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80-1

「ワシのアッシュコレクションを見たい奴はおるか? アッシュの普段お目にかかれぬ『あーんな顔』や『こーんな顔』を見られるのじゃ」

「ぜひ拝見させてくださいましっ」

「アッシュさまコレクション……! 見たいですっ!」

「僕にも見せてください」

「や、やめてくれ……」


 わらわらとスセリに寄っていくプリシラたち。

 とにかく、端末に写真機能があるのはわかった。

 そろそろ花火が打ち上がる時刻だ。


「俺のコレクションを見てる場合じゃないぞ。そろそろ花火が打ち上がる」

「ど、どきどきしてきました……」


 スセリが端末を持ったまま俺たちから少し離れる。


「花火が打ち上がった瞬間に写真を撮ってやるのじゃ」

「あ、それいいですわね」

「でも、それだとスセリさまは写真に写らないのでは?」

「ワシのことは気にせず、若い者たちで写るがよい」


 スセリの前に一列に並ぶ。

 スセリが端末を構える。


 ユリエルを中央に。

 その左右にプリシラとベオウルフ。

 両端に俺とマリア。


「カメラに収まらん。ほれほれ、もっとくっつくのじゃ」


 さらに密着する。


「笑顔じゃぞ。『はい、チーズ』で合図するからの」

「その『はい、チーズ』とはなんですか?」

「ワシにも意味はわからんが、旧人類はこの合図で写真を撮っておったのじゃ」

「変わってるんだな。人間って」


 もう、いつ花火が打ち上がってもおかしくない。


「わ、わたくし、お化粧を直してもよろしいかしら」

「おいおい。そんな時間ないぞ」


 ――と、そのときだった。

 世界の闇が瞬時にして払拭され、まぶしくなる。

 時間差で大きな爆発音が空に響く。


 俺たちは一斉に悲鳴を上げた。

 そして全員、背後を振り返った。


 赤、緑、青……。

 いろんな色の火の粒がまじりあって、空に大輪の花を咲かせていた。


 次々と花火が打ち上がる。

 どーんという音を鳴らしながら火の花が咲いては散っていく。

 夜の景色は色鮮やかに染め上げられていた。


 幻想的な光景。

 今だけ別世界にいるかのような気分だ。


 ユリエルとプリシラとベオウルフは空に咲く花火に見入っていた。

 マリアが俺に寄り添う。


「きれいですわね」

「ああ」


 俺たちはしばしの間、言葉数少なく花火を堪能した。

 やがて花火は終わった。


「きれいだったねー」

「あれってどういう原理なんだろう。アッシュさんはご存知ですか?」

「魔法じゃないのか? 前にフーガさんも魔法で花火を上げてたし」


 ユリエルたち仲良し三人組はわいわいと語り合っている。

 それはともかく、写真は撮れたのだろうか。

 俺とマリアは数歩離れたところにいたスセリのところへ行く。


「写真、見せてくれよ」

「のじゃじゃじゃ……」

「どうした?」


 スセリは渋面を浮かべている。

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