アルール歴2182年 9月30日(+9日)
——カナリス特別行動班武術顧問の場合——
一般的に言って、最低でも一週間単位で出遅れた追跡行などというものは、限りなく徒労に近い。素人相手であってすら街道の分岐で撒かれてしまう可能性があるし、ましてやそれがプロ相手となればなおさらだ。冬のサンサを徒歩行軍できる連中であれば、街道の途中で森に踏み込んで行方をくらますなどお手の物だろう。
だがナオキとザリナの追跡は、都合良すぎるくらいに都合よく進み続けた。彼らはあくまで街道を使って北進を続けており、宿場宿場で赤毛の女バラディスタン傭兵が率いる一団の噂を聞くことができた。ご丁寧に、街道の分岐点ともなれば、街で一番大きな酒場で「次はどこそこの街に向かおうと思ってる」などと語っていたという情報が得られる。
ここまで馬鹿にされるか。
そんな思いは、老マルタに送り出された我々、つまりナオキ討伐隊全員の心にあったと思う。
だがその怒りのままに気炎を上げるような者もまた、誰もいなかった。
悲しいかな、教会のバックアップが得られないいまの我々は、広範囲な情報収集などまるで不可能な状態にある。教会全体の方針としては「制止はしないが協力もしない」というスタンスなようで、大きな宿場町にある教会の司祭に面会しても、やんわりとそのようなことを告げられるだけだ。
今や教会の庇護を事実上失った我々討伐隊が有する特権らしき特権は、身分証を見せれば通行手形なしに街の門を通れるという程度(これだけでも大した特権だが)。あとは有志から託された潤沢な軍資金を駆使するのが精一杯だ。
そして軍資金にしても、かつて審問会派の名前で動かしていた金額に比べれば、遺憾ながら心もとないの一言に尽きる。旅をするだけであれば、この10人近くの集団による旅であっても概算で1年は持つが、本格的な捜査をするとなると一瞬で蒸発することがあり得る範囲の規模でしかない。
なんともはや。この期に及んで私は、自分がこれまで達成してきた業績のほとんどが、「教会」というシステムあってのことだと思い知らされている。
ほぼほぼただの個人となった今、私にできることといえば、ナオキたちが丁寧に残してくれた痕跡を追うことくらいだ。
――などということを、つい、同行しているブレンダ武装審問官に愚痴ってしまったことがあった。
彼女はしばし黙った後、「そうは言いますが、教会の支援を縦横無尽に活用するっていう、それだけでもあたしには無理ですよ。それに特捜審問官や1級審問官クラスの方々が教会に全面的な支援を要請して、それが受け入れられたということになれば、あたしの年給のウン十倍の金額が一気に動くってことじゃないですか。あたしじゃあ、そんな責任を負うって想像しただけで吐きそうです」と語った。なるほどそういう考え方もあるかと、少しだけ心を慰める。
そんな会話があってからというもの、ブレンダ隊員とは時折、たいして意味のない、他愛もないやりとりをするようになった。というより、彼女のほうから私に話しかけてくるようになった。
「昨日の宿の食事は、人間が食べる食事としては限りなく底辺でしたね」だとか、「次の街にある教会の司祭は帝都で愛人を何人も囲っていたような輩で、それが原因でトラブルって刃傷沙汰にまでなったから飛ばされた男なんですよ」だとか、そういった小さな会話。
私はそうやって話しかけられるたびに「そうだな」「そうか」程度の短い返答をして、ブレンダ隊員は「そうなんですよ」程度の相槌を打って会話を締めくくる。
己の鈍感さは嫌気がさすほど自覚している私だが、ブレンダ武装審問官とこの手の雑談をしていると、自分が腫れ物に触るように扱われているなと感じた――いや、ようやくそのことに気付かされた。
そしてこれは、けして良い傾向ではない。
部隊全員の命を預かっている以上、最高責任者が敬して遠ざけられるような状況は、実に望ましくない。
だが私はけして、おしゃべりな人間ではない。パウルのように巧みな会話で場を盛り上げたり、さりげなく訓示を示したりするような、そんな話術はまったく磨いてこなかった。
ゆえに、端的に言えば、私は討伐隊との間でちゃんとコミュニケーションをするために自分が何をすべきなのか、分からなくなった。
とはいえ私もまるで何も学んでこなかったわけでは、ない。
サンサと帝都での敗北が、私に教えてくれたことが2つある。
ひとつは、私は自分が思うよりずっと、無能だということ。
もうひとつは、取り返しのつかない後悔をする前に、言うべきことは言い、聞くべきことは聞くべきだということ。
だから私はある夜、宿の食堂で食事を摂っているブレンダ武装審問官たちに面と向かって頭を下げ、聞くべきことを聞くことにした。
「今の私を、諸君らはどう思っている?
