表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

609/842

87-6

 マリアはいじっぱりだな。


「アッシュ。わたくしのかたきをうってくださいまし」

「お、俺か?」


 自分を指さす。

 マリアは席を立って代わりにそこに座るよう促してくる。

 スセリは不敵な笑みを浮かべている。


「ワシは誰であろうと受けて立つのじゃ」


 スセリとシャトラで対戦か。

 手ごわい相手になりそうだ。


「わかった。手合わせ頼む」


 コマを初期配置に並べ直し、俺とスセリの対戦がはじまった。

 序盤は互いに素早くコマを進めていく。

 最初は互いに定石どおりの動きだ。


 とはいえ、相手はスセリ。お手本みたいな戦法を取ってくるとは思えない。

 油断せず、しっかり盤面を見ていかないと。


「退屈な動きじゃのう」


 スセリがあくびする。

 余裕といったようすだ。


「アッシュ。果敢に攻めるのですわよ」

「いや、相手はスセリだ。まずは様子見をしないと」

「先手必勝ですわ!」


 俺の隣に座るマリアがいろいろ口をはさんでくる。

 き、気が散る……。


「しかたない。ワシから攻めてやるのじゃ」


 ついにスセリが動き出した。

 戦いに最も向いた騎士のコマを最前線に持ってくる。

 俺も防御を固める。


 スセリは兵士のコマを次々と前へ出していき、攻勢を強めた。

 一般的にシャトラは守りが強いゲームと言われている。

 なのにスセリはあえて自分から攻撃に出た。


「ときにアッシュよ」

「うん?」

「いい加減、結婚する相手は決めたのじゃろうな」

「な、なんだよいきなり……」

「単なる雑談なのじゃ」

「アッシュはわたくしと結婚する約束をしていますの」


 マリアがドヤ顔で指輪をはめた手を見せびらかしてくる。


「それは恋などろくに知らん幼少のころの約束じゃろう。今はどうじゃ?」

「アッシュ。わたくしを選びますわよね!?」


 マリアがすごい形相でにらみつけてくる。

 俺はつい目をそらしてしまった。


「そ、それは、スセリの言うとおり、子供のころのことだから……」

「約束に今も昔もありませんわよ!」

「のじゃじゃじゃじゃっ。うかつな約束をしてしまったのう」


 そんな雑談をしながら互いにコマを進めていく。

 これは冷静さを失わせる スセリの罠だ。

 マリアがもじもじしながら言う。


「わ、わたくしはアッシュが妾を持つことには反対しませんわ……。プリシラのことも好きなんでしょう? 親友のプリシラなら、アッシュを愛するのを許せますわ。で、でも、わたくしは正妻の座だけは譲れませんわ」

「いーや。正妻はワシじゃ。マリアは二番手に甘んじるがよい」

「ぜーったい、イヤですわ!」


 ……しまった。

 気がつくと、スセリのコマが俺の陣地のもろい部分に陣取っていた。

 これでは俺のコマが身動きが取れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