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俺たちの他にも冒険者が50人ばかりやってきた。
この規模の遺跡をくまなく探索するとなるとぜんぜん足りない。
本当は王都中の冒険者をかき集めて遺跡を探索させるべきなのだが、王都周辺は今、不死身と化した機械人形がうろついているため、そちらにも人員を割かざるを得なかったのだ。
この数でナノマシンの制御している場所をさがすとなると、だいぶ日にちがかかるだろう。
この遺跡にいる機械人形もナノマシンのせいで不死身化しているとの報告があった。
そうなると探索は今までの何倍も時間を必要とするのは明らか。
「それでアッシュ。わたくしたちはどうすればよろしくて?」
「マリアとスセリは残ってくれ。俺とプリシラは他の冒険者といっしょに遺跡を探索する」
マリアとスセリには冒険者たちの指揮を頼んだ。
俺とプリシラが探索する理由は、機械人形と出会ったときに自力で対処できる力を持っているから。
スセリも自力で機械人形を無力化できるだろうが、彼女は頭も回るから指揮に回した。
なにより、えらそうな態度をとっているスセリは司令塔にうってつけだ。
「それでは皆の者、探索をはじめるのじゃ」
スセリの指示で冒険者たちは遺跡の探索に乗り出した。
俺とプリシラも彼らに混じって遺跡の奥へと進んだ。
「アッシュさま。ナノマシンからは魔力を感じるのですか? わたしには魔法の才能がないのでわからないのです」
「ナノマシンからは魔力は感じないな。だから数にものをいわせて総当りで探すしかない」
それでも範囲をこれだけ絞り込めた。
この遺跡は幾度も冒険者が足を踏み入れており、地図も出来上がっている。
根気よく探せばいつかはみつかるはず。
「……どうした? プリシラ」
「え?」
俺に尋ねられてきょとんとするプリシラ。
「なんだかうれしそうな顔をしてるが」
「えっ!? わたし、そんな顔していましたか!?」
驚いたようすで顔をまさぐるプリシラ。
さっきからプリシラはずっとニコニコしていた。
不死身の機械人形が徘徊する遺跡を歩くときの表情ではないのは確かだ。
「も、もしかすると……」
プリシラは股のあたりで手をもじもじさせながら上目遣いで言う。
「アッシュさまと二人きりになれたのがうれしかったからかもしれません」
恥じらいの表情。
「そういえば最近、あまり二人きりにはならないもんな」
「不謹慎ですが、アッシュさまを独占できてうれしいですっ」
これが王都の繁華街でのデートではないのが申し訳ない。
今度また彼女と二人きりでデートしよう。
えこひいきはいけないが、プリシラは俺がランフォード家を追放されたときについてきてくれた唯一のメイド。
あの家で働いていれば衣食住は保障されていたにもかかわらず、だ。
俺は彼女の献身に報いなくてはならない。




