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腹ペコ光線だなんて間抜けな攻撃で負けるのはごめんだ。
調子に乗っているスセリをこらしめてやらないと。
スセリロボをじっと見つめ、弱点をさぐる。
スセリの魔法が施されているためか、スセリロボの装甲は驚くほど固く、プリシラのロッドすら通用しない。そして魔書『オーレオール』の力を借りた俺の魔法も効き目がなかった。
攻めあぐねる俺とプリシラ。
スセリロボは容赦なく腹ペコ光線を撃ってくる。
攻撃そのものは見切りやすいが、回避しつつ打開策を考えなくてはならない。
弱点。
どこかに必ず弱点があるはずだ。
「わ、わたくしも戦いますわ……」
マリアが光の剣を支えにして立ち上がろうとする。
しかし、すぐに膝を折ってへたり込んでしまった。
「マリアさま。むちゃはしないでください」
「腹ペコで倒れるなんて、屈辱ですわ……」
膝を折って……。
膝……。
そうか!
「来たれ!」
俺は召喚魔法を唱え、剣を召喚した。
頭の中で思い描いたとおり、細身の剣だ。
――アッシュ。そんなへなちょこな剣しか召喚できんのか?
「へなちょこ? いいや、これは俺の切り札だ」
スセリロボが俺に向けて腹ペコ光線を発射する。
それをかいくぐり、一気に間合いを詰める。
スセリロボと肉薄した俺は、ヤツの脚の関節部分に細身の剣を力いっぱい突き立てた。
装甲と装甲の隙間に刃が滑り込む。
バチンッ。
確かな手ごたえを感じたのと同時に、スセリロボの膝から火花が散った。
片足の関節を破壊されたスセリロボは、がくんと態勢を崩す。
そして重い胴体を支えきれなくなり、ついに倒れた。
スセリロボは周りに転がっているガラクタの仲間入りとなったのだった。
「アッシュさまがスセリさまロボさんをやっつけましたっ」
――ほう、よく弱点を見つけたのう。
「くやしかったら『くやしい』って言ってもいいんだぞ」
――のじゃじゃじゃじゃっ。アッシュも言うようになったのう!
これでじゃまものは排除した。
俺とプリシラとマリアは鉄くずと化したスセリロボをしり目に先へと進んだ。
「マリアさま。もう平気ですか?」
「クラリッサさんのジャムを塗ったビスケットを食べて元気いっぱいになりましたわ」
古代人は空の上まで行くつもりだったのだろうか。
天高くそびえる塔を俺たちは登り、ついに最上階へと到達した。
「待っておったのじゃ」
一面ガラス張りの広い部屋。
その中央にスセリはいた。
「これは……」
「お花畑ですっ」
ガラス張りの部屋は、一面に草花が生い茂っていた。
赤、黄、青……。色とりどりの花が咲いている。
ガラスの向こうは澄み渡る青空。
楽園というものがあるのなら、こういう光景なのかもしれない。




