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44-7

 採集は順調。

 カバンの中にはどんどんキノコがたまっていく。

 そうやってどんどんキノコを採集していくうちに、俺たちは自然と森の深くまで入り込んでしまっていた。


「ノノさん。こんなもんでいいんじゃないですか?」


 木の枝にリボンを結んで目印をつけているから帰り道を見失いはしないだろうが、それでもあまり森の奥に入るのは危険だ。

 そろそろ引き返すべきだと俺は提案した。


「せっかく来たんだもの。カバンいっぱいになるまで採集するわ」


 ノノさんはまだまだやる気だ。


「また明日、採集すればいいじゃないですか」

「そうですわ、ノノさま。あまり欲張ると痛い目を見ますわよ」

「うーん、そうねー」


 俺とマリアに説得され、渋々ながらもノノさんはケルタスに帰るのを承諾してくれた。

 ――と思いきや。


「あっ!」


 ノノさんが木立の奥を指さした。

 俺とマリアが同時にそちらに振り向く。

 そこには動物か魔物か、見分けがつかない生き物がいた。


「ウサギ……ですの?」


 マリアが首をかしげるのもしかたなかった。

 その生き物は、外見は間違いなくウサギだったが、その大きさはイノシシほどのあった。

 ウサギにしては大きすぎる。

 あまりに巨大で、ウサギであるにもかかわらず愛らしいというよりも不気味だった。


「ジャイアントラビットよ。珍しい魔物なの」


 ノノさんによると、ジャイアントラビットはウサギに似た外見の魔物らしい。

 おとなしい性格で自分から人間を襲うことはないが、危害を加えてくる者には容赦をしないという。

 ならば、敵とみなされる前にここを立ち去ろう。


 だが、ノノさんはジャイアントラビットを倒そうと言ってきた。

 なんでも、あの魔物の前歯は錬金術の貴重な素材になるとのこと。

 毛皮も高く売れるらしい。


「そういうわけで、アッシュくん。ジャイアントラビットをやっつけて。追加報酬は払うわ」

「ダメです。俺たちにはノノさんを守る役目があります」

「危険に突っ込むマネはできませんわ」

「おねがーい! 貴重な素材が手に入るのよー」


 そのとき、ジャイアントラビットが俺たちの存在を察知した。

 ジャイアントラビットはすぐさま背を向け、ぴょんぴょん飛び跳ねながら森の奥へと逃げていく。


「まちなさーいっ」

「ノノさま!?」

「ちょっ、ノノさん!」


 ノノさんは杖にまたがると、低空飛行してジャイアントラビットを追いかけていった。

 その杖、乗り物だったのか!?

 彼女の姿は白い霧の向こうへと消えてしまった。

 突然の出来事に、俺とマリアはあっけにとられていた。


「あの杖、そういう使いかたもできたのか……」

「本当に仕方のない大人ですわね! 追いかけますわよ!」

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