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56-3

 後日、オストヴィント邸探索の依頼を冒険者ギルドで受け、俺とプリシラとマリア、そしてスセリの四人で旧オストヴィント領へと訪れた。


「大きなお屋敷ですね」


 俺たちは目の前の屋敷を見上げている。

 さすが元大貴族の邸宅だけあって、かなり大きい。

 この規模では、たとえ迷宮化していなくても探索には一苦労するだろう。


 今から俺たちはこの中に足を踏み入れ、迷宮の先にあるものを調査する。

 行方知れずとなったオストヴィントはここになにを残したのだろう。

 自分の屋敷を魔法で迷宮化してまで隠したいものとは……。


「いざ、探索開始なのじゃっ」

「おーっ、ですっ」

「おーっ、ですわっ」

「ああ、行くか」


 門の鉄扉に手をかけたところで振り向くと、彼女たち三人が俺をじっと見ていた。

 な、なんで俺を見つめてるんだ? 三人とも。


「アッシュ。おぬしも『おーっ』じゃぞ」

「俺も言うのか!?」

「アッシュ」

「アッシュさま」


 ……しかたない。

 しぶしぶこぶしを振り上げる。


「……お、おーっ」


 これ、必要なのか……?

 彼女たち三人は満足げにうなずいていた。


 そうしてギルドから借りたカギで門を開けて屋敷の敷地内に入り、玄関へと向かった。

 玄関の大きな扉を開けて中に入る。

 すると、普通ならそこにあるはずのロビーは無く、一本の狭い通路になっていた。


「さっそく迷路ですわね」

「冒険者ギルドの情報では、魔物も出るそうです」

「気をつけて進むのじゃぞ。アッシュ、おぬしが先頭なのじゃ」


 スセリに指示され、俺が先頭に立つ格好で一列になり、通路を進んだ。

 少し進むとさっそく分かれ道に出くわした。

 戻るときに迷わないよう、チョークで壁に目印をつけてからとりあえず右側を選んだ。


 そしてその先を歩いたところでまた分かれ道になった。

 再び右を選んで進むと、チョークで目印を付けた壁を発見した。

 ぐるっと回って戻ってきてしまった。


 今度は選ばなかった方の分かれ道を選ぶ。

 それから何度も分かれ道があり、目印をつけながら進むが、もと来た道に戻ってしまう事態が幾度もあった。


「やはり地図は役に立たないですわね……」


 冒険者ギルドから借りてきた地図を見ながらマリアが言った。

 ギルドの情報によるとどうやらこの屋敷の迷宮、入るたびに構造が変化するらしい。なので、以前に調査した者が描いた地図が役に立たなくなるのだ。念のために地図を借りてきたがやはり、構造が変わっていて使い物にならなくなっていた。


 俺たちは落胆する。


「はううう……。これではぜんぜん先へ進めませんね」

「迷宮だから迷うのは当然なのじゃ。根気よく続けるのじゃ」

「スセリには『根気』があるのか?」

「あるわけなかろう。のじゃじゃじゃじゃっ」

「呆れましたわ」

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