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ボクサー異世界へ行く  作者: 如月文人
第二章 ポンコツ僧侶(クレリック)
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第二章 其の三


「ちょっと何でよ!? このアタシの大活躍で一度にたくさんのモンスター

 掃討できたのよ? なのに報酬がレッサーウルフの討伐のみって

 どういう事よ? ねえ、おかしくない? カーミラもそう思うでしょ?」

「いやどうかな……アハハハ……」


 切れるアイリスと乾いた笑いのカーミラ。

 俺達はなんとか無事に生き残り、冒険者ギルドまで戻ってきた。

 とりあえず俺達は無事レッサーウルフの討伐依頼を果たして、

 報酬である十万レム(約十万円)を均等に割り、アイリス達に報酬を渡す。


「んじゃそういう事で! パーティお疲れ様でした」

「うん、うん……先輩、お疲れ様でした」


 そう言葉を交わし、アイリス達から背を向ける俺と真理亜。

 一人当たり25000レム(約二万五千円)か。 うん、悪くない稼ぎだ。

 さてこの金で何しようかな? 今夜は少し豪勢な夕食にしようかな?


「ちょっと、ちょっと待った! そこの二人カムバック!」


 後ろからアイリスが呼び止めるが、俺と真理亜は無言でスルー。

 するとあのロリ巨乳は全速力で俺達の前に回りこんだ。 チッ。


「……何かな? 報酬は均等に分けたよね?」

「その話じゃないわよ! 今後の方針よ! アタシとカーミラが居れば

 もっと高報酬のクエストをジャンジャン受けれるわ! 

 どう悪い話じゃないでしょ? だから……」

「……あー無理ッス。 んじゃそういう事で」

「ちょっと待って! わ、わかった。 アタシが悪かったわ!

 もう二度とあんな事はしないわ! だ、だから見捨てないで!」


 ……ようやくまともな口調で謝罪したか。 でも許す気にはなれないな。

 俺達はもう少しで死ぬところだったのだ。 正直もう駄目と思った。


 今こうして生きているだけで本当に運が良い。

 だから今後はもう二度とあのような思いはしたくない。


「見捨てる? アイリスは超絶美少女で超凄い僧侶クレリックだから

 俺達みたいな超雑魚とパーティ組む必要なんかないでしょ?」

「い、いや……そのう今後ともアタシ達とパーティ組んで……欲しいです」

「何で? 俺達みたいな雑魚と組んでもメリットないでしょ?」

「い、いや……そのう、実は他のパーティから敬遠されて……いるんです」

「何で敬遠されているのかな? ん?」

「……そ、それはアタシが……地雷だから……です」


 一応自覚はあったんだ。 まあ大体想像がつく。

 恐らくコイツは今まで何度も何度も同じような真似をしてきたのだろう。

 んで周囲からは地雷認定。 で誰もパーティ組んでくれない。

 そこで何も知らない新米の俺達のパーティに潜り込んだ。

 という感じで大体合ってるだろう。


「へえ、アイリスって地雷なんだ? で俺達に地雷とわかっている奴を

 パーティに加えろ、というんだあ~。 で俺達のメリットは?」

「そ、それは……これからは真面目に回復役ヒーラーする……ので」

「ああ、私からもきつく言い聞かせるから、だから……」

 と、頭を下げるアイリスの隣に立つカーミラ。

「カーミラさん」

「は、はい? なんでしょうか?」

「あなたは別に地雷ってわけじゃないですよね? ならさっさとこの地雷女を

 見捨てて、あなたは別のパーティに潜り込んだらいいじゃない」

「そ、それはそのう……」

「……何なんです?」

「いや実はそのう私が今まで何度も頭を下げて、色んなパーティに潜り込んで

 きたのですが、何度も何度も同じ失敗して、私も地雷女の共犯って事で……

 この辺りのパーティの……ブラックリスト……に載ってるん……ですよ」


 とうとう自白したな、この女。

 そうなんだよ、コイツも善人面しているが、冷静に考えればアイリス

 みたいな地雷と付き合う理由などない。 つまりこいつも訳有りって事よ。

 はいはいはい、つまりこの女も大概って事なんですよ。


 そりゃアイリスとカーミラは美少女に美人さ。

 それは認める、うん。 でもさ、だからといって何度も何度も

 同じ失敗して、パーティに迷惑をかける権利あるかな?


 ないよね? ないよね、絶対にないよね!

 というか例え神が許しても、俺は許さないよ。

 死にかけたんだよ? もう少しで二度も童貞のままで死ぬ寸前だったのよ?

