2-16『強さの定義』
「――んで、これからどうするワケ?」
逃げ出してきた先で、水筒から水を呷ったシャルに問われた。
俺に訊かないでほしいと思う。
現在、俺たちは第十二層まで降りてきていた。適当な場所に結界を張り、そこで休憩を取っている。
いつだったかの失敗が微妙に思い返されるけれど、さすがに二度も続けて妙なトラップに巻き込まれることはないだろう。……ないと思いたい。
一応、普段以上に周囲の索敵、そして罠の察知には気を使ったつもりでいる。結界も物理的な強度や隠密性を犠牲にしてまで、魔術的な干渉に対する耐性へ気を払って構築した。
ルーン文字で言うなら、《防御》ではなく《保護》ということ。
などとたとえては、逆にわかりにくいかもしれない。別にルーンだけで作った結界ではなく、シャルの力も借りているわけだし。
いずれにせよ、結界の構築には最大限の労力を費やした。
これで駄目なら、もう俺が何をやっても駄目だと思っておこう。
「どうする、って訊かれてもなあ……」
俺は煙草を取り出し、少し離れた位置で一服しながら考える。
実は、特に腹案があるというわけでもなかった。
「どうしようね?」
「何それ」
言葉に、シャルはわずかな苦笑を見せた。呆れられるよりはマシだろう。
割にリラックスしているシャルから目を離し、俺は視線を、壁へ背を預けて座るフェオのほうへ向けた。
彼女は何も言わず、ただ難しい顔をして押し黙っている。フェオにとっても、当然ながら今の状況は不測の事態ということだ。両腕で脚を抱えたまま、暗い表情で俯いている。
彼女とて相応に迷宮へ入った経験はあるはずだが、それが絶対の安全を保証するかと言えば違う。
だから不安になるのも無理のないことだとは思うが……果たしてそれだけなのだろうか。
「壁を壊して、戻ることってできないかな?」
何も言わない俺たちに代わり、シャルが一案を提示した。
壁、というのは先ほどのゴーレムが作り出し、逃げ道を塞いだもののことだろう。
だが、生憎それは不可能だ。試そうとさえ思わなかった。
「無理だろうな」
「どうして?」
「あの壁は、たぶん壊せない」
そもそもの話、なぜ内部で魔術師や魔物が暴れても迷宮自体は崩れることがないのか。普通に考えれば、こんな石の壁程度、ちょっと威力のある魔術なら余波だけで破壊してしまいかねないだろう。
その答えは単純で、なぜならどれだけ攻撃しても壊せないほど迷宮の壁は硬いからである。
至極明快。それ以外の理由などなかった。
と、いうのものだ。
迷宮は、それ自体がひとつ結界である。
現代では《喪失魔術》に分類される、遺失した古の魔術結界。現存する魔術程度では、旧い時代の強力な魔術へ干渉することなどほぼ不可能に等しい行為だということ。
だから迷宮は壊れない。内在する魔力だけで劣化を防ぐ。
三人の《魔法使い》でさえ、正面から破壊できるかどうかは怪しいだろう。
もっとも、それは正面以外からならわからないという意味だが。
そして、前提条件として土人形は魔術を使えない。
魔術を行使できるのは基本的に生命体だけだ。だが魔物は生き物ではない。
魔術を使う魔物は、合成獣のような一部の例外を除けば――幻獣、神獣と呼ばれる魔物のみしか存在しない。少なくともそこに土人形は含まれない。
錬金術師などが創り出す《泥の胎児》ならば、あるいは魔術を使えるかもしれないが、土人形が泥の胎児だったとは思えないし、思いたくない。
そもそも完全な泥の胎児の製作は、練金魔術の分野において《完全練金》と呼ばれる技術に属するものだ。
卑金属を貴金属に、すなわち低次元のモノをより高次のモノへと生み変える行為。それは金属以外の物質――生物や、魂といった概念までをも、より完全なモノへと練成し直すという試みである。
それが完全練金だ。
ひとつの生命を創り出さんとする、神の領域に足を踏み入れる業。
魔術の最盛期たる過去の時代においてさえ、《不可能法則》と称されていた夢物語だ。かつて為し得た魔術師が存在しないからこその不可能法則である。
