第四十五話 三つ子の敗北
■ゲオルク視点■
息を切らせ、道中で盛大に転んだりしつつも、無事に俺様はふもとのスタート地点へと戻ってこれた。
疲労で足が棒のようになっているが、早く事の顛末を教師に聞いて、自分達のしでかした悪行を謝罪させてやらねばならない。
「おや、ゲオルクくん。お早いお帰りですね」
「おい! あれは一体何なんだ!!」
「血相変えてどうしましたか?」
「どうしたもこうしたもあるか! 山頂にとてつもないバケモノを配置するとか、一体何を考えている!?」
こっちは死にかけたり、醜い言い争いをしたというのに、教師は俺を哀れむかのような顔で見つめてくる。
あまりにも腹立たしいが、ここで殴り倒しても俺様が不利になるだけだ。全ての理性を使って、この湧きあがる苛立ちを抑えなければ。
「ゲオルク様達と共に、山頂のゴール地点まで向かったのですが、そこで土で出来たゴーレムのようなものに襲われました。いかなる攻撃も有効打にならず、すぐに再生してしまうため、身の危険を感じて避難してきた次第です」
「……??」
四人の中で一番冷静なルシアが、懇切丁寧に説明をしたというのに、教師は首を傾げるだけだった。
「おかしいですね。この山に、そのような生物は配置しておりませんよ?」
「ふざけるな、しらばっくれるつもりか!? 俺様達は、確かにこの目で見たのだぞ!!」
これではまるで、俺様達がバカみたいではないか。冗談じゃない! あのゴーレムは、確かに山頂にいて、俺様達に襲い掛かってきた!
絶対に問い詰めて、白状させてやると決めた直後、別の組が山頂から帰ってきた。
「き、貴様……アイリーン!?」
「ゲオルク様、戻って来ていたのですね」
戻ってきた組は、アイリーンの所属する組だった。その手に持っている輝く水晶が気になるが、今はそんなことはどうでも良い。
「バカな、どうして無事なんだ!? 貴様は俺様達が確かに……!」
「やはりあれはゲオルク様達の仕業だったんですね。残念ですけど、この通り三人共元気ですよ」
忌々しく貧相な胸を張る女狐の隣には、俺様をまるでゴミを見るような冷たい目を向けるエルヴィンと、女狐に隠れながらも、ムッとした表情を向ける犬族の女の姿があった。
「先生、山頂まで行ってこれを取ってきました。これでいいのですか?」
「はい、大丈夫です。お疲れ様でした」
俺達のことを無視するように、教師はアイリーンから水晶を受け取る。
あれが証か? それを持っているということは……こんな女が、あのゴーレムがいる山頂から、無事に帰ってきたというのか!?
「アイリーン、貴様! 一体どんな不正を働いた!?」
「苛立つ気持ちはわかりますが、それはお門違いですよ、ゲオルク様。僕達は正々堂々と山頂に向かい、証を取ってきただけです」
「黙れ! 口では何とでも言える!」
「……なにあれ……子供みたいに騒いじゃって、みっともないですわね」
「さっきも山頂で騒いでたよな。何もないのに、まるで何かと戦ってるかのように魔法を使って、醜い喧嘩までして……気味が悪いぜ」
「僕達も、彼らが喧嘩しながら下山する姿を見ましたよ。責任のなすりつけばかりで、見るに堪えないものでした」
「あれが生徒会長とその姉妹の本当の姿なんだね。はぁ~なんかガッカリ。みんなに教えてあげよっと」
周りの生徒達から、俺様達に幻滅し、侮辱する声の中に、聞き捨てならない声が聞こえてきた。
何もない場所で戦っていたって、一体どういうことだ? まさか……あれは、ただの幻覚だったということか?
もしそうなら、なにをしても倒せなかったことも、アイリーン如きが無事に戻ってこれたことも、そんなものは無いという発言も、全て辻褄が合う。
「ルシア、俺様達に幻覚系の魔法がかけられた形跡はあるか!?」
「いえ、そのようなものはございません。もしかけられていたら、私が真っ先に気づきますわ」
ルシアの魔法の才は群を抜いている。特に魔力そのものに敏感で、何かされればいち早く気づけるだろう。
そんなルシアが無いというのだから、魔法をかけられたわけではない。
「なら一体どうやって……くそっ、考えている時間など無い! 早くもう一度登って、証を取ってこなければ! お前ら、なにをボーっとしている! 早くしろ!」
「……嫌ですわ。どうしてお兄様に偉そうに指図されて、動かなければなりませんの?」
「あたしもパス~もう疲れちゃった。あ~あ、お兄様はもっと優しい人だと思ってたのに、腹の中ではあんな酷いことを考えてただなんて、がっかりだよ」
「ぐっ……!」
いつもなら、俺様の命令に反抗するなんてことは無いのに、少し言い過ぎただけでこんな態度が変わるだなんて! ふざけるな、こんな人間に育てた覚えは無いというのに……!
だが、ここで仲間割れをしていたら、時間切れになってしまう。生徒会長としてトップに君臨する者として、それだけは避けなければならない。
「お、俺様が悪かった……言い過ぎた。反省してる。だから……一緒に来てくれ!」
「……お兄様が謝るだなんて……」
「しかも人前で? そこまで反省してるなら……うん、わかった。あたしもイライラして言い過ぎちゃった。みんな、ごめんね」
「ワタクシも、大変申し訳ございませんでしたわ。以後気を付けます」
謝るという屈辱的な行為をしたおかげで、どうやら俺の想いが妹達の心に届いたようだ。
それでこそ俺様の愛する妹達だ。この俺様は心が海のように広いからな。今回たてついたことは見逃してやろう。
さあ、急がなくては。今からでも急いで山頂に行けば、間に合わないはずはない!
「はぁ……はぁ……ま、間に合え……!」
ただでさえ一度登って体力を消費している状態なうえに、先程強力な魔法を使った影響で、体が鉛のように重い。
それは俺だけではないようで、三人共かなり苦しそうな顔をしていた。
必死に足を前に出す俺様達の姿は、いつものような威厳は全く感じられない、なんとも情けないものになっているだろう。
だが、そんなことは関係ない。あの女狐が合格して、俺様達が不合格だなんて屈辱は、絶対にあってはならない。
そう思っていたのだが……山頂まであと半分くらいのところで、無情にも時間切れとなってしまった……。
「は、ははは……俺様達が、女狐以下だというのか……?」
……くそっ、くそっ! くそくそくそ!! この俺様達が、学生のトップに君臨する俺様達が、女狐のくだらない罠にかかって合格を逃しなど、あっていいのか!?
こんな屈辱を受けるくらいなら、死んだ方が幾分かマシではないか! おのれアイリーン……この屈辱は、必ず倍返ししてやる!
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