第四十四話 三つ子の裏切り
■ゲオルク視点■
突然目の前に現れたゴーレムは、唸り声を上げながら俺様達へと近づいてくる。
これは、随分と面白いことになったじゃないか。これが試験の最終問題というわけだな。こんなもの、赤子の手をひねるかのように、軽く倒してやろうではないか
「ただのでくの坊の分際で、俺様達を阻もうというのか? その度胸は褒めてやろう! だが……喧嘩を売る相手を間違えたな!」
パチンっと指を鳴らすと、百個は超える小さな魔法陣がゴーレムの周りに出現し、次々に爆発を起こしていく。
俺様の爆発魔法をくらったら、こんなゴーレム如き、跡形も残らんだろうな。
「ははははっ! 見るがいい、我が妹達よ! 我が愛しの婚約者よ! 俺様の魔法で、奴は惨めにも粉々……に……」
爆発による煙が晴れると、そこには衝撃的な光景が広がっていた。
俺様の爆発魔法は、確かに決まった。だというのに、ゴーレムはまるでなにもされていないかのように、ピンピンしている。
「ば、バカな!? 全く効いていないだと!?」
「お兄様に恥をかかせるだなんて、なんて悪いお方ですの? この私が、成敗して差し上げますわ」
「あたしも続くよ~! この魔法で作った劇毒で、ドロッドロに溶かしちゃうんだから!」
シンシアは持っていた剣に炎の属性を流し込み、ミアは薬の入ったフラスコを持ってゴーレムに突撃し、それぞれの獲物で攻撃をするが、やはり何の効果も得られなかった。
「私の魔法剣も、まるで歯が立ちませんわ!」
「薬も全然効き目がないよ~!」
一体どうなっているんだ!? 超優秀な俺様達がこれでは、誰も合格など出来ぬではないか! 学園のバカ共は、一体何を考えている!?
「なら、私がゲオルク様をお守りいたしますわ」
「よせ! お前の魔法は、戦闘向きではない!」
「仰る通りですが、私の魔法でゴーレムの思考をどうにかできるかもしれません」
「あんな土の塊に、知性なんてあると思っているのか!? 少しは頭を働かせろ!!」
苛立ちをルシアに怒鳴り散らすことで、少しでも発散できたおかげで、少しだけ冷静になれた。
俺達三つ子の力は、この程度のものではない。さっきはたまたま失敗しただけだ。きっとそうに違いない!
「シンシア、お前の最大攻撃で奴を叩き切れ!」
「お兄様、私の最強の攻撃は威力こそありますが、隙が大きくてあたるか保証が出来ませんわ!」
「そんなもの、俺様がどうにかしてやる! ミア、俺様に合わせろ!」
「まっかせて~!」
今度は地面に魔法陣を作り、そこから極太の茨を生み出してゴーレムに巻き付かせる。
普通の雑魚なら、これで圧死させることも可能だし、茨の棘で致命傷を与えられる。だが、こいつはその程度では止まらないのは、百も承知だ。
「かちこちにな~れ!」
ミアが先程とは別の薬品を投げると、一瞬にして茨達はゴーレムを巻き込んで凍り付いた。
ミアの魔法薬の腕前は、既にそこいらの魔法薬師など足元にも及ばない。むしろ、こんな一瞬で高い効果が出せる奴がいるなら、ぜひ顔を拝んでみたいものだ。
「今だ、やれシンシア!」
「お任せを!」
最後の締めはシンシアだ。獲物に大量の魔力を流し込んで、その刀身を何十倍もの大きさにし、天高く振りかぶり――轟音と共に、ゴーレムを叩き切った。
「ふんっ、他愛もない。我ら三つ子の力を合わせれば、誰が相手でも負けはしないのだよ! ふはははは……は?」
勝利の余韻に浸っていると、粉々になったはずのゴーレムの欠片達が、カタカタと動き始め……何事もなかったかのように合体し、元の姿に戻った。
さすがの俺様達も、目の前で起こっていることを受け入れられず、ただ茫然と眺めることしか出来なかった。
「ちょ、嘘だよね? お姉様の一撃を受けても、全然平気じゃん!」
「皆様、来ますわ!」
無傷のゴーレムは、その場で大きく足を振り上げ、地面に叩きつけた。その衝撃で、俺様達は吹き飛ばされ、体を強く地面に叩きつけた。
「こ、こんなの勝てるはずがない……」
俺様の意志とは関係なく、体が勝手に震える。呼吸が上手く出来なくて苦しい。これが恐怖か……!? 怖くて怖くて仕方がない……!
「くそぉぉぉぉ!!」
これ以上ここでやりあって、死ぬほど痛い思いをするくらいなら、こんな試験の点数なんていらない。
そう思った俺様は、ゴーレムに背を向けると、ルシアの手を引いて、ふもとに向けて走り出した。
「お、お兄様!? 置いていくなんて酷いよ! あんまりだよ~!」
「黙れ! 俺様とルシアの命の方が大事だ! お前らは俺様が逃げるために足止めをしてこい!」
妹達は、俺様をとても慕っている。だから、俺様の命令には逆らわないし、俺様のために建て任るのだってする妥当。そう思っていたのだが、今日の妹達は少し違っていた。
「冗談じゃありませんわ! いくらお兄様の命令でも、死にに行くようなことはしたくありません! そもそも、あれだけ自信たっぷりだったお兄様が残るべきですわ! ほら、さっきの情けない結果を挽回してくださいまし!」
「誰が情けない結果だと!? 俺様の魔法は完璧だった! 最初のは偶然だ! ゴーレムの破壊に失敗したのは、シンシアの魔法剣が未熟だったからだ!」
「なっ!? いくら愛するお兄様でも、それは聞き捨てなりませんわ!」
いつもこんなにたてつくことは無いのに、今日のシンシアはなぜか俺様に偉そうに歯向かってくる。
かくいう俺様も、さっきの失敗が尾を引いているのか、イライラして仕方がない。いつもならこの程度、笑って許せるのだが、今は出来そうにない。
「ま、まあまあ二人共……走りながら喧嘩とか器用なことをしてないで、早くふもとに行って、先生に危険を知らせようよ~」
「黙れ! ミアが魔法薬で、咄嗟に粉々になったゴーレムを凍らせていれば、こんなことにはならなかったのだぞ!」
「はぁ!? 咄嗟にそんな判断できないしぃ! 後出しで文句言うとかダサいことしないで、その場で指示を出してくれませんかぁ~??」
「貴様、その言い方……俺様を愚弄しているのか!?」
「愚弄してるのはお兄様でしょ!? 自分のミスをあたし達のせいにしないでよ!」
話せば話すほど、苛立ちがどんどんと強くなって、愛する妹達に酷いことを言ってしまう。
なにの。もう自分で止めることは無理そうだ。少しでもこの苛立ちを吐きださないと、どうにかなってしまう。
とにかく、こいつらを囮にしてでも、俺様とルシアは逃げのびると決めたんだ! こんなところで死んでたまるか!
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