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そういうわけで、朝食を食べおわったあと、さっそくプリシラを俺の部屋に招いた。
彼女に端末を渡す。
俺の指示に従ってプリシラは端末を操作し、セヴリーヌに通話を発信した。
プルルル……と発信音が鳴り続けている。
ドキドキした表情で待っているプリシラ。
やがて発信音が途切れ、通話が開始した。
――と思いきや、相手の顔が表示されるはずの画面が真っ黒だ。
しかも、通話に出たのはセヴリーヌではなく、思いがけぬ相手だった。
「もしもし、ウルカロスでございます」
「ウルカロスさま!?」
セヴリーヌに従うゴーレムのウルカロスだった。
「ど、どうしてウルカロスが通話に……」
「セヴリーヌさまが通話に出られないとき、自動でわたくしとの通話になるようにしてあるのです。いわゆる留守番でございます」
「ウルカロスさまも端末を持っていらっしゃるのですか?」
「いいえ。わたくしの機能でございます」
彼いわく、セヴリーヌが古代人の遺跡から拾ってきた機械を修理し、ウルカロスに装着したらしい。
「セヴリーヌさまは通話には出られないのですか?」
「ただいま入浴中でございます」
ちゃんと風呂には入っているんだな。
「セヴリーヌさまとお話しできないのは残念です」
「申し訳ありません。また時間をあらためておかけください」
「わかりました。ウルカロスさまもお元気そうでなによりです」
「ゴーレムのわたくしを気づかってくれるとは、おやさしいのですね。プリシラさまは」
ウルカロスとの通話が切れた。
セヴリーヌ、朝に風呂に入ってるということは、もしや昼夜逆転の生活を送っているのだろうか……。少し心配になる。
「アッシュさーん。いますー?」
扉の向こうから声が聞こえてきた。
フレデリカの声だ。
「あっ、プリシラもいたんだ」
扉を開けてフレデリカを中に招いた。
「なにか用か? フレデリカ」
「用が無いと会っちゃいけないんですかー」
ふくれっ面になるフレデリカ。
「い、いや、そういう意味じゃ――」
「あははっ。焦ってる焦ってるー」
戸惑う俺を見たフレデリカがぷっと吹き出した。
からかわれてしまった……。
彼女にはスセリとはまた違って意味で調子を狂わされる。
「まあ、用事はあるんですけどねー」
フレデリカは手に長方形の小箱を持っていた。
宝石箱だろう。茶色の箱に金色の美しい意匠が施されている。
この小箱が用事に関係あるようだ。
「プリシラから聞いたんですけどー、アッシュさんってー、召喚術が使えるんですよねー」
「金属しか呼び出せないけどな」
「知ってますよー。その召喚術でー、この宝石箱のカギを召喚してほしいんですー」




