44-5
マリアが想像しているノノさんと、実際のノノさんはかなり違うだろうな……。
「えっ。その依頼を受けるのかい?」
依頼書を渡されたオーギュストさんがそう尋ねてきた。
オーギュストさんが疑問に思うのも無理はない。報酬は少額だし、採集の護衛なんて駆け出しの冒険者が受けるような依頼だ。
依頼主が顔見知りの人だと教えると、オーギュストさんは合点がいってうなずいた。
「あ、あの女性と知り合いなんだね、キミたちは……」
「オーギュストさまもご存じなのですか?」
「依頼を受領したのが僕だったからね。とても美人なんだけど、なんだか危なっかしい、一人にしたらまずい感じの女性だったね」
ああ、間違いなく俺たちの知っているノノさんだ。
それにしてもノノさん、ケルタスにやってきたのか。
さすがに一人じゃないよな……?
「あーっ! アッシュくんたち!」
そのときだった。
ウワサをしていたノノさんがギルドに現れたのは。
赤く長い髪が美しく、肌の露出した少々きわどい衣装を着た美女。
ノノさんが俺たちのもとへと駆け寄ってきて、俺をぎゅーっと抱きしめた。
マリアに負けず劣らず豊満な胸が密着する……。
「会いたかったのよー」
「むっ」
「はわわっ」
「のじゃじゃじゃじゃっ。熱烈なあいさつなのじゃ」
マリアが眉間にしわを寄せる。
プリシラが慌てだす。
スセリは腹を抱えて笑っていた。
「ノノさん。ケルタスに来てたんですね」
「そうよー。アッシュくんたちに会いたくなって、錬金術の素材集めも兼ねて来ちゃったの」
「えっと、護衛は雇いましたよね……?」
「んーん。一人で来たわ。アスカノフちゃんは村を守らなくちゃいけないしね」
む、無謀にもほどがある……。
俺は慎重な手つきでノノさんを引きはがす。
「ケルタスに来るなら、俺たちに手紙をくれればよかったじゃないですか。そうすれば迎えにいったのに」
「そうなのー。迎えにきてー、って手紙を書こうと思ったんだけどー、アッシュくんたち、ケルタスのどこで暮らしてるのかわからなかったからあきらめたのよー」
「冒険者ギルドあてに送ればよかったんですよ」
「なるほどー。確かにそうねー」
「ノノさん!」
俺とノノさんの間にマリアが割り込んでくる。
そしてわざとらしいくらいうやうやしげにおじぎをした。
「ルミエール家のマリアと申します。以後、お見知りおきを」
「マリアちゃんね。私はノノ。よろしくね」
「ちなみにわたくし、アッシュの婚約者ですの」
「ええっ!?」
驚愕するノノさん。
マリアがドヤッと勝ち誇った笑みを浮かべる。
「アッシュくん、私と結婚してくれるんじゃなかったのー?」
「むっ」
「はわわっ」
「のじゃじゃじゃじゃっ」
マリアが眉間にしわを寄せる。
プリシラが慌てだす。
スセリは腹を抱えて笑っていた。




