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老いた夏




 風鈴が鳴る。蝉の声に紛れながら、夏の風に揺られて時を奏でる。

 団扇を仰ぐ手が止まった。縁側の戸口に身を預け、汗が滲むのも忘れていつかに浸る。

 静かになってしまった夏に、昔の賑わいを懐かしむ。冷茶も西瓜も、今は御膳にたった一人分。冷たい、甘いと騒ぐ声が薄れ、消えて早十年。この手は気付けば老け込み、先祖の帰りを未来の自分に重ねるまでになった。

 早過ぎる時の流れがもたらす孤独や虚空を、夏の音がまた誤魔化した。






孫が帰らなくなったら、と想像すると。




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