どうか忌憚のない意見を聞かせてほしい。
我々はこの討伐を、失敗で終わらせるわけにはいかない。
そして客観的に評価して、いまのこの討伐隊における最大のウィークポイントは私だ。そうである以上、修正できるところは早めに修正しなくては、悔いを残す。
利己的きわまる発言で我ながら嫌気がさすが、私はもう、あんな後悔をしたくないんだ。
だから――どうか、頼む」
彼らは沈黙し、互いに顔を見合わせた。当然だろう。私だって上官にこんな態度をとられたら、困惑してしまうだろうから。
けれど彼らが困惑していたのは、一瞬だった。さすがは特別行動班だけあって、こんな場面でも決断が早い。
最初に口を開いたのは、ブレンダ武装審問官だった。
「あの。これは確認するまでもなく、あたしらの総意だと思うんですが、あたしらはカナリス審問官の能力を全面的に認めてますし、信頼もしてます。
閣下の命令に従って死んだとしても、あたしらに悔いはありません。
だよね、みんな?」
ブレンダ隊員の言葉に、10個の顔が一斉に頷いた。
「んー、でもいい機会だから、ここで特別行動班恒例の大暴露大会をしちゃってもいいとは思いますね。あたしら以外に客もいないし、カナリス閣下は司祭資格をお持ちだから、プチ懺悔的なノリで。
じゃ、マックスから順番に、右回りで行こうか」
特別行動班の大暴露大会? なんだそれは――と思ったが、指名されたマックス隊員は手元の酒盃を一気に煽ると、すっと立ち上がった。
「俺が今回の招集に応えたのは、いまの審問会派上層部のクソ野郎どもに、一泡吹かせたかったからです。あいつらに苦い顔をさせられれば、俺はそれで満足です!
特に2級審問官のホフマン! あいつは〈踊る子鹿〉亭のダイアナをカネの力で落としやがった。俺だってダイアナは狙ってたし、一度は寝るところまで漕ぎ着けていたのに!
