40-3
機械人形の手から射出された刃は魔法障壁にはじかれた。
最後の力を使って攻撃したのだろう。機械人形は崩れ落ち、目の光が消えた。
機械人形を倒した。
俺とプリシラは油断せず、慎重に機械人形のそばへと近寄る。
機械人形が完全に壊れているのを確認すると、俺たちはほっと息をついた。
それから前を見る。
俺とプリシラの前には長方形の機械の扉。
この先になにがあるのか。
機械人形はなにを守っていたのか。
視界の端に、ドキドキした表情のプリシラが映っている。
俺も心臓の鼓動が速くなっているのが自分でもわかる。
「この扉、どうやって開けるのでしょう。ドアノブがありませんね」
プリシラがペタペタと扉を触る。
機械の扉は平らで、手を引っかける場所がない。
横に開くのか押すのか引くのか、見当もつかない。
ピロッ。
「ひゃっ」
プリシラが色の違うタイルに触れたとき、扉から変な音がした。
すると機械の扉は音もなく上にすべって開いた。
あのタイルが扉を開ける仕掛けだったんだな。
そして扉の先へと足を踏み入れる。
扉の先の広い部屋も壁際に無数の機械が設置されていた。
俺とプリシラは、部屋の中央に視線を向けていた。
「剣……ですか?」
部屋の中央には機械の台座。
その台座に一振りの剣が刺さっていた。
その剣は刀身が闇のように黒い。
そして刀身の中心で赤い光が脈打っている。
まるで生きているかのよう。
禍々しい。
漆黒の剣からは邪悪な気配がして、近寄るのをためらわせている。
プリシラもやはりその気配を感じているらしく、しわができるくらい俺の服の裾を握っていた。
「一度、冒険者ギルドに戻って報告するべきかもな」
「そうしたほうがいいと思います」
引き返そうと振り返ったそのとき――扉の前に一人の人間が立っていた。
ローブをまとい、深くかぶったフードで顔の上半分を隠した男。
「……ナイトホーク!?」
クロノス・ガルディアをほだした男、ナイトホークだった。
ナイトホークがどうしてここに!
俺たちの後をつけてきたのか!?
「『アイオーン』を手に入れようと来てみれば、よもや貴様らと会うとはな。これも運命とやらか」
アイオーン……?
この漆黒の剣の名前だろうか。
口ぶりから察するに、ナイトホークの目的はこの剣で、俺たちと会ったのは偶然らしい。
「『オーレオール』は渡しませんっ」
プリシラがロッドを構え、俺の前に出てナイトホークと対峙する。
ナイトホークは微動だにせず、顔の部分で唯一見える口元も動かさない。




