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地下の遺跡の地図も完成に近づいてきた。
遺跡はたまごのあった場所が最深部だったので、あとは上の階の探索していない箇所を探索するだけだ。
階下への最短経路から外れた経路を歩いていく。
細い通路を歩いた先の部屋へ入る。
「機械人形がいるのじゃ」
部屋には二体の機械人形がうろついていた。
銃を持った人型の機械人形。
「さて、どうするのじゃ、アッシュよ」
危険だが討伐しよう、と俺は提案する。
ここの機械人形を排除すれば、探索可能な範囲が広がるし、地図もより詳しく描ける。
スセリとプリシラ、マリアは提案に賛成してくれた。
相手は以前にも戦った機械人形。
魔法に反応して魔法障壁を展開してくる。
だが、魔法以外の直接攻撃に関してはもろいのもわかっている。
「ワシが戦うのじゃ」
珍しく、スセリが率先して申し出てきた。
「たまには運動をしないとのう」
「ですが、スセリさま。接近戦ならわたしにおまかせくだされば……」
「プリシラは地図描きで疲れておるじゃろ。遠慮するでない」
背を低くして腰を落とす。
じっくり力を溜めた次の瞬間、バネのように跳ねて疾駆する。
瞬時にして機械人形の一体に接近すると、強烈な蹴りをかました。
機械人形の腰から上が吹き飛ぶ。
とてつもない威力の蹴りだ。
魔力で身体能力を強化しているのは明らか。
それにしても、これほどまでの威力を出せるほど強化できるとは。
さすがは『稀代の魔術師』と言わざるをえない。
まずは一体を撃破したスセリは、続けざまにもう一体の機械人形に近づく。
そして腕をつかむと、背負い投げをして身体を地面に叩きつけた。
床に叩きつけられた背中から身体全体に衝撃を受けた機械人形が、関節という関節から火花を出して壊れた。
「肩慣らしにもならんのじゃ」
これだけの肉弾戦ができるなら、プリシラと戦ってもいい勝負になるだろう。
普段はおちゃらけているが、やはり彼女の本性は偉大なる魔術師だと再認識させられた。
障害を排除し、部屋の奥へと進む。
そこには扉があった。
たまごがあった部屋のときと同じ、機械的に封印されている扉だ。
扉の側にはあのときと似たような台座があった。
今回はボタンはついていない。
代わりに手のひらの絵が描かれていた。
「ここに手を重ねろ、という意味かしら」
「あ、危ないですよ、マリアさまっ」
マリアが臆せず台座に手のひらを乗せる。
すると、台座が赤く発光すると同時に、頭上から女性の抑揚のない声が聞こえてきた。
声は古代文明の言語のようで、意味は理解できない。
「スセリ。今の言葉の意味はわかるか?」
「『お前じゃ先には通せん』と言っておった」