――要するに、単なる机上の空論でしかない。
だが、あのとき通路を塞いだ石壁は、間違いなくあのゴーレムが生み出したものだろう。
ただの土人形に魔術は使えない。ならば何か。
魔術でないのならば――それは能力だ。
ゴーレムが元々の機能として所持している、ただの能力。
あの石壁は、迷宮そのものを壁の形に組み替えて作られたと考えるのが妥当だ。
ならば、たとえ形を変えていようとも、俺たち魔術師にそれを破壊することはできない。
ゴーレムを完全に破壊できれば、壁も勝手に元の迷宮の一部として戻るだろうが、今はそれが難しいという話なのである――。
と、いうようなことを俺はシャルに語って聞かせた。
すると彼女は、なぜか呆れたモノを見るような視線になって言う。
「――あんた、あの場でそんなことにまで気がついてたの?」
「まあ、これでも元冒険者だから」
俺は煙を吐いて軽く答えた。
確かに、こういった迷宮の事情を理屈として知っている人間は結構少ない。学生は迷宮になど興味がないため調べようとしないし、本職の冒険者はそもそも調べる機会がない。経験として学ぶことはあっても、机の前で書物を開いたりはまずしないだろう。
案外、馬鹿にできない情報が調べられたりするのだが。
「元冒険者、ねえ……」
なんだか胡乱げな視線を向けてくるシャルだった。何かを疑われているのだろうか。
そういえば、彼女は俺が元七星旅団だということを知らないのだろうか。
俺が魔法使いの弟子だったことは知っていたのに。むしろ、そちらを知っている人間のほうが遥かに少ないはずなのだけれど。
彼女も彼女で、よくわからない経歴を持っていそうだ。
「――アンタ、冒険者だったの?」
ふと、フェオが小声でそう言った。
一瞬聞き逃しかけた声を、なんとか拾って俺は答える。
「学院に入る前まではな」
「なんで……?」
その問いに、俺は瞬間、押し黙った。フェオの視線に妙な迫力を感じたからだ。
大して語勢が強いわけでも、身を乗り出してきているわけでもない。
ただ――瞳だけはやけに真剣な色を帯びていた。
「学院に入学できるほどお金持ちの家に生まれたなら、わざわざ冒険者になんてなる必要――」
「いや、金なんてぜんぜん持ってなかったから。俺は親なんかいねえぞ」
この世界には、だが。
「は……?」
「てか別に学院生が全員、金持ちの子息ばっかってわけじゃないし」
まあ確かに貴族や名門の子弟が多い事実は否めないが。
それだけなら、俺が入学できるわけもない。
「生きるためには金が必要で、ガキが手っ取り早く稼ぐには冒険者になるくらいしかなかった、ってだけの話だ。単純だろ」
決して露悪趣味でも不幸自慢でもない。そこは勘違いされたくなかった。
――この世界で、それは別に珍しいことではないのだから。
ここは地球とは違うのだ。
いや、ある意味どこの世界にも通じる話ではあるのだろうが。
「学院に入れたのは、まあほとんどコネだな。冒険者時代の伝手だよ」
「――だから、そんなに強いの?」
「は、はあ……? 強いって俺がか?」
何を言ってるんだコイツは、と俺は普通に思った。俺を見て、強いという感想が出てくる意味がわからない。負けないだけで、勝てもしないのが俺という魔術師だ。
これでも経験値はあるつもりだから、上手いと褒められれば調子にも乗るのだけれど。強い、などと言われては正直「コイツ目でも閉じてたのか?」という感想しか浮かばない。
だがフェオの様子に、ふざけたり、からかったりというような感じは見受けられなかった。
「どうして。どうしてそんなに強いの」
「いや、見てただろ。別に大して強くなんざ――」
「だって、わたし、それじゃ馬鹿みたいじゃん」
――どうして。フェオは唇を震わせていた。
強い口調ではない。だが弱々しいわけでもない。
ただ淡々と彼女は疑問を口にする。
