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6-6

「さーて、作るわよー」


 ノノさんはニンジンやらカボチャやら野菜を釜に放り込んでいく。

 そしてさらに小麦粉も。

 それからかき混ぜ棒でぐるぐると釜の中をかき混ぜる。


「来たれ!」


 そう唱えると、ソファの前のテーブルにパンとスープが出現した。

 出来立てで湯気が立ち上っている。

 ノノさんがスープをひとさじ、口に入れる。


「うん。ばっちりね」


 そしてソファに座ると、俺たちと手招きした。


「どうぞ召し上がれー」

「すごいですね、スセリさま。錬金術って」

「素材を消費する分、こういうことも自在にできるのじゃ」

「俺は宿に行って部屋を予約してくるよ。みんなは先に食べててくれ」

「あっ、それならわたしが行きます」

「これくらい俺がやっとくよ」

「で、ですが、メイドとして――」


 ぐううう……。

 誰かの腹が切なげに鳴いた。

 プリシラがはっとなって自分の腹を押さえる。

 ニヤニヤするスセリ。

 ニコニコするノノさん。

 プリシラは顔を赤くして、上目遣いで俺を見た。


「そ、それでは先にいただきます……」


 それから宿を二人分予約して、俺たちはノノさんの家で夕食を食べた。

 錬金術で生み出した野菜のスープとパンは『普通』においしかった。まずくもないし、かといって絶品というわけでもない。一般家庭で出されるような何の変哲もない料理だった。


「錬金術って、召喚術と似ていますね」


 プリシラがそう言う。


「似ているが別ものじゃ。錬金術は素材を組み合わせてモノを生み出すのに対し、召喚術は別の場所にあるモノを呼び出す術なのじゃ」

「私の家のカギも?」

「どっかにおぬしが落としたのを、アッシュが召喚術で呼び出したのじゃ」


 ということは『金属召喚』で呼び出した鍋やらフライパンやらも、どこかの家庭から勝手に持ってきてしまっていたのか……。

 いや、それよりも……。

 スセリと魔書『オーレオール』が眠っていた封印されし地下室のカギもどこかから召喚したということなのか。

 カギは一体どこにあったのだろうか。

 そのことをスセリに尋ねると、彼女はこう答えた。


「カギは『オーレオール』と共にワシが持っておったのじゃ」

「えっ! どういうことだ?」

「どういうこともなにも、今言ったままの意味なのじゃ」


 俺の質問に短く答えたスセリは、視線を俺からスープの皿に戻した。

 これ以上の答えは得られないと分かった俺は、もやもやを残ししつつも食事を続けたのであった。


 スープを飲み終え、皿にわずかに残った部分をパンで拭って食べる。

 俺たちは正真正銘、ノノさんが錬成した料理を平らげたのだった。


「ごちそうさまでした」

「おいしかったですっ」


 食器を洗い終え、散らかり放題の部屋もついでに多少片づけると、宿屋に行くためノノさんの家を出た。

 外はすっかり夜になっていた。

 家屋の窓からこぼれる明かりが点々と暗闇に灯っている。

 黒い空には宝石みたいに星がちりばめられていて、黄色い月が飾られていた。


「村を出る前に私の家に寄ってねー。お見送りしたいからー」


 ノノさんは俺たちに手を振っていた。

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