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41-4

「名門ランフォード家の子息であるアッシュはともかくとして、メイドのプリシラも指名するのは妙ですわね。あて名もプリシラですし」

「えっと、この手紙の送り主のミューさまとは、少々面識があるのです」


 ミューはプリシラに懐いていたからな。

 どちらかというと俺のほうがオマケで、ミューとしてはプリシラに会いたいのだろう。


「よいのではないか? で、いつ招かれるのじゃ?」


 手紙に最後まで目を通す。

 招待される日は――今日!?

 俺が手紙を読み終えたのを見計らったかのように『夏のクジラ亭』に客が訪れた。


「アッシュさま。プリシラさま。お迎えに上がりました」


 見覚えのある老人。

 エルリオーネ家の執事だ。


 あ然とする俺とプリシラ。

 いくらなんでもいきなりすぎるぞ。


「いってらっしゃいな。アッシュ。プリシラ」


 マリアが俺とプリシラの背中を押す。


「ごちそうを食べられるとはうらやましいのじゃ」

「では、馬車までご案内いたします」


 そういうわけで俺とプリシラはエルリオーネ家の食事に招待されることとなったのであった。

 表通りに停めてあった馬車に乗り、ケルタスの街を走る。

 石畳を蹴りながら馬車は疾走し、あっという間に門をくぐって街の外へ出た。


「それにしても、いきなりですね」

「ミューさまがどうしてもプリシラさまにお会いになりたいとおっしゃってまして」


 執事が苦笑する。


「旦那さまもアッシュさまにお会いになりたいそうです」


 エルリオーネ家のことはよく知らないが、貴族としての格は間違いなくランフォード家のほうが高い。彼としては俺を介してランフォード家と親睦を深めたいのだろう。それが貴族というものだ。


「あ、あの、わたし、メイド服のままなのですが」

「ご安心ください。お二人のお召し物はエルリオーネ家で用意しますので」


 郊外をしばらく走って、やがてエルリオーネ家の領地、ギザの地に入った。

 馬車は門の前で停まり、俺たちは馬車を降りた。

 古めかしい屋敷が目の前にある。


「どうぞ、こちらへ」


 執事に案内されるまま、俺たちは屋敷へと歩いていった。


「プリシラー」


 屋敷の中に入るや、小柄でぼんやりとした少女ミューがとてとてと走ってきた。

 プリシラの前にやってくると、彼女の手を取る。


「プリシラー。あそぼ-?」

「はい、遊びましょう」


 にこりと笑うプリシラ。


「お待ちしていましたよ。アッシュさま」


 屋敷の主人が遅れて現れる。

 俺の機嫌をうかがうような、媚びた笑みを浮かべている。


「どうぞ、食事の時間まで自由におくつろぎください。なにもない退屈な場所でございましょうが」

「いえ、どうぞお気遣いなく」

「プリシラー。ミューのお部屋にいくのー」

「あわわっ。ミューさまっ」


 ミューはプリシラの手を引っ張って、屋敷の奥へと行ってしまった。

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