「わたしは、すぐには決められなかった。戦うしかないってわかったはずなのに。独りじゃ勝てないって気づいたから――そこから動けなかった。信じられなかった」
「……フェオ、お前――」
「わたしは迷宮の攻略パーティにさえ入れてもらえなかったのに。同い年の学生は、クランから仕事を依頼されてるのに。わたしは――仲間からさえ認めてもらえなかった」
――それが。
フェオが、俺たちに発していた敵意の理由だったのか。
「どうしてわたしは……こんなに弱いんだろう」
彼女は至極大真面目に、どころか半ば悲痛なほどの視線を俺に向けている。
その色には、見覚えがあった。
「――いや、だからお前充分強いだろ」
だから、俺はそう言った。
別に説教をするつもりはない。無論、お節介でなどあり得ない。
彼女が何を考えているのかは理解しているつもりだ。
自分にも、それは覚えがあったから。
「だから、強くなんて――」
「何それ? その歳であんだけ動けて嫌味のつもりか。俺じゃ逆立ちしたってあんな真似できねぞ。あれか、喧嘩売ってんのか? それとも遠回しに自慢してんのか。こちとら魔術使うたびに反動で血を吐くんですけど、そこんとこどう思いますかねえ?」
「え、ええ……!?」
俺のあからさまな罵倒に、彼女は面食らって狼狽えていた。
まったく予想だにしない台詞だったらしい。
俺は構わずに続けた。
「いや別に俺の話はいい。でもお前の話も同じくらいどうでもよくない? それをごちゃごちゃといきなり語られても知るか! つーか、そんな嫉妬で噛みつかれるほうの身にもなってみろって! それなんか俺と関係あるのか!? あ!? こっち完全に当たられ損じゃねえか!!」
「ひ……っ」
「あれなの、そんなに学院に入りたいの? なら別に紹介するけど? 来る? これから学生やる? 学生やってもいいけどさあ、この歳にもなって思春期こじらせ型ブルー入るのやめてくれよ。やっぱ義務教育制度のない世界は駄目だな!」
「ご、ごめっ、ごめんなさ……」
「だーっ、ったくもう! 俺はカウンセラーじゃねーし、ここは魔術師十代喋り場じゃねえんだよ! 言っとくけどお前たぶん単純な戦闘力なら学院でもトップクラスだからな? それが何いきなりコンプレックス走らせてるわけ? 強いから! お前は、強い、からっ!!」
「しゃ……しゃべ、り? こんぷ……?」
アホ丸出しの言葉をまくし立てた俺に、フェオは瞳を白黒させている。意味もほとんどわからなかったろうに、勢いに押されて少し涙目になっている。
一方、その脇では、シャルが呆れたような視線でこちらを睥睨している。ような、というか、もう完全に目が「バカじゃないの」と語っているレベルだ。
容赦ない蔑視の目と、潤んで弱々しい瞳。そのふたつを受けて、さすがに俺も冷静さを取り戻した。
……というか恥ずかしくなってきた。
何言ってんだろう俺は。いちばん馬鹿みたいなのが俺だった。
古い火を揉み消し、俺は新しい煙草に火をつけてから改めて言葉を作る。
「まあ、あれだ。《強さ》なんて概念は、そもそも一面的に判断できるものじゃないんだよ」
別に精神論へ話をすりかえるつもりはない。要は尺度の問題だろう。
いや、もともと彼女が言っているのは精神的な話なのだろうが。そんなことは知らん。
現実は現実として認識するべきだ。
そのために俺は、それらしいことを言えばいい。
「強度なんて所詮は水物だろ。その時々によって変わる」
絶対的な《強さ》を持つ人間なんて、そもそもほとんどいないのだから。相性やコンディション、一瞬の判断やそのときに選んだ戦術で、魔術師の勝敗などいくらでも変動しよう。
一応、魔術師の能力を示す表現方法には《位階》というものがある。
これは魔術師の魔術の腕そのもの――その技術と知識の研鑽具合、かつそれを王国に還元しているかどうかを判断するもので、同時に魔術師としての地位を示す指標にもなっている。
魔術師の位階は、管理局の上位組織である王立の機関が制定するものだ。