 分かる? この絶望感? もう半端ないね。 駄目だ、段々ムカついてきた。


「へえ、ブラックリストに載ってるんだあ。 へえ、凄いねえ」

「い、いえ……そのう、凄くなんか……ないですう」

「いやさ、俺が凄いと言ってるのは、ブラックリストに載ってるのに

 俺達に今後もパーティ組もうと言う神経の事だよ。 えーとわかります?」

「いや……そのう、ごめんなさい!」


 と、涙目で謝罪するカーミラ。

 だがこんなもので俺の怒りは収まらない。


「ふう、真面目な話さ。 カーミラも悪いよ? 人の良さそうな顔してさあ。

 何も知らない連中を何度も何度も騙してきたんだからさあ」

「い、いや……そのう、騙すというのは……」

「騙してたよね? アイリスが回復役ヒーラーなのに、回復なんか

 まったくしないで、前線に出てモンスターリンクさせてまくるのを

 知ってて、それを黙って俺達に危険な目に合わせたよね?」

「……はい、ごめんなさい。 だ、騙して……いました……」

「ちょっと先輩、もうそれぐらいで許してあげたら?

 ま、まあ私達もこうして無事生きているわけだしさあ」

「真理亜くん」

「は、はい? な、なんですか?」

「謝れば何でも許されるのですか?」

「い、いえ……そんな事はないです……」

「ですよね? ゴメンで済んだら警察いりませんよね?」

「は、はい。 というか先輩怖いです。 眼が本気マジです……」

「そうですよ。 僕はねえ、本気マジで怒っているんですよ。 わかる?」

「で、でもさあ。 相手は女の子なんだし、そろそろ許してあげたら?」


 出たよ、女の子だから発言。

 だが残念だったな。 俺は真の男女平等主義者だ。 その理屈は通用しない。


「なら真理亜くんがこの子達とパーティ組んであげなさいよ?

 僕はもう独りでパーティ組むからさあ。 女の子同士でしょ?」

「……ご、ごめんなさい。 失言……でした」

「うむ、わかればよろしい。 言っておくがね。 僕はね。 やる時はやる男だよ。

 まあ楽させてくれそう、コイツ、チョロいわ、とか思うのは君の勝手です。

 それぐらいなら寛大な僕は許してあげるよ。 でもね、僕も人間なのよ。

 怒る時は怒るよ? わかる? ここ大事だから覚えておいてね?」

「は、はい……肝に銘じておき……ます」


 わりと本気で脅えている真理亜。

 ふう、まあいいだろう。 俺も鬼じゃない、これぐらいで許してやろう。


「ちょっと待った! い、いくら何でもアンタ言い過ぎじゃない!」

「よ、よすんだ、アイリス! こ、この男見かけによらず恐ろしいぞ!」


 やれやれ、どうしてわざわざ寝た子を起こすかね?

 でもこれ以上揉めるのも面倒臭い。 適当にあしらって終わりにしよう。


「い、いやアタシの事を悪く言うのは仕方ないよ! じ、実際迷惑かけたしさ。

 で、でもさあ。 カーミラをあまり悪く言わないでよ。 そ、それにその子も

 アンタの仲間でしょ? だ、だからあまり虐めてあげないでよ……」

 ほう、意外と良いところもあるじゃねえか。

「そうだな、じゃあこの話題はもう終わりだ。 じゃあな」

「ま、待ちなさいよ。 このままじゃ私の気が収まらないわ。 確かに私が

 悪かったわ。 うん、今はもう反省している。 だからお詫びに一つだけ

 アンタの言う事何でも聞いてあげる……わ」


 ん?


「本気か?」

「……本気です。 ごめんなさい。 アタシが悪かったです」

「……本当に何でもいう事聞くんだな? ん?」

「あ、あのう……眼が怖い……です……」

「でも今何でもするって言ったよね?」

「……そ、それは、あはは。 じゃあお詫びに胸でも触る?」

 と、控え目に背中を反らし、胸を押し出すアイリス。

 やれやれ、そんな事言われたら……やるしかねえだろ!


「んじゃいただきますっ!」


 そう言うなり俺は凄い勢いでアイリスの両胸を両手で揉んだ。

 舐めるなよ。 俺は草食系男子なんかじゃねえ。 肉食だ。

 目の前のご馳走見逃す真似はしねえ。 ゴチになります!


