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【VR】ブレイブファンタジー【神ゲー確実】  作者: hikoyuki
CLIMB DESIRE

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CLIMB DESIRE Ⅲ

『それではこれで失礼します』


 そう言うとGMさんは現れた時のように瞬時に消えていった。やはり忙しいのだろう。


「さて、ではこのゲームを実況していきましょう!ログアウトボタンがあるなら安心ですしね!」


----

>強い


>配信者の鑑である

----


 実際のところログアウトボタンは罠ではないのか、残機は本当に3つなのか、という様々な可能性は運営の発言だけでは確証を得られない。ならばとりあえずは運営の目論見に従って攻略を続け、行き詰まってしまった時に試すのが正道という奴でしょう。


「とりあえず他のプレイヤーはバベルに向かったみたいですね。ボクも向かってみましょう」


 周囲は一面草の生い茂った草原。VRMMOにおける最初のステージの定番だ。そんな自然に溢れた光景に混じってそびえ立つ異様な塔『バベル』。それを目指してとことことボクは歩みを進めた。


 しばらく歩いていると、目の前に2人のプレイヤーを発見する。どうやらモンスターと戦っているようだ。バベル以外の場所にもモンスターは現れるらしい。


「よし、俺は魔法使いだからおまえは前衛を頼むぞ」


「わかった。俺は戦士だからな。うおおおお!!!」


 などと説明的な会話をしながら2人は目の前の青いゼリーのようなモンスター……スライムと戦いを始める——かと思いきや。


「隙あり!!!!死ねや!!!!」


 戦士の人が勢い良くスライムに飛びかかるのを見計らって魔法使いの人が炎の魔法を放った。当然ターゲットはスライムではなく、戦士の人。


----

>さすがデスゲームガチ勢だわ


>清々しいクズ


>デスゲームってクソだわ

----


「こんな序盤で裏切る奴があるかよおおお!!!」


 戦士の人はそう叫び声をあげながら炎に包まれる。しかしその後の展開は想像とはかけ離れていた。炎は即座に鎮火され、戦士の人は無傷のまま生き残る。そして……。


『こらー!!PKは禁止ですよー!!』


 GMの人が現れ魔法使いの人に警告し始めたのでした。



「え??」



----

>ログアウト可、PK禁止のデスゲームってマジ??


>どうなってんだこのゲーム


>ユーザーに配慮した親切なデスゲームだぞ

----


 これにはガチ勢の人も激怒することだろう。ボク的にはPK無しのほうがいいのが当たり前だけれど、これまでの価値観から察するに彼らの視点ではかなりのクソゲー要素であることは容易に察することができる。


 案の定抗議し始めた。


「ふざけるなよ!!!デスゲームでPKが無いとか福神漬けの入ってないカレーじゃねーか!!」


 被害者の人が。


----

>戦士さんガチギレで草


>やべえよやべえよ


>カレーにはらっきょうだろ馬鹿かコイツ


>↑死ねゴミ。たくあんだ。

----


「しゃーねーよ。きっと協力しないと攻略困難な高難易度ゲーなんだろ」


「だからといって許せるわけねーだろ!優勝者は先着1名でPKは不可能なんて欠陥もいいところじゃねーか!」


 なぜか魔法使いの人が戦士の人を宥めている。さっきまでPKしようとしてたぐらいなのに仲いいね。


『ご安心ください。たしかに先着ではありますが、誰が優勝者は1人といいましたか?』


「何?」


「優勝賞金はパーティメンバーそれぞれに1億円ずつ分配されます。是非仲間と協力して絆を深め、喧嘩せずに楽しくプレイしてくださいね」


 ご覧ください。これがデスゲームを提供しているGMの模範的回答です。


「それを早く言えよ!こんな所で揉めてる場合じゃねえ。いくぞ!」


「おう!仲間も増やさないとな!」


 なにはともあれどうやら問題は解決したらしい。戦士の人と魔法使いの人はバベルに向けて全速力で駆け出した。いやあ、よかったですね。


…………。


「なに……この……なに?」


 謎の光景に呆然としていたがふと気づく。どうやらこのゲームは仲間割れ非推奨のパーティ戦バランスのようだ。しかし、ボクは現在1人。ソロでダンジョン攻略なんて自殺志願者でしかない。


「仲間を探さなくちゃですよ!!視聴者さん、今からこのゲームにログインしてくれてもいいんですよ?」


----

私は遠慮しておきます


俺、ゲームは動画勢なんで……


卍さんがんばってねー(適当)

----


「使えない視聴者共め!いいですよ!もう1人で行きますから。あーあ、みなさんのせいでボク死んじゃうんだー。悲しいなー」


 などと煽ってみてもやはり誰も来る気はないようだ。仕方ない。前代未聞のデスゲーム縛りプレイと行きますか!



 という訳で道中のスライムをボコボコにしながら歩き続け、無事に塔に到着。入口付近には誰もいない。どうやらさっきの2人組も含めて、みんな塔に入ってしまったようだ。さっそくボクも塔に挑戦するべく、両開きの扉に手をかける。


 その瞬間、バチッと静電気のような衝撃が扉から発せられ、思わず手を離してしまう。


 と、同時にボクの前にメッセージウィンドウが出現した。


【塔に入る前に仲間を見つけよう】


「親切すぎる……」


 どうやら縛りプレイは非推奨らしい。恐らくはソロで挑もうとすれば即座に残機が減ってしまうような高難易度ダンジョンなのでしょう。人命に配慮された神ゲーですね。


「でも待って??周囲もう誰もいないんですけど?みんな塔に入っちゃったみたいなんですけど??」


----

>デスゲーム出禁かな?


>かわいそう


>やーいぼっちー

----


「貴様ら覚えとけよこら」


 コメント欄から流れてくる煽りメッセージを罵倒しながらも塔の前で立ち往生。どうしよう?もう諦めてログアウトボタン押してみようかな。


「あ、そうだ。これがありましたね。困った時はこれです。GM助けてー」


『はい。何かありましたか??』


 例によって即座に現れるGMの人。この人以外にGMはいないのだろうか。


「えっと……塔に入れないんですけど」


『あー……余ってしまいましたか。すいません。他の方々はみなさん知り合い同士のようでしたので、自然と溢れてしまったようですね。』


 あの人たちはデスゲームコミュニティとかデスゲームオフ会とかの参加者だったのかな?そんなどうでもいい事を考えていると、本日何度目かの衝撃的発言がGMから飛び出した。



『せっかくですし、私と組んで塔に入りましょうか』



----

>二人組を作って余った人が先生と組むみたいなノリかな?


>↑めっちゃ恥ずかしい奴だこれ


>ユーザーフレンドリーな神ゲーですね


>本当にユーザーフレンドリーならぼっちでもダンジョンに潜らせろや!!


>卍さんコミュ障だから仕方ないね

----



PKができないデスゲームは欠陥品

0点 クソゲー

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