今後はあの嫌味な銀縁眼鏡野郎の命令を受けるようになるのかと思ったら、いてもたってもいられませんでした。以上!」
マックス隊員の赤裸々な発言に私は驚愕するほかなかったが、他の隊員は大いに笑ってから、拍手でその告白を受け入れた。
なるほど――これが大暴露大会か。
マックス隊員が着座すると、その右隣に座っていたヘレン隊員が立ち上がった。
「私が今回の招集に応えたのは、マックス隊員が招集を受けたからです。
この唐変木がダイアナなんていう尻軽女に今でもぞっこんなのはよく知ってますし、よりによってこの男は私に向かって『ダイアナの誕生プレゼントは何がいいと思う?』とか聞いてきやがります。その買い物に何度もつきあってやった私も相当アレだな、とも思いますが。
ともあれ、私からは以上です。マックス、今夜は私の部屋の鍵、開けとくから。それくらいの貸しはあると思うよ!」
部隊内の風紀紊乱を助長するかのような発言だが、隊員からは盛大な拍手が上がった。つられて私も拍手をしてしまう。
次はグリューガ隊員が立ち上がった。
「俺は、ユーリーン司祭に憧れてました。
最初は、メガネで巨乳の超インテリっていう、俺の好みど真ん中の女だなって、その程度でした。ああいう女に踏まれたい、的な。
でも折に触れて話をしているうちに、人間として惚れるっていうか、ほとんど崇拝するくらいに、尊敬するようになりました。
そのユーリーン司祭を殺す原因を作ったのがナオキであるならば、俺はナオキとその一党を殺します。以上です」
これまたおそろしく個人的な理由が語られる。男性隊員からは特に熱烈な拍手が、女性隊員からは呆れたと言わんばかりの拍手が送られる。
それからフィン隊員が起立した。彼は今回志願した隊員のなかでは最若手、まだ18歳の若者だ。
「自分はぶっちゃけ、よくわかりません。なんかこう、流れっていうか、雰囲気でここまで来ました。
正直、怖いです。たぶん自分らはみんな死ぬんだろうなあ、死ななかったとしても未来はないよなあと思うと、怖くて眠れない夜を過ごすこともあります。
ただその、自分の父は元武装審問官で、殉教したんですが、父が自分に教えてくれた唯一の言葉は、『直感を信じろ。直感に逆らって後悔する以上に、人生に残る傷はない』でした。だから自分も、直感を信じました。
正直、今も怖いです。でも、後悔はありません」
なんと優れた若者か。彼は私よりずっと、戦士として完成されている。直感を拒否し、恐怖から目を逸らし続けて隘路に陥った私などより、ずっと。
その次に立ち上がったのは、ザック隊員だ。
「やばい、フィンの後ってめっちゃヤバイ。でもしゃーないから言いますと、俺はこれに志願するのが超カッコいいと思ったんで、志願しました!
いやほら、いまの俺たちって超ヤバイと思いません? 腐った教会の主流派を敵に回して、超ド級の異端者を追っかけて、死地に挑む。いやー、こんなシチュ聞いたら、そりゃ志願しますって。
ほい、俺からは以上でーす」
口調は軽いが、彼もまた私より優れた戦士だ。
カッコいいから、命がけで戦う。それの何が悪い。シンプルな動機に、シンプルな選択――戦士にとって最も重要な素養とすら言えるだろう。
気がつけば、私もまた暴露を聞いては盛大に拍手を送る一人になっていた。拍手せずには、いられない。
続いてバーナード隊員が起立した。
「自分の場合は、カネ目当てです。自分の実家、この春に商売に失敗しまして。このままだと一家離散なんですよ。俺の仕送りなんかじゃ話にならない。
老マルタには、実家あてにカネとコネの手配をお願いして、叶えて頂きました。なのであとは自分が死ぬまで戦うだけです。
ザックの後手なんでもうちょっといい話気味に演出したかったですけど、まあ、こんな感じです」
なるほど。これもまたシンプルかつ首尾一貫している。
それからラルース隊員が立ち上がった。
「俺の家族は異端者に殺されました。
いえ、あんまり正確じゃないですね。俺の家族も実は異端者で、内ゲバで殺されたんです。
だから俺は、あんまり難しいことを考えないようにしてます。
これは、異端者を殺す任務です。つまり、家族の復讐ができて、かつ家族の贖罪もできる仕事です。だから志願しました。
俺からは以上です」
復讐。その言葉は私の心の奥底に、ふっと突き刺さった。
ラルース隊員に拍手を送りながら、私は復讐という二文字を心のなかで繰り返す。
そんな私をよそに、モニカ隊員が立った。
「いい機会なので、今回もアピールさせてもらいます!
私はブレンダ先輩のことが好きです! 愛してます!
なので志願しました。
先輩、好きです! 愛してます! 私の初めてを奪ってください!
