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「あわわわ……。わ、私、お客さまたちの期待に応えられるでしょうか……」
「安心するのじゃ。おぬしには焼きそばパンとカレーパンがあるのじゃ」
「そうですよっ。それに、わたしたちもいますからっ」
「エリンシア」
俺はエリンシアの肩に手を置く。
びくりとするエリンシア。
あ、まだ知り合って間もないのに、馴れ馴れしすぎたかな……。
「自信を持ってくれ。不安かもしれないが俺たちがいる」
「アッシュさん……」
「エリンシアのパンをみんなに届けよう」
「……はい」
あと少しで開店の時間。
エリンシアは深呼吸する。
息を吸って吐いたあとの彼女は落ち着きを取り戻していた。
それどころか、自信に満ちた表情をしている。
彼女はゆっくりとした足取りで店の入り口の前まで行くと、扉を開け放った。
「お待たせいたしましたっ。『ブランシェ』開店ですっ」
ぞろぞろとお客さんたちが入店してくる。
そして次々とパンをトレーに乗せていく。
「お会計はこちらになりますーっ」
会計係のプリシラが元気よく言う。
「チラシに書いてあった『カレーパン』はどれですか?」
「あ、それならこちらになります」
エリンシアは愛想の良い笑みで接客する。
俺とマリアはお客さんが買ったパンを紙袋に詰める役をひたすらこなす。
「パンはまだまだあるのじゃ」
スセリはパンの補充係だ。
パンは次々と売れていくため、スセリは大忙しだ。
「まいどありがとうございましたっ。またお越しくださいっ」
開店してあっという間にパンは売り切れてしまった。
まだ午後にもなっていないのに、もう売れるパンは残っていない。
予定よりもかなり前倒しにして今日の営業は終了した。
「だ、大盛況です……」
エリンシアはよろこんでいるというよりも、困惑していた。
「これだけお客さんが来るのならもっとたくさん焼いておけばよかったですわね」
「明日は口コミが広がってもっと客が来るじゃろう。今日の倍は焼かんとな」
「そ、そうですねっ」
「ところで、今日の売り上げはどのくらいだ? プリシラ」
「はい。今日の売り上げは――」
プリシラが売り上げを報告する。
するとエリンシアは目玉がこぼれ落ちそうなくらい仰天した。
「う、うそですよね!? ケタが一つ違うのでは……」
「いーえ。これで間違いありませんよ、エリンシアさまっ」
「すごい……」
俺たちも驚いていた。
とはいえ、当然か。店にあるパンぜんぶ売れたのだから。
「こんな売り上げ、初めて見ました」
「大儲けなのじゃ。パン成金も夢じゃないのじゃ」




