38-7
「ミュー。や、やめなさい」
屋敷の主人がミューの肩をやさしくつかんでプリシラから引き離す。
するとミューは悲しそうな顔になる。
「どーしてー?」
「こいつは半獣だからだよ」
「はんじゅーだと、どーしてお友だちになれないのー?」
「そ、それは……」
うろたえる屋敷の主人。
そこに執事の老人がこう提案してくる。
「旦那さま。この半獣にはミューお嬢さまのおもりをさせればよろしいかと」
「俺の大事なミューを半獣なぞにまかせられるわけないだろ!」
怒鳴る屋敷の主人。
「プリシラー。プリシラはなにしにミューのおうちにきたのー?」
「え、えっと、今夜の社交パーティーの料理を作りにきたんです」
「わー。プリシラ、お料理つくれるんだー」
それからミューはこう言った。
「ミュー、プリシラのお料理が食べたーい」
「ミュー!?」
屋敷の主人はすっかり困り果てていた。
思いもよらない展開になってきたな。
もう少し様子を見よう。
「プリシラー。おいしいお料理つくってー?」
「は、はいっ。腕によりをかけてごちそうを作ってみせますっ」
屋敷の主人は今にも怒鳴りそうなのをぐっとこらえており、執事の老人は戦々恐々としていた。
「あ、あのっ。わたし、ランフォード家に雇われていまして、そこでご主人さまたちのお料理を作っていました。ですので、どうか今夜の料理はおまかせください」
「ランフォード家……」
その名を聞いて、屋敷の主人はいくらから冷静になる。
「あの召喚術の名門か……。そういうことは先に言え」
「で、では……」
「ランフォード家のお墨付きとあらばまかせよう。ヘタな料理を出して俺に恥をかかせるなよ」
ランフォード家の名前がここまで通じるとは……。
「ミューもプリシラのお料理食べるー」
「パーティーが始まったら呼んであげるから、それまで自分の部屋で遊んでいなさい」
「はーい」
メイドに付き添われてミューはロビーからいなくなった。
屋敷の主人もプリシラたちに背を向けて去っていった。
「では、プリシラさん。厨房へご案内いたします」
執事とプリシラもロビーを出て厨房へと向かっていった。
俺とスセリだけがその場に残っている。
一時はどうなるかと思ったが、ミューという少女のおかげでなんとかなってよかった。
「それにしても、やっぱり半獣って嫌われてるんだな」
「これでもワシが若かったころに比べればマシなのじゃぞ」
スセリが玄関の扉を開ける。
「さて、一応はどうにかなったし、帰るのじゃ」
「他のコックたちとうまくやれるかな、プリシラ」
「そればかりはプリシラを信じるしかあるまい」
「ところで、スセリ」
「なんじゃ?」
「俺たち、別にこそこそ隠れる必要なんてなかったんじゃないか?」
というか、ランフォード家の人間である俺が直接出ていけばあっさり解決する話だった。
「なかったの。でも、そのほうが面白いじゃろう?」
スセリは「のじゃじゃじゃじゃっ」と笑った。
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