迷宮をずっと歩いていたから疲れていたんだな。


「紅茶を用意いたしました」


 プリシラがコップを差し出してくる。

 コップからは白い湯気が立ち上っていて、紅茶のいい香りがしていた。

 紅茶を口に含む。


 ちょうどいい温度だ。

 古代文明の保温ポットを買ってよかった。

 保温ポットは冒険でかなり役立っている。


「マリアさまもどうぞ」

「いただきますわね」


 マリアもコップを上品に持って紅茶を味わった。


「クッキーもありますよ」


 ランチボックスを開けると、中にはぎっしりクッキーが詰まっていた。

 プリシラとベオウルフ、それに宿屋の看板娘のフレデリカで焼いたクッキーだった。

 カリッとかじると、口の中にアーモンドの香りが広がった。


「おいしい」

「てへへー」


 くすぐったそうに顔をほころばせるプリシラ。


「アッシュさまの将来の妻として恥じないよう、いっしょうけんめい作りました」

「聞き捨てなりませんわね」


 マリアが眉をぴくりと動かす。

 胸を張り、その胸に手を添えて堂々と言う。


「アッシュの妻になるのはこのわたくしですわ」


 しまった。二人の戦いがはじまってしまった。

 にこりと笑うマリア。


「ですが、プリシラはわたくしの親友。『二番目の妻』なら構いませんことよ」

「いやですっ」


 プリシラにしては珍しく明確に拒否する。


「こればかりは譲れませんっ。わたしが『一番』ですっ」

「いーえ。わたくしが一番ですわ」

「わたしですっ」

「むむむむ……」


 ばちばちと二人の視線がぶつかって火花を散らす。


「人気者じゃのう」


 端末からひどくのんきな声がした。


「ところで二人とも。この遺跡ってどんな目的で作られたのだと思う?」

「作られた目的ですか」

「お城を守護するためではなくて?」


 それは違う。

 遺跡は最初からここにあり、それを発見した王家がその上に城を建てたのだ。

 古代人はなんらかの目的でこの遺跡を建てたことになる。


「魔王ロッシュローブと戦うためかもしれんの」


 遺跡からは外敵を寄せ付けない魔法が発せられている。

 旧人類の宿敵である魔王ロッシュローブから守るために作られたのだとスセリは言った。

 魔力を吸収しているのは、不足してきた魔力を補うためなのかもしれない。


「皮肉なことじゃな。人類のために作ったものが今、ワシらを困らせているのじゃから」

「さっきの魔物もかわいそうでしたね。人間が作ったこの建物を守るために生み出されたのでしょうから……」


 結果的に俺たち人間と戦うことになってしまった。

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