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――別に降参してもよいのじゃ。ただ、ワシのつくった最高傑作『オーレオール』の継承者とその仲間がこの程度でねを上げるとなると、ワシもおぬしらを見限らんとならんのう。
「どうしましょう、アッシュさま……」
「降参するのはくやしいですわ」
スセリに見限られたって俺は別にどうだって……。
どうだって……。
……よくない。
こんな茶番、さっさと終わらせたいところであるにもかかわらず、スセリへの対抗心が心の中で煮えたぎっていた。
スセリに認められたいからから。
『出来損ない』と見限られてきた過去がそうさせるのか。
わからないが、ここで諦めたくはなかった。
「プリシラ、マリア。俺たちでスセリをぎゃふんと言わせてやろう」
「アッシュさま……」
「そうですわっ。いつも調子に乗ってらっしゃるスセリさまをこらしめてやりますわよ」
――のじゃじゃじゃっ。その意気じゃ。そうでなくてはのう。
スセリへの対抗心がそうさせたのか、俺はふいに謎かけの答えが閃いた。
スセリロボの前に立つ。
「答えは出ましたか」
「ああ。答えは『心臓』だろ」
沈黙するスセリロボ。
俺とプリシラとマリアも黙って待つ。
短い沈黙の後、スセリロボがこう言った。
「正解です」
プリシラとマリアが「やりましたーっ」「やりましたわっ」と歓喜の声を上げて飛び跳ねた。
「すごいです、アッシュさま」
「よくわかりましたわね。でも、どうして『心臓』が答えなんですの?」
「それはだな――」
生ける者の内とはすなわち身体の中。
赤き運河とは血液。
心臓は血液を循環させる大事な部分。
そして心臓は身体が眠っていても働き続ける。
俺が説明すると、二人とも「なるほどー」としきりにうなずいていた。
「心臓って血を身体に流れさせる役目があるんですね。わたし、初めて知りました。アッシュさまはとても物知りですね」
「これくらいどうってことないさ」
「どうってことありますよ。さすがアッシュさまですっ」
「ここぞというときに頼りになりますわね。アッシュは」
女の子二人にちやほやされるのも悪くないな……。
照れくさくなった俺は「ははは……」とあいまいに笑いながら頭の後ろをかいていた。
とにかく、これでスセリの挑戦を乗り越えられた。
「さあ、スセリロボ。そこを通してくれ」
……が、しかし、スセリロボは依然として俺たちの前に立ちはだかっていた。
首をかしげる俺たち。
「ここを通るにはもう一つ、条件があります」
「えっ!?」
謎かけを答えただけでは通れないのか!?
「ここを通りたければ――私を倒してください!」
スセリロボがこぶしを振り上げた。
背中の筒から白い蒸気が勢いよく噴出する。
結局、実力行使か!
俺たちは各々の武器を手にした。
――ワシが改造を施したスセリロボは手ごわいぞ。おぬしらに勝てるかの?