以上です!」
ブレンダ隊員以外から、盛大な拍手が送られる。してみるとこれは、この大暴露大会なる風習において、定番の告白なのだろう。
その次に、やや渋々といった風情を漂わせながら、イェルケ隊員が起立した。
「こんなことならモニカの隣に座るんじゃなかった……まあ、いいですけど。
俺は、わりと汚い理由で志願してます。
俺は性格が捻くれてるから、上層部の連中に煙たがられてるんですよ。それでこのところ、連中はわざと俺に難易度の高い任務を振ってきていて。このままだと遠からず殉教者入りだなあ、って感じなんですよね。
この任務に志願したのは、ここで一発大きく勝って、巻き返しを図りたいからです。大異端を殺ったとなれば、上だってそう邪険にはできませんから。つまり俺は、この任務を、あの世への片道切符だとは思ってません。
俺は必ず生き延びて、今回の功績とカナリス閣下へのコネをもとに、将来的には俺の派閥を作る。その第一歩として志願しました。以上です」
イェルケ隊員が語る壮大な野望を聞きながら、私はなおも復讐の二文字を弄んでいた。
そもそも私は、復讐を求めているのだろうか?
悩む私の隣で、最後にブレンダ隊員が立ち上がった。
「モニカには悪いんだけど、あたしが今回志願したのは、ザリナのせいです。
知ってる人は知ってると思うけど、サンサでザリナに負けてから、ザリナとは親しくつきあうようになりました。ま、簡単に言えばザリナと寝てました。シーニーも呼んで一緒にヤろうっていう話は、さすがに断りましたけど。
あたしは今でも、ザリナのことが好きです。
だからザリナを殺すのは、あたしでなくちゃいけない。私からは以上です。
それからモニカ。あたしはこんな女だけど、それでもいいって言うなら、あなたをあたしの2番にしてあげる。ヘレンを見習って、部屋の鍵はあけとくから。あとはあなたが決めて」
またしても赤裸々な告白が飛び出した。モニカ隊員が「二号さんからスタートして、やがて本妻の座を寝取るってのも燃えますね」とか呟いたのは、聞かなかったことにしておこう。
むしろ問題は、ここからだ。全員が動機を告白した以上、私がダンマリというわけには行くまい。ブレンダ隊員は特別行動班独特の慣習を利用して、私に腹を割った話をする方法を教えつつ、その機会まで作ってくれたのだから。
いつの間にか手元に置かれた酒盃を一気に煽ってから、私は立ち上がった。
「――私は、その……正直、自分の気持ちが良く分かっていない。
異端との戦いは、私が神に誓った戦いだ。だからナオキを殺すべく、こうやって旅をしている。そう言うのは簡単だが、その説明に私自身が納得していない。
あるいはラルース隊員が語ったように、復讐という動機で説明することもできるはずだ。私はハルナを愛していて、そして彼女は最も残酷な手段で尊厳と命を奪われた。その背後で奸計を操っていたのは、ナオキなのだから。
だがその説明も、本当にしっくり来るのかと言われれば、どこか妙にピンぼけしたような印象がある。
恥ずかしい話だが、私はこれという理由もなく、諸君らを率いる立場としてここにいる――ように、思えてしまう」
口ごもった私の酒盃に、ブレンダ隊員が酒を注いだ。
そして戸惑う私に向かって、口を開く。
「これはあたしの勝手な推測ですけど、たぶんカナリス閣下が抱えておられる思いって、復讐の念なんだと思いますよ。
自分が愛する人を殺された。
だから愛する人を殺したヤツを、ぶっ殺したい。
これって正直、綺麗な感情じゃないですよね。神に認めて頂けるような思いでもないなあって、あたしなんかは直感的に感じます」
……そう。その通りだ。
やられたら、やりかえす。それは審問官の根底的な行動原理として魂に刻み込まれるまで訓練を繰り返す理念だが、それでもそこには「神の名のもとに」という留保がある。
3級審問官であるハルナを殺された報復としてナオキを殺すというなら、私もここまで戸惑ったりはしない。それは神の名のもとに為されねばならぬ、聖なる戦いなのだから。
けれど個人的に愛したハルナを殺された、その復仇としてナオキを殺すというのは、どんなに取り繕っても私怨であり、私闘だ。
「でも、それってそんなに悪いことなんですか?