位階が欲しいので下さい、と申し出れば、ならば試験を受けてください、と言われる。それに合格すれば、難易度に応じた位階が国王の名の許に賜わされるわけだ。
いわゆる《二つ名》といった、形のない名誉を与えるものではなく、現実に魔術師としての――翻って国民としての地位が認められるシステム。
第十一位階の《新参者》から第一位階の《魔法使い》までの全十一段階。
魔術師の実力を示す指標として、明確な定義を持つのは位階制度くらいである。
「だが位階の高さは、必ずしも魔術師の戦闘力とイコールにならない」
あくまで《魔術それ自体の技量》を測るものであり、《戦闘技術》の尺度にはならないのだ。戦闘者よりも学者や研究者、ないし賢者や隠者と呼ばれる者が高い位階についていることも決して珍しくはない。
もちろん、多くの魔術を扱えれば単純にヒトは強くなる。
存在の次元からして異なる第一位階は除くとしても、その下の第二位階――世界にたった十人のみの《魔導師》と呼ばれる魔術師でさえ、全員が確実に人間をやめていると俺は思う。こういうのはもはや個人で戦略級なのだ。
まあ上位三位階は普通の人間と明らかに違う場所にいるため、単純比較するほうが間違いだからこの際除こう。
それ以外の魔術師にとって、だが位階とは――魔術の技量とは、絶対の価値基準にはなり得ない。
「アンタ、位階は持ってるか?」
「持ってない、けど」
「だろうな。それで勘違いして、位階の高さを魔術師の絶対的な価値だと勘違いしたクチだろ」
だが実際のところ、たいていの冒険者は位階認定などわざわざ受けに行かない。そんなものは迷宮において寸毫の役にも立たないからだ。
独学の、一芸特化の魔術師が多い冒険者だと、どれだけ高くてもせいぜい第七位階。普通なら八位から九位が限度だというのも、理由のひとつかもしれない。
だからどうした。
たとえひとつの魔術しか使えなかったとしても、冒険者としては問題ない。
そのひとつを極めればいいだけの話だ。
「だいたい俺なんか、そもそも位階認定の評価対象外だぞ。ルーン魔術しか扱えないせいで、魔術師の位階を取れねえんだよ」
「そう……なんだ」
魔術師の最終目標とは、遠回しな言い方をすれば《不可能をなくす》ということに尽きる。
初めから不可能を内包してしまっている俺は、その時点で実は魔術師失格なのだ。
「だからって別に気にしちゃいないけどな。出世とか考えないなら、位階なんてそもそも必要ないし」
「…………」
「ま、当たり前の話だけど」
吐き出す煙が、迷宮の闇に溶けていくのを眺めながら呟いた。
やはりどうも説教じみた言い方になってしまった。フェオの顔をまっすぐ見られない。
無駄な言葉を費やしたことはわかっていた。だがそれでも俺は言葉を重ねた。
羞恥を誤魔化す方法を、それ以外には知らないから。
「……お前もさ、まあ魔術は剣術より苦手なのかもしれないけど、だからって別に気にすることないんじゃないのって話。さっきも言ったけど、今だって充分に強いわけだし。少なくとも剣の才能はあったわけだろ? そこに胡坐をかくわけでもなく、きちんと努力もしてきた――それくらいは見ればわかる」
彼女は。
何も答えなかった。
「だから、まあ、なんだ――そんなことで、うだうだ悩むなよ」
「……別に。もともと悩んでないけど」
フェオはふっと視線を逸らした。まあ素直じゃないことで。
そのことに苦笑して、でも特に追及はしないでおく。
「なら、いいけどな」
「……何がよ」
不機嫌そうに呟くフェオ。
それでいい。俺は話題を変える。
「つか、あれだな。お前の実力で攻略メンバーに入れないとか、銀色鼠もかなり層が厚いよな。お前の上ってそんな強いのか」
「いや……さあ」
「さあ、ってお前……」
「最近、新入りが多いから。でも知らないけど、強いヒトが集まってるんだと思う。選んだのは幹部メンバーだから、わたしは基準までは知らないけど。ほとんど話してないヒトもいるし」
「ふうん……」
呟いて、それから思った。
――いや、待て。
それは、少しおかしくないか?