 俺はとにかく凄い勢いでアイリスの両胸を揉んだ。

 だが服の上からだとなんだかごわごわした感触だ。

 なる程、これは勉強になった。 ふっ、一つ学習したな。


「なっ……なっ…なっ……」


 赤面しながら声を震わせるアイリス。

 だが俺は動じない。 これはあくまで同意の上での行為だ。 

 責められる覚えはない。 だが真理亜は蛆虫を見るような目で俺を見ている。

 カーミラは両肩を両腕で抑えて、ガタガタと震えている。


「な、なにすんのよ、この変態っ! ぶ、ぶ、ぶっ殺してやるっ!」



 その後、怒り狂ったアイリスは暴れに暴れた。

 もっとも俺はボクサー。 女のパンチを躱す事など朝飯前だ。


 ことごとく振るわれるアイリスのパンチを避け続けた。

 するととち狂ったアイリスは片手棍を取り出した。

 その結果、ギルドの警備員が駆けつけて、俺達は厳重注意を喰らった。

 

「いいですかね? ここは公共の場ですからね? 今度このような

 真似したら厳罰を与えますからね。 覚えておくように!」

「はい、申し訳ありませんでした!」


 ふう、ようやく騒ぎが収まったかあ。

 まさかアイリスが上級スキルを発動させかけるとはなあ。

 おかげで警備員からは大目玉。 次何か問題起こしたらヤバいな。


 だがこれで俺の怒りも収まった。 アイリスは相変わらず赤面しながら、

 涙目で全身を震わせて、俺を睨んでいる。 真理亜も非常に冷たい視線で

 俺を見ている。 だが俺は動じない。 童貞のまま二度死にかけた俺には

 怖いものなどもうない。 どういう形であれ初めて女性のおっぱいも揉めた。

 感動はない。 むしろ人として大切な何かを失った気がする。


 だがそれがどうした?

 俺は一度死んだ身。 もう失うものは童貞しか残ってない。

 だから俺は気にしない。 クールな雪村氷河はこのままギルドを去るぜ。


「ちょ、ちょっと待て! まだ終わってないわよ!?」

「お、おい。 キリがないぞ。 あれは同意の上での行為だ」

「なっ……ま、まあいいでしょう。 でもアンタは華麗なる乙女の

 おっぱいを揉みしだいた。 こ、これは許されざる罪悪よ?」

「そうだな。 んで?」

「す、少しは動じろよ。 見かけによらず鋼のメンタルだな、コイツ。

 と、とにかく一人の乙女を傷物にしたんだから、その責任はとりなさいよ!」

「ん? なんだ、それ? つまりお前と結婚しろというのか?」

「ち、違うわよ、違うだろ! つまり責任取ってアタシ達をパーティに

 加えなさいよ! こ、これだけはゆ、譲れないわ!」


 右拳をわなわなと震わせてそう力説するアイリス。

 どうやら女としての自尊心プライドより生活を優先するつもりのようだ。


 まあこんな地雷二人組みだ。 今更他に行く当てはないだろう。

 仕方ない、俺は寛大だ。 この地雷を引き受けてやろう。


「ふっ、俺の負けだ。 分かった、お前達二人をパーティに加えてやるよ。

 真理亜もいいだろ?」

「まっ、いいんじゃないですか? あ、でも私の胸は触らないでくださいね」


 と、抑揚のない声で応じる真理亜。


「で、では改めましてよろしく、カーミラです。 そのあのう、わ、私は

 こう見えて生娘なんで、そ、そのう乱暴な真似はやめて……ください」


 チラチラと俺を見ながら、脅え気味にそう言うカーミラ。

 なんかまるで性犯罪者を見るような脅えた目だ。

 まあ別に構わん。 正直舐められるよりは恐れられる方がマシだ。


「あ、どうも。 おっぱい揉まれた可哀想なアイリスだよ。 改めまして

 よろしく! でもこれ以上のセクハラ被害は減らすように女性陣で団結しよう」

「……まあそうですね。 私も被害に合いたくないですからね」と、真理亜。

「でしょ? でしょ? もうアタシのような可哀想な被害者を生み出しては

 いけないよ。 好きでもない男におっぱい揉まれるなんて、シクシク」

「おい、アイリス」

「な、なによう。 またおっぱい揉ませろとか言うの!?」


 聞こえよがしにデカい声でそう言うアイリス。

 冒険者ギルド内の冒険者――とくに女性陣の視線が厳しい。

 だが俺はボクサー。 この程度のピンチで動じる程ヘタレではない。


「なに自分でおっぱい、おっぱい連呼してんの? 痴女ですか?」

「な、なっ……違うし、痴女じゃねえしっ!!」

「まあとにかく今後ともよろしくな。 んじゃそういう事で今日は解散!」

「ま、待てよ! ち、痴女じゃねえし、というか少しは罪の意識感じろよ!!」

 後ろからぎゃあぎゃあ騒ぐアイリスを無視して、俺は踵を返した。

 正直ハーレムなんかとは程遠いポンコツパーティだ。


 どうせこれからもアイリスだけでなく、真理亜にもカーミラにも

 迷惑かけられるだろう。 だが退屈だけはしなくて済みそうだ。

 とりあえずそれだけでも良しとしておこう。

 




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