第四十二話 助かった?
魔法陣の光に包み込まれた私は、その場で丸くなって身を守りながら、目を強く瞑ることしか出来なかった。
私、死んじゃったのかな……こんな所で死んじゃうなんて、思ってもなかった。パパ、ママ、先に旅立つ親不孝者を許してください……エルヴィン様、ソーニャちゃん、足手まといな私を許してください……みんなと出会えて、私は幸せでした……。
「……あ、あれ?」
心の中でみんなへの謝罪の言葉を紡いでいると、自分の体に何の痛みも変化もないことに気が付いた。
もしかして、私生きているの? このまま丸くなっていても始まらないし、まずは周りの状況を確認しないと。
そう思い、そーっと目を開けると……先程まであった巨大な魔法陣は、大きな亀裂が入っていて、沈黙していた。
そして、私と偽物の間に割って入るように、優雅に佇む男性と、いつも垂れている耳をピンッと立たせる犬族の女性の姿があった。
「え、エルヴィン様……ソーニャちゃん……!」
「バカな、どうしてここにいる!?」
「この程度の方法でなんとかなったと思うなんて、片腹痛いね」
背中しか見えてないけど、明らかに怒ったような声色のエルヴィン様は、勢いよく右手を前につきだす。すると、手の前に魔法陣が出現し、光の矢のようなものが発射された。
その矢は、ひびが入った魔法陣に容赦なく突撃し、粉々に粉砕してしまった。
「そんな……!」
「この程度で済むと思うな!」
私達が止める間もなく、エルヴィン様は、偽物の胸ぐらを掴みかかり、その頬をグーで殴り飛ばした。
「これでも足りないくらいだが。このくらいにしておいてやろう。アイリーン、無事か!?」
「はい、エルヴィン様……!」
とりあえず一息ついたおかげで、再会を喜び合う余裕が出てきたみたいだ。
私がエルヴィン様に抱きついてから、その後にソーニャちゃんとも再会のハグをさせてもらったよ。
「でも、どうしてここがわかったんですか?」
「色々あってね。僕は魔法で眠らされそうになったんだけど、すぐにその魔法を解除して、霧を吹き飛ばしたんだ。そうしたら、アイリーンだけ姿が無くてね。僕と同じ魔法で眠らされていたソーニャを起こした後、ソーニャの鼻で君の匂いを辿ってもらったんだ。まったく、僕としたことが……アイリーンとはぐれてしまうだなんて、大失態だよ」
「えへへ……今日ほどわたしに犬族の血が流れていてよかったと思ったことはありません……!」
「そうだったんですね。ありがとうございます、エルヴィン様、ソーニャちゃん!」
何度も何度もお礼を言っても、全然良い足りない。だって、あのままだったら。私の精神が死んで、本物の私も死んじゃってたもの。
「それにしても、彼は何者なんだ? どうして僕の姿を使い、アイリーンの命を奪おうと……」
「あ、あの……これって、なにかしらの魔法で変身しているってことですよね……?」
「いや、変身魔法の魔力は感じない。もしかしたら幻覚を見せる類の魔法か……あるいは、認識を歪める魔法かもしれない。それで、僕達が見ている彼の姿が、僕に見えているというわけだ」
幻覚を見せる魔法なんて、聞いたことが無い。世の中には、まだ私が知らない魔法があるんだね。
「魔力の残滓の質からして、後者の気はするが……どっちにしても、解除自体は問題ない。その姿を白日の下に晒してもらおうか」
エルヴィン様は、倒れている偽物の額に指を乗せる。すると、偽物の姿が煙のように消え、別の男性の姿が現れた。
「……これは……だ、誰??」
てっきり、女狐と言っていたからゲオルク様だと思っていたのに、目の前の男性は全く面識が無い人だった。
「エルヴィン様とソーニャちゃんは、この人のことを知ってますか?」
「いや、知らないな……」
「わたしもです……」
「それなら、一体どうしてこの人が襲ってきたのでしょう? 私への執着心と、女狐って呼び方をしてたので、てっきりゲオルク様とばかり……」
「ゲオルク……確かに彼ならやりかねないな。念の為、もう少し残滓を調べてみよう」
先程よりも集中して調べるエルヴィン様を、私とソーニャちゃんは黙って見つめている。
「…………この魔力には、覚えがある」
「あ、あの……それって、やっぱりゲオルクって人なんですか……?」
「いや、ゲオルクではない。いつも彼の隣を陣取っている、彼女の魔力だ」
「……ルシア様?」
「ああ。彼女の魔力はかなり異質なものだから、すぐにわかったよ。この件は、ゲオルク達が関わっているのは間違いないだろう」
まさかルシア様の名前が出てくるとは……大体ゲオルク様の関連だと、シンシア様とミア様が来ると思ってたくらいだもの。
「やっぱり、ゲオルク様達だったんですね。私にずっと執着して……もう許せない!」
せっかくセレクディエ学園に編入して、これからエルヴィン様やソーニャちゃんと一緒に、夢の学園生活を送れるって思ってたのに、何度も何度も私に執拗に絡んできて……さすがの私でも、我慢の限界だよ!
「そっ、そうです! アイリーンさんを傷つけるなんて、許せませんっ!」
「このまま放っておいたら、試験の障害になるだろうから、ここで無力化しておくのは、悪い手じゃないね。それに……僕も堪忍袋の緒が切れた。彼らには、相応の罰を与えないと気が済まない」
プンプンと可愛らしく怒るソーニャちゃんとは対照的に、エルヴィン様は驚くほど無表情で、淡々と怒りの言葉を紡ぐ。
「けど、どうやって仕返しをしましょう……? あんまり時間をかけていると、試験の時間が……」
「大丈夫、ソーニャちゃん。私に良い考えがあるの!」
私の指差す方向には、森の恵みが沢山ある。この世界は現実世界と酷似しているから、探せばきっとアレがあるはずだよ!
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