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33-7

「セヴリーヌ。今日はプリシラに譲ってくれないか?」


 俺はセヴリーヌの頭に手を乗せる。


「プリシラも俺の大事な仲間なんだ」

「アタシより大事なのか」

「同じくらいだ」


 彼女の頭をなでる。

 セヴリーヌはふてくされた顔をしつつも、黙って俺になでられていた。


「今日がまんすれば、明日はもっと楽しくなるぞ」

「そうなのか? ……わかった」


 彼女はしぶしぶながら折れてくれた。

 スセリが「ほう」と感心した声を出す。


「セヴリーヌを説得するとは……。手なずけたのう、アッシュ」

「譲っていただきありがとうございます。セヴリーヌさま」


 ぺこり。

 おじぎするプリシラ。

 セヴリーヌはつーんとそっぽを向いている。


「譲るもなにも、お前が先に約束してたんだろ」

「そうでしたね」

「明日はアタシがアッシュと遊ぶんだからな」

「承知してます」


 一時はどうなることかと焦ったが、平和に解決できてよかった。


「セヴリーヌさま。せっかくですから、今日はわたくしとスセリさまといっしょに遊びませんこと」

「お、お前らとか……」

「海へ行くのじゃ」

「海にはこの前アッシュと行ったぞ」


 セヴリーヌはあまり乗り気ではなさそうだったが「まあ、いいぞ」と返事をした。


「しかたないから遊んでやる」


 これをきっかけにスセリやマリアとも仲良くなってほしい。

 俺はそう密かに期待していた。



 そして俺とプリシラは二人で繁華街にやってきたのだった。

 昼間のケルタスは一日のうち、最もにぎわう時間帯。

 こんなに大勢の人間、一体どこからやってきたのかと思うほど、ごった返している。

 道の中央は常に馬車が行ったり来たり。

 この街は相変わらずとても賑やかで、ひどく騒々しい。


 俺とプリシラは並んで大通りを歩いている。

 横目で彼女の顔を盗み見る。

 にこにことごきげんなようすだ。

 セヴリーヌに気に入られてからというもの、あまり構ってあげられなかったからな。

 今日はプリシラにとことん付き合おう。


「プリシラ。どの店に行くんだ?」

「今日は公園に行きましょう」


 立派な噴水が中央に据えられた公園。

 都会の喧騒に疲れた人々が憩いの時間を過ごしている。

 俺とプリシラはちょうどよい木陰を見つけ、芝生の上に腰を下ろした。


 二人で青空を見上げる。

 白い雲がふわふわと流れていく。

 心が安らぐ。


「退屈じゃないか? プリシラ」

「いいえ。わたしはアッシュさまとこうしていられるだけでしあわせです」


 そう言われてちょっと照れてしまった。

 プリシラは穏やかな笑みをたたえていた。

 それから俺の手に自分の手を重ねてくる。


「こ、こうしてもいいでしょうか……」

「ああ。いいぞ」

「てへへ……」

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