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――楽しそうじゃのう。ワシを差し置いてのお茶会は。
「えっ!?」
突如、スセリの声が聞こえてきた。
「スセリさまですわ!」
マリアが指さす先にスセリがいた。
自分で脱出できたのか。
……かと思いきや、よく見るとスセリの姿は幽霊みたいに半透明だった。
「ス、スセリさま……。やはりあの崩落で命を落としてしまったのですね……」
「なんだ。この世に未練があるのか」
「安らかに眠ってくださいまし」
――死んでおらんわっ!
まあ、それはわかっていた。
セヴリーヌの家でボードゲームで遊んだときと同じく、魔法を使って自分の姿を別の場所から投影しているのだろう。
とりあえず、無事な姿を見られてよかったといったところか。
「スセリ。今どこにいるんだ?」
――おぬしらより上の階なのじゃ。
「それは知ってる。崩落の場所から移動したのか?」
――うむ。上の階から興味のする魔力を感じての、今は最上階におるのじゃ。
「さ、最上階って……」
「スセリさまってば……」
あとどれくらい登ればいいのか、途方に暮れる。
プリシラは目をまんまるにしており、マリアは呆れてため息をついていた。
――がんばって助けにくるのじゃな。のじゃじゃじゃじゃっ。
「『のじゃじゃじゃじゃっ』じゃない。自分で降りてこい」
――いんや、ワシは自力では降りんぞ。おぬしらがここに来るまでの。
なんでそうなる……。
「助けてもらう態度じゃなさそうだから、このまま帰ってもいいんだぞ」
――まあ、待つのじゃ。最上階にはおぬしらにとっても面白いものがあるのじゃ。ここに来るまでの価値はあると断言するのじゃ。
スセリがそう言うのだから、とてもくだらないものなのだろう。
プリシラは困った表情をしており、マリアは疑うような視線を半透明のスセリに送っていた。
「どうしましょう、アッシュさま」
「このまま帰りますの?」
「それはさすがにスセリがかわいそうだ。しかたないから最上階まで登ろう」
――せいぜいがんばるのじゃぞ。のーじゃじゃじゃじゃっ。
高笑いをするスセリの姿が消えた。
まったく、本当に俺のご先祖さまは迷惑をかけてくれる。
俺とプリシラとマリアはスセリの挑戦を受け、最上階を目指して塔を登りだした。
「ここです」
スセリとプリシラが離れ離れになった崩落の現場に到着した。
先へ進む道は瓦礫の山でふさがれている。
三人で手分けして迂回路をさがすも、見つからない。
「魔法でふっとばすしかありませんわね」
マリアが瓦礫の山に手をかざす。
「ちょっと待て」
俺はそれを制した。




