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ゲノム少年は世界を知る  作者: 七刀シロ
11/12

見送り

来年もよろしくお願いします。

 用を済ませてトイレから戻ってみたらモニカとトリスがハンバーガーセットをがっついていた。


「ゲノム君これ黒いしゅわしゅわはなんなの?とても美味しいわ」

「このほくほくした細いのってなんですの?」


 あーあ、僕の分まで食べちゃっているよ。気に入ってくれて嬉しいけど、いいや、あとでママに追加で作ってもらうからいいか。


「ハンバーガーって初めてだったりするの?」

「これはハンバーガーなの?名前も見た目も似た料理を食べたことがありますが、これとは全く違う味がするよ!今までに味わったことがない不思議な味でいくらでも食べられるよ」


 味わったことがない味って化学調味料とか添加物の味を言っているのかな?でもハンバーガーはあるんだね。

 施設の外の世界がどんな風なのかわからないけど心の文明にも化学調味料みたいな調味料があったはずだ。文献で昔読んだことがあるんだけど。

 確か味は化学調味料と変わらなかったって書いてあったな。

 この施設も外との交流を断っているから知恵の文明がどうなったのか。不明で心と知恵の戦争後、施設の回りの地上の生きた人間が確認できなかったから戦争で人が絶滅したかと思っていたほどだ。

 今日までは。モニカとトリスに出会って僕は確信した人は絶滅していなかったんだと。

 外の世界はどんな発展をしているのだろう。戦争で文明がリセットされていたりしてな。


 ママに追加でハンバーガーセットを作ってもらって、二人に外のことを聞いたり、この施設のことを聞かれたりして、ハンバーガーを食べながら話し合った。


 食べ終わり、二人はママの案内でシャワーを浴びに向かった。二人のことはママに丸投げして任せよう。

 僕は疲れて眠くなったから、自室のミスとシャワーで体の汚れを落として睡眠学習用のポッドに入って眠りについた。

 睡眠学習用のポッドの設定はモニカ達の言語の設定にしといた。これで通訳機なしで言葉を交わすことができるようになる。


 寝るだけで言語を覚えられるなんて便利だよなって思いながらポッドの電源をオンして、蓋を閉じた。



 ☆



「ここって夢みたいな場所だね」

「うん。ご飯も美味しいし、見たことが無い楽しいことが沢山。でもゲノム君はここでずっと一人だったんだよね」


 モニカは千年間もここで一人だった男の子の顔を思い浮かべる。

 ゲノム君から聞いた話をまとめると、ここにはあらゆる娯楽を詰め込んだ場所だと思う。娯楽を詰め込んだ夢の場所でも千年間もずっと一人は辛すぎると思えた。

 彼はここで何をしているのか正直自分にはわからない。見た感じはこの施設でいるだけに思えた。

 特にやることもなく遊んでいるだけなら彼を王都に呼んでここの技術を文明を我が国が飲み込む。そうすれば、いいえ。一国の姫ではなく、私の個人、友達として今は彼のことを思って考えよう。

 王都へ呼べば、彼はさみしくなくなる。ここに一人でいる必要がないのだ。しかし、彼がその提案を受け入れなかったら、自分がここに住めばいいのだ。自分は精々60歳程しか生きられないのだから。

 でも遊んで暮らしたい気持ちはあるが、すべてを楽を詰め込んだこの場所は新の楽園に自分は暮らしていけるだろうか?王族貴族の責務を投げ捨てて暮らす勇気は自分にはあるのか。

 しばし自分自身と問答する。


 答えは出なかった。

 ゲノム君のママの案内でシャワールーム?に行き、取っ手をひねるだけで天井からお湯が雨のごとく出る個室で汗を流し落とした。


 ここは凄いおとぎ話にも出てこない物があふれている。食べたことのない料理に、バーチャルという世界。一番驚いたのはゲノム君がママと呼ぶ存在だ。この施設に宿るシステム?人格のような物らしいのだが、高名な魔法使いでも指輪などのアクセサリーに人格を付与できるっとおとぎ話で聞いたが、それよりも凄い。建物、いいや土地に人格を付与するのは聞いたことが無かった。

 ただ、魔法ではなく、科学という概念で付与をしているらしい。科学とはとゲノム君から聞いたけど一つも理解できなかった。

 私達の先祖とゲノム君の先祖は戦争をしていたらしい。ゲノム君が言うには知恵と心の戦争だと。

 知恵は科学の象徴で、心は魔法の象徴と。何をきっかけに戦争をしていたのかはゲノム君本人もゲノム君のママも知らないらしい。戦争のしている中で記録が消し飛んだというそれほど激しい戦争だったようだ。

 私の国でも戦争は起きたことはある。私が生まれる少し前に隣国と5年ほど戦争をしていた。その時の戦争もそうだが、戦争というものは些細なことでも起きるから知恵と心の戦争は最初くだらないものから始まったのかもしれない。


 明日はここから出ていき王国へ帰るのだ。

 道中はゲノム君のママが操作する車?に乗って近くの街まで送ってくれるというのだ。そこから王都に戻り、お父様とお母様にゲノム君のことやこの施設のことは伝えなくては。



 ☆



「忘れ物はない?」

「忘れ物なんてないわ。お世話になったわね」

「ゲノム君、いろいろとありがとうね」


 ひと眠りした次の日、モニカとトリスは故郷へ帰すことにした。

 一日しかいなかったけど、ずっと一人だったから二人が行くのは寂しいく感じる。僕以外の人が生きていたのは大きな発見だ。

 森の外へ探索型のロボ派遣して人が住む場所を調べる必要がある。


「ゲノム君!またここに来たら会えるのかしら?」

「会えるなら私も来るよ」

「いつでも大歓迎さ。ここで待っているからいつでもおいで」


 彼女達の帰りはママが送るということになって、倉庫の中で長年眠っていた護送用車両を出して遠隔で送るらしい。

 僕はモニカとトリスが乗る車を見送った。

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