54-7
「おはよう、なのじゃ」
目が覚めると、となりでスセリが微笑んでいた。
「おはよう」
俺はスセリにあいさつを返し、ベッドから起きる。
そして窓のカーテンを開けた。
まぶしい、新鮮な朝陽が降り注ぐ。
気持ちがいい。
「なんじゃ、その反応は。もっと慌てふためけ、なのじゃ」
不満そうなスセリ。
スセリのそういうイタズラには慣れっこだったので、俺はあえてそっけない反応をしたのだった。
「かわいげのない奴に育ったのう」
「スセリに育てられた覚えはないがな」
「なにを言っておるのじゃ。おぬしにはいろいろと教えたじゃろ。いろいろ、と」
俺の背中にしなだれかかってくる。
それも完全に無視した。
相手にされていないのがわかると、スセリは「つまらんのじゃ」と俺から離れた。
「そういえばスセリ。昨夜、夢を見た」
「精霊竜の夢か?」
「ああ」
スセリの表情が真剣になる。
「あやつはなんて言っておった?」
「魔剣アイオーンを破壊しろ、って」
「ふむ」
あごに手を添えて考え込むスセリ。
「やはりあやつはアイオーンを危険視しておるか」
「スセリは……反対みたいだな」
「破壊など愚の愚なのじゃ」
スセリとは逆に、俺は精霊竜の意見に賛成だった。
あんな危険な代物、壊せるのなら壊すべきだ。現に今、悪しき者たちの手に渡ってしまっている。たぶん、キルステンさんや王国騎士団も同意見だ。
……とはいえ、俺が本当にアイオーンを壊せるのかどうかはわからないが。
「詳しい話は朝食を食べながら――」
と、そのときだった――突如、部屋にベルの音が響き渡ったのは。
鼓膜を刺激するやかましい甲高い音が鳴り響く。
俺もスセリも耳を押さえる。
なんなんだ、いきなり。
「まさか『端末』が鳴っておるのか!」
スセリがポケットから長方形の物体を取り出す。
古代人の遺物『端末』だ。
やかましいベルの音は端末が鳴らしていた。
端末の画面をのぞき込む。
一番面積の広い、ガラスの張られた部分『画面』には古代の文字でなにか書かれている。
スセリが画面を指でなぞると、ベルは鳴りやんだ。
――そして、
「セ、セヴリーヌ!?」
画面に不老の少女セヴリーヌの上半身が映し出された。
桃色の髪の幼い少女……。間違いなくセヴリーヌだ。
「アッシュ!」
しかもセヴリーヌが声を発した。
俺もスセリも驚きのあまり硬直していた。
「おい、なんか言え」
「……ど、どうしてセヴリーヌが画面に映ってるんだ?」
「セヴリーヌの奴、自分の端末からワシの端末に『通話』してきたのじゃ」
そういえば前に言っていたな。端末は端末同士で会話ができるって。
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