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100-5

「スセリもうらやましいだろ」

「いんや、別に」

「あははっ。もっと悔しがれ」


 なんだこの違和感は。

 それからすぐ、その違和感の正体に気づいてしまった。

 セヴリーヌ、俺を連れてケルタスに帰るつもりでいる。


「セヴリーヌ。もしかして、船旅に俺もついていくのか?」

「えっ、違うのか?」


 ぽかんとするセヴリーヌ。

 どうしてそんな勘違いをしてしまったのだろう。

 けど、考えてみれば彼女を一人で帰すのはかわいそうだ。


「違うのか……?」


 瞳をうるませている。

 俺は首を横に振って否定した。


「違わない。いっしょに船旅を楽しもう」

「だよなっ」

「でも、俺だけじゃないぞ。スセリもプリシラもマリアもいっしょだ」

「えー」


 不満げな表情をされてしまった。


「……まあ、しかたないな」


 そして渋々うなずいたのだった。

 四人分のチケットを追加で購入した。



 そういうわけで俺たち五人は今、出航した船にいる。

 王都の港はすっかり小さくなってしまった。


 甲板には俺たち以外にもちらほら乗客がいる。

 俺のとなりにはセヴリーヌ。

 上機嫌なようすで大海原を眺めている。


「久しぶりにアッシュに会えてよかった」

「俺もうれしいよ」

「そうなのかっ!?」


 ぱあっと顔を輝かせる。


「スセリといるときよりも楽しいか!?」

「そ、それは……」


 困った質問だ……。

 誰かと誰かを比べることはしたくない。


「同じくらいだ」

「なんだって!」


 セヴリーヌがむっと憤慨する。


「あいつと同じだなんて許せん。あいつよりもアッシュにふさわしい人間になってやる。アッシュはアタシになにを望むんだ? なんだってしてやるぞ」


 本当に困った……。


「どうすればアッシュの一番になれるんだ? アタシたち親友じゃなかったのか?」


 真剣な目つき。

 悪い気はしないが、やはり仲間同士を比べるのはよくない。


「相変わらず子供じゃのう」


 そんなとき、彼女のとなりにスセリが現れた。

 甲板の手すりにもたれて海を眺める。

 セヴリーヌがあからさまに敵意をあらわにする。


「じゃまだからあっちにいけ」

「まあ、よいではないか。ワシらは腐れ縁なのじゃから」


 邪険にされてもスセリは彼女のとなりから動こうとしない。


「アッシュは呆れるほどお人よしじゃ。こやつにとってはみんなが『一番』なのじゃよ」

「それは『一番』って言わないぞ」


 もっともだ。

 言い換えればそれは優柔不断。

 選ぶべきものを選べていない。


「勘違いしておるようじゃが、必ずしも物事のすべてに優劣をつける必要はないのじゃよ。全部が平等であっても正しいものがあるのじゃ。そのひとつが『友情』じゃ」

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