表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

387/842

56-1

「いんや。おぬしの年齢は知らんが、ワシのほうが圧倒的に年上なのは間違いないのじゃ」

「スセリって歳はいくつー? 私は15だけどー」

「100から先は数えておらんのじゃ」


 フレデリカは「は?」と言いたげな面持ちになった。


「ワシは不老の身での。姿は子供でも実際の年齢は人間の寿命をはるかに超えておるのじゃ」

「……田舎じゃそういうごっこ遊びが流行ってるんですかー? アッシュさーん」

「アッシュ。おぬしからも説明するのじゃ」


 俺はどう説明すればいいのかわからず苦笑いを浮かべた。

 スセリの言っていることは間違いないけれど、それを説明して納得してもらえるかどうか……。


「まあ、スセリは俺たちより年上だな」

「はぁ、そうなんですかー。でも、私はスセリにタメ口使うんでよろしくー」

「なっ、なんでじゃ!?」


 都会の女の子は強い。スセリを負かすとは……。


「ううむ。やはりこの姿は幼すぎたかの。義務や責任とは無縁な子供のほうが楽に生きていけるかと思ったのじゃが……」


 スセリはなにやらぶつくさ言っていた。


「そういえばー、アッシュさんとスセリってどういう関係なんですかー? なにげに気になってたんですよねー」


 フレデリカにそう問われる。

 答えようとしたところで俺は言葉に詰まった。

 そういえば、俺とスセリはどういう関係なんだろう。


「家族……っていうのか?」

「兄妹だったんですかー?」

「ワシとアッシュは夫婦の関係なのじゃ」

「はいはい。そういうのいいからー」


 スセリの冗談は全く相手にされなかった。


「アッシュさんはマリアさんと婚約してるって知ってるしー」


 ちょっと待て!?

 まさかマリアが俺のいないところで吹き込んだのか。


「そんでもってー、プリシラとも将来を誓った仲なんですよねー」


 待て待て!


「最初は驚きましたけどー、貴族って奥さんが二人も三人もいるのは普通なんですよねー」

「あら、おかえり。フレデリカ」


 フレデリカの母親がやってきた。


「ただいまー、ママ」

「学校から帰ってきたなら仕事を手伝いなさい」

「えー」

「ほら、早くなさい」

「はーい」


 フレデリカは不満げな顔をしながら俺たちの前から去っていった。

 ロビーに残された俺とスセリ。

 俺も自分の部屋に戻ろうとしたとき、服の袖を引っぱられた。


「アッシュ。おぬし、ワシを家族だと思ってくれておったのか」


 スセリが恥じらいを見せたしおらしい笑みを浮かべていた。


「うれしいことを言ってくれるのう」


 俺は内心驚いていた。

 まさかスセリがこれくらいのことでうれしがるだなんて。


 スセリが俺の腕に自分の腕をまわす。


「家族とは具体的にどういう意味なのじゃ? 姉か? 妹か? それとも妻か?」

「えっと……」

「ワシはどれでもいいのじゃ。家族なら」


 そのときだけは彼女が外見相応の少女に見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