表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

629/842

90-5

「まあ、道理だな」

「そういうわけで、平和的解決を図るのじゃ。よいな?」


 風の神と雨の神は顔を見合わせる。

 目配せし合ったあと、そろって頷いてこう言った。


「よくねえ。相手をぶっ倒すまで俺は止まらねえぞ」

「男の意地の張り合いに女が割り込んでくるんじゃねえ」

「……あー、だめじゃな、これは」


 スセリは呆れた顔をして肩をすくめた。


「さて、続きを始めるか」

「おう」


 風の神と雨の神は再び戦いを始めた。

 拳と拳のぶつかり合い。

 はたから見れば戦いと呼ぶには少々単純すぎる、単なる不良のけんかだった。


 再び空が荒れ、雨が降りだし風が荒れだす。

 プリシラとマリアが「ひゃーっ」と悲鳴を上げながら傘を開いた。


「けんかはやめろ!」


 しかし、俺の言葉は届かない。

 どれだけ訴えても二人は戦いをやめなかった。



 村長邸に戻って報告する。


「やはりダメでしたか」


 最初から期待していなかったのだろう。村長は大して落胆せずにそう言った。


「ううー、どうしましょう」

「けんかが終わるのを待つしかありませんわね」

「しかし、冒険者どの。数年前のうるう年のとき、嵐は三か月続いたと記録にありましたぞ」

「夏が終わってしまいますわ!」


 あいつら、三か月も殴り合ってたのか……。

 さすが神さまはやることの規模が違う。

 極めて迷惑かつ、心底くだらないが。


「アッシュ、なんとかなりませんの?」

「アッシュさまならきっと名案があるに違いありません」

「のじゃじゃじゃ。将来の妻たちがおぬしに期待しておるぞ」

「……実を言うと、なんとかなる気がするんだ」

「なんじゃと!?」

「スセリが驚くのか……」


 名案というには平凡すぎる案だが、ないこともなかった。


「村長。グリフォンピーク島にはほかにも神さまはいるのですか?」

「はい。大地の神がいます」

「でしたら、うるう年の余った一日を大地の神さまにまかせてはいかがでしょう」

「ほう!」


 村長が驚く。


「第三の神に一日を譲るとは思いつきませんでした!」

「柔軟な発想ですわ、アッシュ」

「さすがアッシュさまですっ」

「単純かつ明快なのじゃ」


 照れくさくなって頭をかく。

 だ、誰にでも思いつきそうなんだが……。


 そもそも、一年の日にちは奇数で、最初から半分にできない。

 むしろ、うるう年が来る日だけぴったり半分に分けられるのだ。

 ということは、普段は一年の一日だけ、雨の神と風の神以外の神が受け持っているのだろうと俺は考えていた。


 その推理は的中した。

 村長の話によると、一年の一日だけ大地を司る神が担当し、その日はお祭りが催されるとのこと。

 ならばうるう年は二日間、大地の神にまかせればいい。


 けんかをしている二柱の神も、一日しか受け持っていなかった大地の神に譲るとなれば納得してくれる……はず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