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「とりあえず、ディアの――ガルディア家次期当主クローディアの意見も聞いてみましょう。フーガさん」
「わかりました。そうですね。大事なことですからね」
「ただ、俺個人の意見としては、悪魔アズキエルを倒すべきだと思っています」
封印という手段は、きたる日の先延ばしに過ぎない。
俺たちが今まさに直面しているように。
ここで封印するという選択を選べば、この先ずっと後の世代に責任を押し付けることになる。クロノス・ガルディアがそうしようとしたように、悪意ある人間に封印を解かれる危険だってはらむことになる。
ならば、俺たちでこの問題を解決すべきだ。
俺はそう皆に伝えた。
「アッシュさま! とてもご立派ですっ」
「口だけじゃなければよいのじゃがな」
俺だって冒険者になって幾度も戦いを繰り返してきた。腕に覚えはある。
それに、心強い仲間もいる。
俺たちならきっとアズキエルにも勝てるはず。
後日、俺たちはパスティアのガルディア家へと赴いた。
そしてディアにフーガさんを紹介し、セオソフィーをどうすべきか意見を求めた。俺の意見をあらかじめ伝えて。
「アッシュさんたちがアズキエルを倒していただけるというのなら、ぜひともお願いしたいです」
ディアはそう答えた。
「アッシュさんたちはガルディア家を救ってくださいました。悪魔アズキエルも倒してくださると信じています」
どうやらディアも俺を信頼してくれてるようだ。
「では、決まりましたわね」
「僕たちでアズキエルを討伐しましょう!」
それから三日後、俺たちは悪魔アズキエルを討伐するため、ガルディア家の中庭に集まった。
俺とプリシラ、スセリ、マリア、ディア、フーガさん。
「なんでアタシまで手を貸さなくちゃいけないんだよッ!」
……それと、セヴリーヌ。
彼女は半ば無理やり連れてきた。
スセリ同様、幼い外見をしているが、彼女も長い年月を生きてきた天才的魔術師。力ずくでも手伝ってもらわなくてはならない。
「セヴリーヌ。おぬし、セオソフィーとフィロソフィーの研究をあれほどしたがっていたじゃろう。喜ぶのじゃぞ」
「あのバケモノと戦うんだろ? そんなもんに興味ない。お前らだけで勝手にやれ」
立ち去ろうとするセヴリーヌ。
が、その腕をプリシラに掴まれる。
「ダメですよ、セヴリーヌさま。セヴリーヌさまのお弁当代はディアさまが支払っているんですから。恩返しをしないといけません」
「ぐぬぬ……」
口ごもるセヴリーヌ。
セヴリーヌは『夏のクジラ亭』の弁当を毎日食べている。
クラリッサさんは「あんな小さな子からお金はもらえないわ」と無償で提供しようとしてくれていたが、そんな厚意に甘えるわけにはいかない、とディアがセヴリーヌに代わって弁当代を出しているのだ。




