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55-7

 ある日のこと。

 冒険者ギルドに仕事をもらいにいこうと宿を出たところに、ちょうどフレデリカがいた。

 彼女のほかに、友達らしき女の子が二人。

 三人とも学校の制服を着ている。


「あっ、アッシュさんー」

「おかえり、フレデリカ」


 という何気なあいさつをしたら、友達らしき女の子二人が黄色い声を上げた。


「『おかえり、フレデリカ』だって!」

「ちょっとフレデリカ。このかっこいい人誰なのよ」

「えー、聞きたいー?」


 友達相手にもったいぶるフレデリカ。


「実は私の恋人でーす」

「いや、違うから」


 言うと思ったので即座に否定した。

 しかし、彼女たちには聞こえていないのか、フレデリカの友達は再び「きゃーっ」とはしゃぎ声を出した。


「っていうのはウソウソ。ウチのお客さんだよー」

「なーんだ」

「でも、お客さんにしてはフレデリカになれなれしくない?」

「まー、お客さん以上、恋人未満ってところだしねー」


 それからフレデリカの友達二人は俺のほうに寄ってきて、質問攻めしてきた。どこの学校に通っているのやら、歳はいくつやら、恋人はいるのかやら。

 彼女たちの勢いに圧倒された俺は苦笑いしつつ、適当に答えた。

 都会の女の子って積極的だ……。


「立ち話もなんだからさー、カフェにいこうよー。もちろんアッシュさんも一緒に」


 それから俺はフレデリカとその友達二人とカフェに行き、おしゃべりに付き合ったのだった。



「アッシュさん、紅茶とケーキごちそうさまー」


 友達二人と別れ、俺とフレデリカは二人で家路についていた。

 横に並び、雑踏を歩く。


「他の人から見るとー、私たちぜったい恋人同士ですよねー。アッシュさーん、プリシラとスセリとマリアに怒られますよー」

「なら、カフェでお茶をおごるのはこれっきりだな」

「あっ、じゃあ今のはナシでー」


 他愛のない雑談をしながら宿『ブーゲンビリア』に帰ってきた。


「おかえり、なのじゃ」


 ロビーの窓際に設けられているソファーにスセリが座っていた。

 ゲームで遊んでいたのだろう。端末を持っている。


「スセリー。またゲームで遊ばせてよー」

「よいぞ」

「けっこうハマるよねー」

「なんせ、あまたの古代人を熱中させ、廃人にさせた代物じゃからの」

「アッシュさんはゲームしないんですかー?」

「俺には合わなかったよ」

「こんなに面白いのにですかー? 私ー、一生ゲームで遊びたいくらいですよー」


 と、そこで俺はスセリの視線に気づいた。

 俺とフレデリカを交互に見ている。


「ときにフレデリカよ」

「なーにー? スセリー」

「アッシュには敬語なのに、なにゆえワシには敬語を使わんのじゃ」

「へ?」


 ぽかんと口を開けるフレデリカ。

 それから、当然だと言いたげな口調でこう返す。


「だってスセリって私より年下じゃーん。違うのー?」

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