「――――」
俺は意図せず押し黙る。地面を向いて考え込んだ。
待て待て待て。落ち着け冷静になれ。
今、俺は何を《おかしい》と感じたんだ? 違和感があっても、それを言語化できなきゃ意味ないぞ。
「……アスタ? どうかした?」
訝るシャルの声が聞こえたが、答えている余裕がない。
何か今、明らかにおかしいという感覚だけは得た。
だが、何が……?
俺はしばらく無言で考え、考え、そして考えた。
迷宮の攻略に、寄せ集めただけの新入りを使うだろうか。いくら実力があったとしてもだ。
いや、それはいい。問題は、なぜそうしたのかを考えることのほうだ。
――銀色鼠の挑戦。増え続けるクランのメンバー。七人の選抜。治癒魔術師を呼んだ理由。
選ばれなかったフェオ。野営地の人数の少なさ。若い冒険者ばかりの天幕。稀少な転移の魔具。
オーステリア迷宮。タラス迷宮。合成獣と土人形。転移。使い魔。迷宮に潜む謎の集団。そして地球にしか存在しないはずの文字――。
これらを結びつける要素が、どこかに見つけられるだろうか。
「……ど、どうかしたの……?」
様子があまりにもおかしかったからか、シャルだけでなくフェオまで不審そうな視線を向けてきていることには気づいていた。
なんだかしおらしくなっている気がする。だが、やはり今は構っていられない。
思索を重ね、深め――やがて数分の時間が経ってから俺は言った。
「――今日はここで休もう」
「アスタ……?」
怪訝な表情のシャルを無視して言う。
「明日、先に進んでる第一陣との合流を目指す。――フェオ、彼らが持ってるっていう転移用の指環は、確か《記録した座標に転移できる》術式だって言ってたよな?」
「え。あ、うん……そう言ったけど」
「つまり、それは一方通行ってコトでいいのか? 行きは記録した場所まで行けても、帰りに転移は使えない。少なくとも地上まで一発で戻れはしない」
「そう、だと思う」
「なら向こうも、成功するにしろ失敗するにしろ、いずれにせよ帰りは徒歩なわけだ。なら、ご一緒させてもらうとしよう」
「わ、わかった……」
「シャルも、それでいいか?」
「……ま、アスタがいいならいいんじゃない」
投げやりなようで、ちゃんと賛同してくれているシャルに感謝する。もちろんフェオにも。
その好意に胡坐をかいて、俺はふたりへとただ告げた。
「――それじゃあ休もう。まずは俺が見張るから、寝ててもいいぞ。交代でいこう」
泊まりなんて想定していなかったため、寝袋さえ持ち込んではいないのだけれど。
まあ、冒険者ならばその程度のことに不平不満は零すまい。
俺たちは、早めの休息を取ることにした。
※
――翌朝。
ピトスに持たせた魔晶の破損が、術式を通じて俺に知らされた。
どうやら事態が、悪い方向へ進んでいるらしい。




