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36-7

 そして再びセヴリーヌとマリアの番がまわってくる。

 次もスセリはイカサマをしてダイスの目を1にするのだろうか。さすがにそこまでロコツな……いや、すでにロコツにもほどがあるイカサマをしているのだが……。


「セヴリーヌさま。次はわたくしにダイスを振らせてくださいまし」


 マリアがダイスを持ち上げ、「ていっ」と放り投げる。

 ダイスが出した目は――5。

 俺はほっと胸をなでおろした。

 ここでまた1が出ようものなら、激怒したセヴリーヌが暴走するのは間違いなかったからな。そうなるともはや仲良くボードゲームをするどころではなくなり、ここは戦場と化していただろう。


 セヴリーヌとマリアは5マス先へと進む。


「マスに文字が書いてありますわね。ふむふむ……。『お互いの良いところを一つ言う。そうすれば10マス進む』」


 10マスとはまた太っ腹だ。

 しかし、この条件はセヴリーヌには難しいかもしれない。

 案の定、彼女は「うーん」と眉間にシワを寄せてうなっていた。


「セヴリーヌさまは、自由奔放なところが良いところですわね」


 マリアがそう言う。


「じゆーほんぽー?」


 難しい言葉だったらしく、セヴリーヌが首をかしげる。


「なににも縛られず生きていらっしゃっていて、とてもうらやましいですわ」


 マリアは貴族ルミエール家の娘。

 貴族の令嬢という、さまざまなしがらみのある彼女にとって、自由気ままに生きるセヴリーヌの姿はまぶしく映ったのだろう。

 しかし、セヴリーヌはいまいち褒められているという実感がないらしく、「ふーん。そうなのか」とどうでもよさそうな返事をしていた。


「さあ、セヴリーヌよ。マリアの良いところを挙げるのじゃ」

「む、むずかしいぞ……」


 さんざん悩んだあげく、セヴリーヌはこう答えた。


「マリアは――胸がでかい」

「が、外見ですの!?」

「他に思いつかなかったから言っただけだ」


 マリアは両腕で胸を隠して恥じらう。

 言うと思った。

 確かにマリアの胸は豊かだ。彼女の魅力の一つであるのは間違いない。


「アッシュもそう思うだろ。マリアの胸、でかくていいよな」


 なぜ俺に振る!?


「えっと……小さいよりかはいいと思う。個人的には」

「ア、アッシュがほめてくださるのなら、悪い気はしませんわね……」

「アッシュさまは胸の大きな女性が好みなのですか!?」


 隣にいるプリシラががく然としていた。

 それから自分の平たい胸を切なげにさすりだした。

 とにもかくにも、お互いの良いところを一つずつ挙げられたので、セヴリーヌとマリアは追加で10マス進めた。


「さてさて、ワシの番が来たのじゃ」

「次もズルしたらアタシの魔法でぶっ飛ばすからな」

「ワシは一度たりともズルはしておらんのじゃ」


 スセリは平然とそう言った。

 そしてダイスを投げる。

 1の目が出る。

 ダイスの目に従って、1マスだけ進むスセリ。


「ほれ。このとおり、ズルはしておらんのじゃ。あー、残念じゃのう。1マスしか進めぬとは」


 あからさますぎる……。

 マリアとプリシラは苦笑いを浮かべていたし、セヴリーヌはますます疑るような目つきになっていた。

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