というかあたしたちって、そこまでキッパリと公私を分けることなんて、できるんですか?
カナリス閣下は、特捜審問官っていう審問会派の看板を背負った仕事が長いから、私的な怒りっていうやつに慣れてらっしゃらないようにお見受けします。
でも、私怨に私闘、大いに結構じゃないですか。ムカつく奴をぶん殴るのに、そこまで深く考えてもしゃーないですよ」
正論と言えば正論、暴論と言えばまったくの暴論だ。
だがブレンダ隊員の言葉は、不思議と私の内側にすとんと落ちた。
だから私は、既に答えが見えている問いを、あえて彼女に――そして討伐隊の面々――投げかける。
「私は諸君らの命を預かる立場だ。
場合によっては、諸君らに死ねと命ずる立場の人間だ。
そのような立場の人間が、私怨を晴らさんとして私闘をなすことを、諸君らは納得できるのか?」
私の問いを聞いたマックス隊員が、待ってましたとばかりに酒盃を掲げた。
「カナリス閣下。それを言うなら俺たちは、どいつもこいつも個人的な欲望をむき出しにして、ここまで来ました。
閣下こそ、俺たちみたいな、神の戦士から一番遠いような連中を率いて戦うことにご不満はないんですか?」
そういう、ことだ。
私は難しく考えすぎているというブレンダ隊員の指摘は、まったくもって正しい。
振り返ってみれば私だって、若かりし日には己の個人的な欲望――もっと賞賛されたいだとか、責任ある立場に就きたいだとか――を剥き出しにして任務についていたものだ。
けれど様々な責任を負うべき立場となってからは、「神の名の下」ですべてを運ぶ癖がついた。今にして思えば、これもまたハルナの思いに応えられなかった理由のひとつなのだろう。
だからもう、同じ間違いを繰り返しては、ならない。
私は酒盃を再び煽ると、全員に向かって宣言する。
「私は、ナオキが憎い。
ハルナを私から永遠に奪ったナオキを、殺したい。
ハルナに地獄のような苦しみを与えたナオキを、同じように苦しめたい」
言葉にしてみると、自分の中でわだかまっていた思いが一気に活性化した。
そうだ――もとより私は、ナオキを憎んでいたではないか。自己嫌悪に揉まれるがあまり意識から外れていたが、私は己を憎むのと同等程度には、ナオキを憎んでいたのだ。
そうして、ようやく自分の気持ちに素直になれたその途端、突如としてひらめきが振ってきた。私はほとんど衝動的に、そのひらめきを口に出す。
「――そしておそらく、ナオキの狙いはこれだ。
私が抱いている彼に対する憎悪と復讐の念を、土壇場で意識させる。あの男がこの手の人心操作に長けているのは、帝都の一件からも明らかだ。
そしてそうなれば私は必ずや、判断を誤っただろう。つまり、彼に私と同じ絶望を味わわせるために、ザリナを彼の目の前で殺すことに労力を投じただろう。
そこで発生する時間的ロスや戦力配分のミスを、彼は狙い撃とうとしているのではないだろうか」
ブレンダ隊員が小さく「なるほど」と呟く。
「とはいえザリナを排除、ないし一時的に拘束しないことにはナオキを殺し得ないのもまた、事実だ。
ゆえに我々の方針を、以下のように定める。
ナオキの一党と交戦状態に入った場合、諸君らはザリナの拘束ないし排除に集中せよ。私も途中までは諸君らを指揮し、最前線で戦おう。
だが私はその過程で、自分の判断で最前線から離脱し、ナオキを直接攻撃するために動く。私の初動をナオキの目から見れば、私はいかにも彼の策略に乗ったように見えるから、多少のスキはできよう。
作戦は以上だ。何か質問は?」
質問は、なかった。
代わりに全員が、手に酒盃を持っている。
ならば言うべきことは、ただひとつだ。
「この戦いに、勝利を。
諸君らの奮戦に期待する。乾杯!」




