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殺風景なコンクリートの通路を進んだ先に、開けた空間があった。
周囲には、確か『モニター』と呼ばれている四角いガラスと、謎の装置がいくつも設置されている。電気が通っているためか、装置はどれも生きているようすだった。
ここはなにかを研究するための施設だったのだろう。
「プリシラ。気をつけろ」
先へと続く扉の前に機械人形がいた。
人型の機械人形。
直立している機械人形の目には光が宿っていた。
その目が俺たちを捉える。
そして、手の甲から鋭利な刃を出した。
俺たちと敵と認識している。
「アッシュさまはわたしがお守りします」
プリシラがロッドを最大まで伸ばして構えた。
機械人形が腰を低くする。
刹那、すさまじい加速で突進してきた。
瞬時にしてプリシラに肉薄し、刃を真横に振るう。
プリシラはそれをロッドで防御する。
キイイィン!
刃とロッドがぶつかり、甲高い金属音が鳴り響いた。
「ていやーっ!」
プリシラが蹴りをかます。
腹に渾身の蹴りをくらった機械人形は真後ろに突き飛ばされた。
床に背中をしたたかに打ちつけるも、素早い動作で起き上がる。
次の攻撃がくる。
――そうはさせない!
「うがて雷撃!」
俺は電撃魔法を放った。
紫色の雷撃が機械人形を貫く――かと思いきや、機械人形の周囲に丸い光の障壁が発生し、魔法を打ち消した。
「こいつ、魔法が通じない!?」
うろたえている隙に機械人形が再び迫ってきた。
振り下ろした刃をプリシラがロッドで受け止める。
押し合うプリシラと機械人形。
力比べはプリシラが勝ち、機械人形をのけぞらせた。
無防備になったところにロッドの渾身の一撃をかます。
ロッドの先端が肩に直撃し、機械人形の右腕をもぎ取った。
「メイドの一撃ですーっ!」
続けざまにプリシラは腰をひねらせてロッドを真横に振るい、機械人形を真横から叩いた。
吹っ飛ばされた機械人形が壁に激突した。
そして、ぐったりと倒れた。
プリシラが歓喜の声を上げる。
「やりましたっ」
「いや、まだだ!」
壊れた部分からバチバチと火花を散らしながらも、機械人形はよろよろと起き上る。
右腕を失っているせいか、身体が左に傾いている。
左手の甲から刃を出す。
なおも接近戦を仕掛けてくるかと思ったが、機械人形はその場に立ったまま刃を水平にし、切っ先をプリシラに向けた。
「障壁よ!」
俺はとっさにプリシラをかばうように前に出て、防御の魔法を唱えた。
正面に魔法の障壁がせり出す。
それからわずかに遅れ、機械人形の手の甲から刃が射出された。




