表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

326/842

47-3

 入り口のドアをノックする。

 しばらく間をおいた後、ギィと軋みながらわずかにドアが開かれる。

 その隙間から幼い女の子の頭がおそるおそるといったようすで現れる。


「アッシュおにいちゃん!」


 来訪者が俺だとわかると、女の子はドアを思い切り開いた。

 そして飛び出てくる二人の女の子。

 二人とも、ひとケタの年齢のあどけない少女だ。


「アッシュおにいちゃんっ」

「こんにちはーっ。わーいっ」


 二人の女の子が子犬みたいにじゃれついてくる。

 俺は苦笑しながら二人の頭をなでた。


「どっちがネネちゃん?」

「どっちも違いますよ。この子たちはネネの妹です」


 ネネの妹二人がノノさんの存在に気づく。


「おねえちゃん、だーれ?」

「お姉ちゃんはノノっていうの。はい、お近づきのしるし」


 ノノさんはネネの妹たちにキャンディをあげた。

 妹二人は警戒を解き、満面の笑みになる。


「ありがとーっ」

「ノノおねえちゃんやさしいっ」


 と、そのときだった。

 背後に人の気配を感じたのは。


「ん? アッシュ、来てたのか。そっちの人は誰だ?」


 赤い髪の勝気な冒険者の少女。

 ネネだった。


「ネネ、紹介する。以前話した錬金術師のノノさんだ」

「ノノでーす。よろしくね、ネネちゃん」


 にっこり笑顔のノノさん。

 ネネのほうは頭のてっぺんからつま先まで、じっくりとノノさんを観察している。


「アタシはネネだ。なんだ、ぜんぜんアタシと似てないじゃないか」

「そうかしら。私はネネちゃんに親近感がわいちゃったわ。えいっ」

「うわっ」


 親愛のあかしのつもりなのだろうか。ノノさんはネネにいきなり抱き着いた。


「ちょっ、いきなりなにするんだ!」

「ふふっ。かわいい」


 抱きしめるノノさん。

 困惑しながら抵抗するネネ。


「おい、アッシュ! この人どうにかしろっ」

「こういう人なんだよ」


 それから俺とノノさんはネネの家に招かれた。

 ネネが妹二人をにらみつける。

 すくみ上がる妹たち。


「二人とも、なに食べてるんだ?」

「え、えっと……」

「ノノおねえちゃんにキャンディもらったの……」


 ネネの鋭い視線がノノさんのほうに向けられる。


「施しのつもりか」

「えっ? どういう意味?」

「……なんでもない」


 ネネは貧困層であるのを気遣われるのを嫌っている。

 とりわけ、他者からの哀れみに対して敏感で、俺が少しでもそういう気持ちになるとすぐに察して機嫌を悪くするのだ。


 ノノさんはきょとんと首をかしげている。

 彼女にそういう感情がないのがわかると、ネネの面持ちは穏やかになった。


「ありがとう。キャンディくれて」

「ネネちゃんも食べる?」

「いや、いい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